・ガブリエルの信仰見聞思 ⑩「Nunc Coepi(ヌンク・チェピ)―今、新たに始める」

 「ニューノーマル(新たな状態、新しい日常、新しい生活様式)」―昨今のコロナ禍関連の新語・流行語の1つです。この「ニューノーマル」は、不確実性、不安定さ、警戒、そして孤立さえある状態のようであり、また、不安の高まりが伴われる現実でもあるようです。

 「ニューノーマル」に関する記事を読んでいくうちに、新型コロナの世界的大感染によって私たちが直面している「ニューノーマル」と、私たちの個人生活の中で遭遇する「新しい現実」との類似点が見え始めました。

 克服しなければならない病気の発見、愛する人が亡くなった後の生活、長い間大切にしてきたものの喪失、犯してしまった過ちや失敗、いつも信頼してきた人からの裏切りなど、私たちの個人生活の新しい現実は、私たちが慣れ親しんできたものとは異なる限り、様々な形で現れてきます。

 新しい現実が何であれ、私たちはまったく知らない新しい領域に移動させられてしまいます。そして、私たちがそれらの手ごわい現実に引きずり込まれていくうちに、しばしば最も重要なこと、すなわち、祈りと主イエス・キリストへの依存を忘れてしまいがちになるのでは、と思います。

 「私の声よ、神に届け。/私は叫ぶ。/私の声よ、神に届け。/神は私に耳を傾けてくださる。苦難の日にわが主を尋ね求め/夜もたゆまず手を差し伸べた。」と詩編77編1-2節にあるように、私たちが恐れたり、困難に陥ったりするとき、神様はそこにおられます。どんな状況であろうと、またどんな現実であろうと、神様は私たちと共におられ、私たちが神様の導きを求めることを望んでおられます。

 ラテン語で「Nunc Coepi(ヌンク・チェピ)」というフレーズがあります。「今、新たに始める」を意味します。このフレーズは、主イエス・キリストの内にある新たな人生への呼びかけを完全に体現していると思います。

 Nunc Coepi(いま、新たに始める)。私たちの祈りの中、習慣の中、人間関係の中、仕事の中、人生のあらゆる変遷の中、そして、どんな状況に直面しても、どんな不安と悩みを抱えても、どんな過去や失敗があっても、私たちはいつでも主キリストの内に新たに始めることができ、いつでも主の導きを求め、主の聖なる御前で生きることを意識することができます。

 Nunc Coepiという句の背後にある信仰は、私たち一人一人のための神様の御計画への信頼、そして、人生の移り変わりの中を通しての信仰を示しています。なぜなら、私たちの人生における「ニューノーマル」」や「新しい現実」に関係なく、「イエス・キリストは、昨日も今日も、また永遠に変わることのない方」(ヘブライ人への手紙13章8節)だからです。

 主は、私たちが未来を恐れたり、過去を恥じたりして生きることを望んでおられません。主は私たちの過去の罪を洗い流し、主の摂理によって私たちの未来を導いてくださることを望んでおられます。私たちは後からではなく、いま、主に従わなければなりません。

 私たちは落胆に屈するのではなく、主が私たちの内に始められた善い業を完成してくださるようにしなればなりません(フィリピの信徒への手紙1章6節参照)。

 Nunc Coepi(ヌンク・チェピ)―今、新たに始めましょう。主に仕え、忠実に歩みましょう。振り返るために立ち留まらず、毎日新たに始めましょう。なぜなら、主が私たちに、「私たちの日ごとの糧を今日もお与えください。私たちの罪をお赦し下さい」とお祈りするように教えてくださったからです。

(ガブリエル・ギデオン=シンガポールで生まれて育ち、現在日本に住むカトリック信徒)

(聖書の引用は「聖書協会・共同訳」を使用)

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2020年9月2日