・三輪先生の時々の思い ⑦中国企業が輸出する監視システムが自国に都合のいい国際秩序を生む危険 

 中国の防衛白書を瞥見すると、まず地球上全域に軍事拠点を設けるとしている事に注意がひかれる。吃驚してはいけない。米中勢力拮抗の現実に目を向ければ、何も特別目くじらたてることでもない。今やそれが国際政治の紛れもない現実なのだから。

 アメリカの軍事拠点と軍事介入の歴史を思い起こせば、中国の行動に納得がいくのではないか。むかし米ソの2極対立の時代があった。米ソ冷戦時代のことである。時代は移り、現代の世界的広がりを持った冷戦は米中間に存在していると言って過言ではない。

 時代は、今や国防も安全保障もAI(人工知能)の助け無しには万全を期し得ない 。その折から、習近平を国家主席とする独裁体制下の中国企業は、完成度が高い監視システムを世界各地に売り込んでいる。その広がりは、既存の国際法世界秩序に中国に都合のいい風穴を開けることになるだろう。中国に都合のいい新国際秩序が生まれ出てくるかもしれない。

 我々は日米同盟の枠組みの中にいるので、中国が仮想敵国であることを承知していなければならない。そしてその中国はGDPが今やアメリカに匹敵する経済大国であるこも忘れてはならない。かつて一時世界で一番の経済大国に昇りつめんとしていた我が国ではあったが、今日では第5位になっているそうだ。

 時あたかもオリンピック開催があと1年と迫った我が国である。メイン会場の国立新競技場の完成も近づいている。成熟国家としての日本の、そして日本人の魅力を、いやがうえにも万国の来訪者に満喫してもらえたらいいなと思う。

(2019・7・28記)

(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所長)

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2019年7月27日