新・Sr.阿部の「乃木坂の修道院から」①タイの山村から東京に戻って気付いたことは

 タイ国での宣教の任務を終え、東京・乃木坂の修道院に帰りました。日本での福音宣教再開です。

 早速、「お帰りなさい!長きに渡るタイでの宣教、お疲れさまでした。日本は宣教においても司牧においても、ある意味で『上級者コース』ですので、難しいことも多いでしょうが、聖霊の導きのもとで、シスターの新たなミッションのためにお祈りします」との言葉をいただき、新たな気持で日本での生活に臨んでいます。祈りの声援に支えられ、霊の激励ナビに信頼し導かれて励む覚悟です。

 30余年の空白を埋める順応の日々、結構、新鮮で、楽しんでいます。日曜日は出来るだけ教会巡りを、道順を覚え、複雑な交通網を少しでも自在に利用できるようにし、信徒との触れ合い、教会生活に親しむように努めています。

 整然とした東京とバンコクとの差は大きい。発展途上の若々しい意気込みと元気には負けますが、東京には緑の空間もここかしこにあり、「空気も、空も、澄んでいるなぁ」と感じます。それと諸外国からの人々、特に同じアジアの仲間の多さ、道案内を請うにも確かめてからでないと、何度も空振りです。どこも同じ都会の風景の中で、ほとんどスマホのお世話になりっぱなし。バンコクでの日々の車内の様子が、東京でも…何とも言えない気持ちです。

 日本に帰る前に、タイの山岳の村に日本の仲間とホームステイをしました。電波の届かない、ソーラー電気を使っている村で「スマホ、バイバイ」の生活。顔と顔を合わせ、しっかり見つめ合って全身で語り合う醍醐味に、都会での「心ここに在らず」の在り方、スマホ依存の生き方に気付く機会になりました。「この体験を生かし、解放された自由な生き方を工夫しよう」と皆で語り合って山を下りました。

 ある日、車内で、目の前に座っている4歳ぐらいの男の子が、スマホ夢中の母親に「ねぇねぇ」と話しかけている光景に出会いました。母親は、子供の手を振り払い、「邪魔しないで」という仕草を繰り返し、男の子は立ち上がり、歌いながら踊り始めたのです。それがとても可愛らしく、車中の客は皆んなニコニコ顔で子供に注目しました。それで、とうとう母親も、笑いながら子供に目を向けたのです。

 わが身を振り返って、自分も知らず知らずにスマホに頼り、肝心な事への集中力が弱くなってきている、と自戒しています。スマホをスマートに利用する知恵を身に着け、AI 時代にあっても、成熟した感性と温もりを魂に漲らせて生きたいと思います。

 

(阿部羊子=あべ・ようこ=聖パウロ女子修道会会員)

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2024年5月6日