Smoke rises over Thaketa township in Yangon, as security forces continue their crackdown on protests against the military coup. (AFP or licensors)
(2021.7.2 Vatican News staff reporter)
国軍のクーデター以後騒乱状態にあるミャンマーのチン州西部で7月26日、カトリックの神父とカテキスタが、国軍に抵抗する武装勢力に拉致された。
カトリック系の有力インターネット・メディアUCANewsが伝えたところによると、武装勢力はChinland Defence Force (CDF) で、拉致されたのはハッカ教区のスルクアにあるロザリオの聖母教会のノエル・フラン・ティン・タン神父とカテキスタ一人。スルクアの町からチン州の州都ハッカに移動中だった。
ティン・タン神父は、6月初めのこの地域での紛争激化で避難して来た老人や女性、子供たちを含む多くの人々の世話をしていた。
拉致後一週間を経過した2人の安否を気遣うハッカ教区長のルシウス・レ・クン司教は1日の声明で、CDFに対し、2人の身の安全と、速やかな解放を求めている。
これに対して、CDF側は、「2人の健康状態は良好」と述べる一方で、拉致の理由を「神父は、国軍に情報を提供する代わりに医療支援を受け、住民たちにも支援を受けるよう促したためだ」と述べ、「神父に対して、国軍の治安部隊と連絡をとらないよう警告したが、従わなかったため、逮捕を余儀なくされた」とし、解放の条件として、 「神父の任地をスルクアからハッカに異動させ、教会指導者2人の推薦状に署名すること」を挙げた。
イタリアの通信社AGIによると、神父たちはスルクアの人々の治療に使う薬をハッカで購入している時に、逮捕された、という。また、現地の住民たちは、ティン・タン神父が国軍の治安部隊と関係した事実はない、としているが、バチカンの通信社Fidesの取材に応じたハッカ教区のポール・スラ・キオ神父は、「CDFはティン・タン神父が国軍の将軍と接触しているのを見ている」とし、「その将軍はカトリック信徒で、ミサに出ており、ティン・タン神父の家にも頻繁に出かけていた。神父は、将軍に、『暴力を避けるように』と求めていたのです」と弁明している。
*反国軍武装勢力の抵抗激化
ミャンマーでは、2月1日の国軍クーデターで、民主指導者のアウン・サン・スーチー女史と政府幹部が拘束、追放され、これに対して、民主政府の回復とスー・チー女史らの解放を求める全国的な抗議行動が起こり、これを武力で弾圧しようとする国軍との間で、騒乱状態に陥っている。そうした中で、少数民族などが組織する武装勢力による国軍攻撃も激化。そうした武装勢力の一つであるCDFは、5月にチン州で勃発した武力衝突で、国軍部隊に多大の大な犠牲者を出している。
7月30日の国連報告によると、武力衝突は依然として激しさを増しており、現地の住民1万8000人以上がチン州と隣接するマグウェおよびサガイン地区へ避難している。そうした中で、カトリック神父も標的にされ、5月から6月にかけて、チン、カチン両州とマンダレーで8人が国軍に逮捕されているが、武装勢力による拉致は初めてと見られる。
*国軍トップは”政治的解決”を目指す、と言うが
仏教国のミャンマーでは、キリスト教徒は少数派で、総人口5400万人に占める割合は6.2パーセントにすぎず、カトリック教徒はさらに少なく総人口の1.5パーセント。その大半は、何十年にもわたって軍による弾圧と迫害を受けて来たカチン、チン、カレン、カヤーの少数民族だ。ミャンマーの国連人道問題調整事務所によると、国軍クーデター以来、これらの少数民族を中心に22万人以上が国内外に難民となっている。
国軍クーデターによって引き起こされた政治的、社会経済的、人道的な危機は、新型コロナウイルスの感染がもたらした医療危機によってさらに深刻化している。そうした中で、国軍のミン・アウン・フライン国軍総司令官が、クーデターから6か月となる8月1日、暫定政府の首相に就任、東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力して「政治的解決策」を見つけ、2年以内に総選挙を行って「新たな複数政党制」の自立を目指す、と述べた。
ミャンマーの軍事統治者ミン・アウン・ラインは、日曜日のクーデターから6か月を迎え、新たに結成された暫定政府の首相に就任した。 2月1日のクーデター後に結成された軍事支援の国家行政評議会(SAC)は、現在、暫定政府として改革されています。軍事フンタの指導者は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力して国の政治的解決策を見つけると述べ、2年以内に新たな複数政党制の選挙を約束した。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)