(2020.8.8 Bitter Winter An Xin)
バチカンとの司教任命に関する暫定合意の更新を目指す中国政府・共産党は”良心的不服従”を貫こうとして司祭を迫害している事実が国外に漏れないように必死になっている。

Unregistered clergy members in China hope the Pope can hear their appealing voice
Bitter Winterは4月28日に「福建省のカトリック・ミンドン教区司祭、黄神父が、中国愛国天主協会(CPCA)に加入を強制され、拷問を受けた」と報道したが、この情報が国外にも伝わったことで、中国当局にパニックを起こしている。
特に、今の時期は、来月で期限が切れるバチカンと中国の中国国内での司教任命に関する暫定合意の延長をめぐる交渉が大詰めを迎えているからだ。(交渉のバチカン側の担当者であるクラウディオ・マリア・チェリ大司教は、1年または2年の期間延長の形で合意を更新する必要がある、と考えているようだ。)
ミンドン教区の関係者はBitter Winterの取材に対して、「地元の公安警察が黄神父の所に来て、拷問の詳細がどのように外部に漏洩したかを調べた。そして、Bitter Winterの報道は「中国のカトリック教会の一致を損なった。外国勢力の工作によってなされたものだ」と批判した、という。
中国政府内部の情報提供者が明らかにしたように、黄神父に対する拷問が海外で注目を集めたために、中国の公安部は「どのような犠牲を払っても、情報の漏洩者を見つける」ように同部の担当者に命じた。
当の黄神父に対しては、当局が彼に4日間、睡眠をとらせず、CPCAの加入を認めさせるために”exhausting an eagle”(注:ワシを手なずけるために行われる手法に由来するもので、足を紐につなぎ、眠ろうとすると、紐を引っ張り、強い光を顔に当てて、眠らせないようにする、というもの。こうすると「3日もたたずに、ワシは主人の言うことを聞くようになる」といわれ、中国では以前から転向される手法として「人」に使われているとされている)という拷問にかけたことを、なかったことにする文書に同意の署名をするよう強要した。
匿名を条件にBitter Winterの取材に応じたある司祭は、「2018年にバチカンと中国が行った暫定合意が間もなく期限を迎えますが、中国政府・共産党は、バチカンが交渉の中で、黄神父の問題を取り上げるのを恐れています。ですから、黄神父は拷問を受けたことを否定する文書に署名を強制されたのです。暫定合意の期間を延長させるために、不利な材料はなくしておきたいのです」と説明。
さらに「私たちは教皇が暫定合意の延長を考え直すのを望んでいます。暫定合意が中国のカトリック教会に利益をもたらしたでしょうか、それとも害を及ぼしたのでしょうか?教会の発展の余地はあるのでしょうか?自由が失われているのではありませんか?私たちは、教皇が中国政府・共産党の本質を見定め、カトリック教会としての態度を明確にして欲しいと思います。彼らは、自分たちの管理・統制に従わない聖職者を転向させ、バチカンからの干渉なしに教会を支配し、中国からカトリックを排除することを狙っているのです」と訴え、教皇とバチカンに中国国内の実態を正しく理解するように求めた。
当局は現在も、黄神父を厳重に監視し続けており、彼に接触した人は誰でも”情報漏洩者”とみなされ、調査の対象になる可能性がある。拷問について知っていると見なされた聖職者や教会の人々の携帯電話の通話も監視されている。
ある情報筋によると、別の地域の”地下教会”(教皇に忠誠を誓い、中国政府・共産党の管理・統制に服従するCPCAへの加入を拒否しているカトリック司教、司祭、信徒の教会)の神父が、黄洞神父の拷問について尋ねるためにミンドンの教会の信徒に電話を掛けた。だが、その信徒の電話は既に盗聴されており、当局は、事件の詳細を他人に教えないように、彼女に警告した。
だが、そうした当局の厳しい監視にもかかわらず、”地下教会”の司祭たちの一部は、司祭が受けている迫害について詳細を海外に訴える努力を諦めていない。 「迫害についての事実は、海外に知らされるべきです」とある司祭はBitterWinterに語った。
「国際社会はこのような中国国内の動きを、もっとしっかりと掴んでいく必要があります。黄神父の件が海外で明らかにされたことで、中国政府・共産党は少なくとも、これまでは、黄神父にしたような迫害行為によってCPCAへの加入を強制することを止めているのです」。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。