政府の承認を得ているカトリック司祭も、中国共産党の抑圧的な宗教政策に疑問を呈すると厳しい迫害にさらされる…。
劉江東神父は2015年に叙階され、中国共産党政府によって承認を受けて、河南省の省都、鄭州市の27区にある聖心カトリック教会で司祭を務めていた。国家承認の教会の意思決定機関、民主管理委員会の事務局長でもあった。
ところが、一昨年9月、鄭州市の「中国愛国天主協会」(CPCA)と同市27区の民族宗教事務委員会が、この30歳の司祭を”経理の乱脈”と”公金の私的目的での流用”で告発した。
AsiaNewsによると、告発の本当の理由は「政府の規制に従うのを拒否」したため。「若者たちと活発に活動し過ぎ」、信徒たちの為に「やりすぎ」たことも理由とされたという。
告発を受けて当局は神父を一週間拘留したうえで、司祭としての資格を一時停止とし、教会における全ての業務から締め出した。さらにその一か月後に神父は逮捕され、しばらくして1年2か月の禁固を言い渡した。
教区のある信徒は、BitterWinterの取材に対して、「会計事務所が教会の経理を毎年監査しており、経理処理に問題ありとの指摘はありませんでした… 当局は、彼が命令に従わなかったので、処罰すると繰り返し脅していたのです」と語った。
また別の関係
者は、「神父を弁護するために彼の家族が雇った弁護士は、内緒で『神父が拘禁されたのは、教会の経理の問題とは関係がない。当局は、自分の宗教政策に従おうとしない神父を教会と町から追い出したかっただけなのだ』と言っていました」と述べ、「当局の逮捕容疑は、教会の鐘楼から十字架が撤去されるのに抵抗し、主の愛の青年会を作ろうとし、18歳未満の未成年者を教会に招いたことです」と説明した。2月1日から施行された新宗教規制では、未成年者の教会立ち入りを禁じているのだ。
市27区の民族・宗教事務委員会が劉神父の司祭職はく奪を通告する文書
当局は、劉神父を、他の司祭たちに共産党の方針に従うよう強制する”見せしめ”に使ったのだ。「劉神父を見ろ。党の方針に従わなければ、同じように拘置所行きだ」と、他の神父たちを脅している。このように、中国政府・共産党が公認しているカトリックなど五つの宗教でさえ、当局の規制と脅しから逃れられない。
鄭州市内の教会鐘楼から当局の手で、十字架が外された
劉神父の拘留中に家宅捜索が行われ、1月10日、彼は荷物をまとめて教区を出ていくように命令された
バチカンが一昨年9月に中国政府と中国国内の司教任命について暫定合意した後、「良心的抵抗」をするカトリックの司祭、信徒を巡る状況は悪化を続けている。頻繁に嫌がらせを受け、迫害されている。
鄭州教区の管理者であり、教会の司祭だった劉神父は、共産党が任命した教区管理者の統率を認めなかったため、昨年3月4日に教区から追放された。
政府・党の指導に従わない教会、司祭への圧力は今年になってさらに強まりを見せており、”公認”されていた高位聖職者にまで及ぶようになっている。
AsiaNewの報道によると、中国福建省のミンドン教区の5つの教会は、先月、「火災安全基準」に違反した、として、水と電力の供給が打ち切られ、閉鎖された。これらの教会の司祭たちは政府・党管理の「中国愛国天主協会」に加盟するのを拒んだため、追放処分となり、同教区の郭西仁・補佐司教は住まいから追い出され、”ホームレス”となった、という。