・Sr.阿部のバンコク通信(63)「タイには177頭のトラが棲息ー彼らを保護することは、豊かな自然を守ること」

 明けましておめでとうございます。タイ国は仏暦2565年、日本同様十二支の寅年です。コロナ渦巻く最中に、牛-寅と続き、力強く感じます。

 タイ国には十二支を祀ったお寺があって、自分の生年の仏塔を参拝し、喜捨することで功徳を得、長寿に恵まれる、と信じられています。

 ネコ科最大の動物である野生のトラは、ビルマに跨がるタイ南西部山岳地帯の、見通しの悪い熱帯雨林に棲息しています。20世紀初頭まで、アジア大陸に広く棲息していたトラ、その約9割が現在失われています。農業開発で森林が伐採され、人里が山奥まで広がりトラの棲息環境が破壊、医薬と嗜好品製造のための密猟で激減。日本にもトラ製品が大量に輸入されていて、2000年4月、やっと全面販売禁止。トラ滅亡に加担していたとは驚きです。

 2021年7月29日、世界トラの日の発表によると、177頭がタイ国に生存。インドネシアトラ種で、野生のゾウと共にタイ国の宝物です。

 「もともと野生動物の住処、健やかな森を返すように」とのプーミポン前国王の現地訪問の際のお言葉により、1999年クイブリ国立公園が設けられ、国を挙げて環境保全に取り組むようになりました。野生のトラは、さらに奥深い密林で生活し、国立公園となったことで棲息地域が保護され、近隣諸国では絶滅状態になっているインドネシア・トラが、タイのケーンクラチャン国立公園には生存しているのです。

 トラを頂点とする生態系を保護することは、私たち人間を含めた生命体が生きるための水資源ー豊かな自然ーを守ることなのです。黄金に黒の縞模様、動物界では素敵な頼もしい存在ですよね。

 そう言えば、愛称”スゥア”(トラ)と言うタイ人の親友がいます。京大卒で晴佐久神父様の「星言葉」のタイ語訳を引き受け、感動して一気に滑らかなタイ語に翻訳してくれました。5,000冊印刷、もう在庫ゼロです。その後も「風の交響曲」他、数冊の翻訳を引き受けてくれました。なかなかハンサムなトラさん、ありがたい存在です。

 寅年の2022年、トラの棲息に関係する13カ国が一堂に会し、“グローバル・タイガーサミット”が開かれます。人間がもっと賢く、謙虚になり、この地球棲家を大切に守る責任を果たすように、自然保護の聖人アッシジの聖フランシスコに切に祈ります。

 愛読者の皆様、逞しく素敵な寅年を!

(阿部羊子=あべ・ようこ=バンコク在住、聖パウロ女子修道会会員)

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2021年12月31日