(2021.7.29 カトリック・あい)
バチカン広報局が28日明らかにしたところによると、中国で、バチカンとの司教任命に関する暫定合意が2018年9月にされてから、5人目となる新司教が同日、叙階された。
Vatican News によると、叙階されたのは甘粛省平涼教区の補佐司教になるアントニオ李僡神父で、叙階式は、平涼の大聖堂で、雲南省の省都・昆明の教区長、ジュゼッペMaYinglin(馬垠凌)司教が司式して行われた。馬新司教は1972年に陝西省の眉県で生まれ、1990年に平涼市の教区神学校で学んだ後、国レベルの神学校に入り、1996年に司祭に叙階。さらに北京の中国人民大学で学んだ。
暫定合意の内容は未だに公表されていないが、一般に言われているのは、「中国側が司教の候補となる人物を選び、それをもとに教皇が任命する」というもの。バチカン広報局のブルーニ局長によると、教皇フランシスコは今年1月11日に李神父を司教に指名した、という。
だが、アジアの有力カトリック・メディアのLiCAS newsによると、李神父を司教叙階した昆明教区長の馬司教は、中国政府・共産党の指導・監督下にある中国司教協議会の会長で、中国天主愛国協会の副会長。式に出席した少なくとも30人の司祭のうち大多数が、北京の「劉陰街」(注:中国司教協議会と中国天主愛国協会の本部があるところ。つまり、中国政府・共産党の支配下にある二つの団体のメンバー、という意味)からの司祭であり、このことは、中国本土のカトリック司祭、信徒のうちの半数を占める、中国政府・共産党の支配を拒否する”地下教会”の人々は参加していない、ことを意味する。
また、教皇は1月11日に李神父を司教に指名したというが、バチカンの正式発表はいまだにされておらず、今回の任命・叙階も、中国政府・共産党のペースで行われ、”地下教会”を力で弾圧し、中国全土の信徒をその管理下に置こうとする”アメとムチ”戦略の一環との見方が強い。
匿名を条件に、LiCAS newsの質問に応じた現地の司祭は、李司教の叙階に際して「”劉陰街”ー中国の司教となるための訓練場ーで働くことの重要さが強調された」と説明。また、今回の司教叙階は、「バチカンとの合意がなければ、李司教の叙階は違法」という中国人なら誰でも分かっていることを“証明”するものだ、としている。これは、今回の司教叙階がバチカンとの間の暫定合意に基ずく、「バチカン公認の叙階」であることを強調する狙いが、中国政府・共産党にあることを暗に示唆したものとみられる。