「箱根の山は天下の険・・・一夫関にあたるや万夫も開く無し」と 歌われ、関西が関東に自在に入り来たるのを排していたあの堅牢な関 所は今は無く、お尋ね人を含めて人間も物品文物も往来自在である。
その恩恵を受けて、コンビニの商売が、日本の食文化をもノッペラボ ーにしている。年中行事にはいろいろ地方色があったものだが、こ こへ来て、「恵方巻」の関東進出に、ことさらに本年はイライラしてしまう。
コロナ、コロナで人心が苛立ち、ノッペラボーになってしまってい る感が深いからだろう。感性の個別性が払拭されて、ファシズム侵 攻の素地が、知らぬ間に進行しているような怖れすら感じるのである。(2021・1・30記)
(三輪公忠=みわ・きみただ=上智大学名誉教授、元上智大学国際関係研究所長、プリンストン大博士)