(2020.8.16 カトリック・あい)
長期内紛が続くミャンマーでの国民和解と和平実現のための「21世紀ピンロン連邦和平会議」の第4回会合が19日から3日間、首都ネピドーで、同国国家顧問アウンサンスーチー氏が主宰して開かれるが、アジア・カトリック司教協議会連盟の会長でヤンゴン大司教であるチャールズ・ボー枢機卿が15日、声明を発表し、暴力ではなく対話と交渉を通じて国民に団結と平和の実現への努力を強く求めた。
15日付けのVatican News が伝えたもので、声明でボー枢機卿は「私たちは皆、内戦によって被害を受けています。誰も勝者にはなりません。問題解決の唯一の方法は平和です。平和によって人類は勝利するのです」と訴えた。
ミャンマーからタイに至るインドシナ半島は何世紀もの間、様々な民族、宗教が混在する中で、争いが絶えず、それに乗じて、世界各地に植民地支配を広げる英国が1886年に英領インドに併合する形で支配権を握り、1941年の太平洋戦争勃発まで55年にわたる英国による植民地支配が続いた。
翌1942年、”建国の父”となるアウンサンがビルマ独立義勇軍を率い、日本軍と共に戦いイギリス軍を駆逐し、1943年に日本の後押しでバー・モウを元首とするビルマ国が建国されたものの、日本の敗戦とともに、ふたたび英国が植民地として支配。1948年になってようやく、イギリス連邦を離脱してビルマ連邦として独立したものの、直後からカレン人が独立闘争を行うなど、不安定な状態が続いた。
軍部の独裁政権が長期にわたったあと、2010年の総選挙で民主化が動き出し、2016年3月に国民民主同盟から54年ぶりの文民大統領が選出された。だが、それ以前の2012年6月にはラカイン州でムスリムのロヒンギャと仏教徒との対立が激化、2013年3月にはメイッティーラでも死者が多数出る暴動や放火が発生。さらに、2016年以降、ミャンマー国軍によるロヒンギャ・イスラム教徒の虐殺、民族浄化が続き、ロヒンギャ虐殺の被害者数が6千人以上の月もあったことが報道され、2017年8月には、反政府武装組織アラカン・ロヒンギャ救世軍がラカイン州内の治安組織を襲撃。軍の大規模な反撃を契機に、数十万人規模の難民がバングラデシュ側へ流出するなど、大きな犠牲を伴う内紛が続いている。
「21世紀ピンロン連邦和平会議」は2016年に、イギリス支配下の1947年に開かれ、翌48年の国の誕生の基礎を築いた「第一回パンロング会議」にちなんで名づけられたもので、アウンサンスーチー国家顧問のもと、国軍とさまざまな武装民族グループの指導者が、数十年に及ぶ民族間紛争の終焉を願って、始められた。ただ、ミャンマー政府は、ラカイン州とチン州で国軍と戦っているアラカン軍を「テロ組織」として会議メンバーから除外するなど、発足当初から躓きを見せ、これまで毎年開かれた会議も成果を上げるに至っていない。
このような現況を踏まえて、Religions for Peace Internationalの共同議長でもあるボー枢機卿は、会議出席者たちが、これまでのミャンマーの死と苦しみの歴史を覆すように求め、新型コロナウイルスの世界的大感染との国を挙げての戦いが求められている今、特別にそれが求められていることを強調した。
そして、グチエレス国連事務総長と教皇フランシスコの「ウイルスは一致を通して飲み、克服できる」との言葉を想起し、「一致を通して、私たちは、新型ウイルスの世界的大感染による社会・経済、環境、そしての医療の崩壊を乗り越え、私たちの国を再建することができるのです」とし、さらに、そうした中でも続いている内戦を止めるためには「対話意外に道はありません… 対話は開かれた心と心、真実を求める情熱から生まれます。その活力は、互いの違いを受け入れることから生まれるのです」と訴えた。
枢機卿はさらに踏み込んで、「ミャンマーの目指すべき道は民主主義。全国民を配慮する政府代表による真の連邦国家の建設」を提唱。「互いの違いの軍事的解決策は逆効果。民主主義の最大の武器は、和解と正義。協力と知恵による解決を目指さねばならない… 国の統治は、民主的な選挙で選ばれた大統領の権限下に置かれなければならりません」と会議に出席を予定する各派代表に求めた。