前回はドイツの福音主義教会が発表している教会員調査から「教会への信頼」の点だけを紹介しましたが、不十分でした。そこで、今回は、調査結果に対する二人の司教のうちの一人Dr.Tobias Kläden(司教協議会宣教司牧部門議長代理)の声明の概略を紹介します。冷静な分析で、これによって、カトリック教会の現状を、今まで以上に客観的に司教や司祭たちも認めざるを得なくなったと思われます。最後に、信徒団体「Wir sind Kirche(我々が教会)」の批判もご紹介します。
「Wir sind Kirche(我々が教会)」は1995年に発足し、一般信徒、聖職者約1800万人の署名を得ている組織で、うち1500万人はローマ・カトリックを信仰告白。以前このコラムでも紹介した倫理神学者ゲルハルト・ヘーリンクやハンス・キュンク(いずれも故人)などもメンバーです。
ドイツの司教協議会と信徒組織ZdKは、双方による「共同統治」を前提とした「シノドス委員会」を設置、さらに2026年に「シノドス評議会」を設立することを決議しました。しかし、「シノドスの道に思う⑨」で述べたように、バチカンから書簡で「シノドス委員会の規約を司教協議会全体として承認・批准するための投票を、行わないように」との”指示”を受け、司教協議会は、これに従って投票をしませんでした。これに「Wir sind Kirche(我々が教会)」が反発。3月1日に、司教団に対して「議事予定から投票を除けというのは、ローマからの誤ったメッセージだ。このような脅しに負けてはならない!」と声明を出しました。
*バチカンの矛盾-”ヒエラルキー(位階制)”と”シノダリティ(共働制)”のはざまで
”シノドスの道”を進める教皇フランシスコはこれまで、繰り返し「シノダリティ(共働制)と対話」を励す一方で、シノダリティを具体的に実行しようとするドイツの教会の取り組みを事実上、妨げ、バチカンの幹部たちは対話にも応じようとしない、これは無責任ではないのか、と「Wir sind Kirche(我々が教会)」は指摘しています。そして、このようなバチカンの姿勢が、「ドイツにおけるローマカトリック教会の評価を低下させており、昨年10月に公表されたドイツの教会員調査KMUの結果はその表れ」と断言、バチカン教理省の長官を実名で批判しています。
「Wir sind Kirche(我々が教会)」また、ドイツ司教団の”シノドスの道”をその中途で拒否し「シノドス委員会」への財政的支出を拒んだ4人の司教たち(ケルン、アイヒシュタット、パッサウ、レーゲンスブルクの4司教区)の姿勢は、ドイツの将来の教会の生育を阻むものとして有罪だと非難しています。この保守的な4人がいなければ、ドイツ司教団は一つにまとまっていたのに、彼ら
の存在がバチカンに「No」と言わせる口実を与えたから、としています。
筆者はこのコラム「シノドスの道に思う⑥」で、ZdKの副議長でもある神学者Thomas Södingの言葉から5つのことを共に考えるべきだ、と述べました。それは①聖書②伝統③時のしるし④神の民の声⑤教導職と神学-です。③と④を真剣に受け止めない限り、”シノドスの道”は、「Wir sind Kirche(我々が教会)」が危惧するような”うつろなシノダリティ ”に終わってしまうでしょう。
注*教会員調査(KMU)については https://kmu.ekd.de、司教の声明は https://www.dbk.de 、「Wir sind Kirche(我々が教会)」についてはhttps://www.wir.sind.kirche.de 参照。