(2020.8.13 Vatican News)
韓国・ソウル教区長で北朝鮮・平壌教区管理者を兼務しているヨム・スジョン(廉洙政)枢機卿が13日、平壌教区をファティマの聖母に奉献することとし、15日の聖母被昇天の祝日にソウル市の明洞大聖堂で奉献式を行うことを明らかにした。
その中で枢機卿は、「聖母の被昇天は、私たち信徒にとっての希望のしるしです。それは、『聖母のように私たちが信じることに忠実であれば、私たちは救われ、神の国で永遠の命をいただく』という希望を与えられるからです」(ルカ福音書1章38節参照)と語った。
そのうえで、「日本による植民地支配からの解放75周年、朝鮮戦争の勃発70周年に当たる今年、私は、真剣な祈りと識別を踏まえ、平壌教区をファティマの聖母に奉献することに決めました」と述べ、「北朝鮮の兄弟姉妹と聖母被昇天の喜びを分かち合える日が間もなく来る」ことへの希望を表明した。
ヨム枢機卿は、75年前の1945年8月15日が日本の植民地支配から解放された日であることから、「15日に奉献式を行うことには、韓国の教会にとって特別の意味がある」とし、「解放に続く朝鮮戦争、そして国の分裂があり、すべての朝鮮の人々は言葉にできないほどの苦しみを味わいました」。そして、「信徒たちはさらに大きな苦しみを受け、教会と修道院は、朝鮮戦争中に閉鎖され、司祭、宗教家、信者が拘留され、迫害され、殺されました」とし、「神のしもべ」ボルジア・ホンヨンホ司教と80人の仲間が死に至るまで信仰を証しし、「金日成政権による宗教迫害の殉教者」となったことを、例として挙げた。
さらに枢機卿は、今日でも「北朝鮮には司牧活動ができる聖職者が一人もいない」ことを嘆き、「この悲しい現実を正すには、神の特別な恵みが必要です」と述べ、今回の平壌教区のファティマの聖母への奉献は、植民地支配からの解放75周年と朝鮮戦争勃発70周年という二つの出来事を記念する、その日に行う意義を改めて強調。「いつの日か両国の教会が、厳粛なミサ典礼に与る喜びを共に分かち合えるようになることを、望んでいます」と繰り返した。
また枢機卿は、平壌教区が奉献されるのは1927年に同教区が設立されて以来、初めてであり、奉献式が同教区の聖堂でなく、ソウルの明洞大聖堂で行われるとしても、「平壌教区とソウル大司教区の霊的な一致を考えると、とても意義深いものがあります」と奉献の意義を説き、教皇フランシスコが、15日の奉献の日に、「聖母マリアの保護を願う特別の祈り」を約束してくださったことも明らかにした。
枢機卿は、韓国のカトリック教会が朝鮮半島に真の平和がもたらされるように、様々な人道的な活動を積極的に行っている、とする一方で、半島の二つの国の間には依然として緊張が続いていること、新型コロナウイルスの大感染が、「イデオロギー的対立、人命への脅威の蔓延、富の二極化」を一段と激化させ、世代間、階級間の対立を深めるように作用している、という現実を指摘。
そうした中で、「私たちは祈り、回心し、犠牲と奉仕を通して『平和の使徒』として仕えるように主から呼ばれています… 主イエス・キリストが私たちに教えてくださった愛を実践することによって、社会のあらゆる場面に及んでいる不安と不信を克服することによって、この地上に真の平和を確立しましょう」と訴えた。
さらに、「私たちの時代の緊急の課題は、誰もが平和に一致し、共生できる共同体の精神を取り戻すことだと信じています… これはすべての人が神の似姿として創られたのだ、と皆が確信する時に初めて可能になる」と強調し、「私たちには、力ではなく、相互信頼に基づく対話が必要です。南北両国は心を開き、真の平和を求めて話し始めることです」と希望を表明した。
また、平和の母である聖母マリアの執り成しを願い、「私たちの社会に真の平和をもたらすために」と祈るように、信徒たちに呼び掛け、「北朝鮮の教会が、聖母の保護と執り成しを通して、喜びと平和の中に、主を賛美することができる日がまもなく来ることを願っています」と付け加えた。
最後に、ヨム枢機卿は、聖母被昇天の祝日に当たって、聖母マリアの愛が賜物として与えられるように、「愛と平和にあふれた新しい世界」が実現するように、そして、神の慈しみが新型ウイルスに苦しむすべての人と共にあるように、祈った。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)