・コロナ感染者急増のインドで、カトリック司祭も5週間で約160人が感染死亡

A Covid-19 patient receives treatment at a makeshift open-air clinic in Mewla village, UP, India. A Covid-19 patient receives treatment at a makeshift open-air clinic in Mewla village, UP, India.  

(2021.5.17 Vatican News  Robin Gomes)

 新型コロナウイルス感染が深刻な状態を続けているインドでは、毎日平均4,000人が感染で死亡、カトリック教会も大きな打撃を受けている。

 カトリック誌IndianCurrents編集長のスレシュ・マシュー神父によると、最近ではインド全土で1日平均4人の司祭が亡くなっており、司祭の死者はここ5週間だけで約160人。司教の死者も今年に入って、2月に1人、5月初めに2人が命を落とした。また160人の死者のうち、60人以上が修道士で、なかでもイエズス会士が24人と目立って多い。ラテン典礼教会と2つの東方典礼の教会の司祭などが含まれている。

 

*司祭不足の教会に大きな打撃

 しかも、この数字は、インドのカトリック教会の174教区すべてを網羅していないため、実際の死者はさらに多い可能性があり、マシュー神父は「インド全土の司祭は3万人しかいない。カトリック教会にとって極めて憂慮すべき事態」としている。

 昨年来、高水準の感染が続いていたインドでは、4月中旬以降、感染がさらに加速、毎日30万人以上の新規感染者が出ており、これに対応する医療機関の病床数、酸素吸入などの機器、医薬品の不足も深刻。感染者が病院の廊下や敷地を埋め尽くし、救急車の中で死亡する例も頻繁に起きている。火葬場や埋葬地には、膨大な数の遺体が並び、埋葬費を払えない生活困窮者は亡くなった親族を川に投げいれるなど、状況は一段と悲惨なものになっている。

 インド保健省によると、17日には一日の新規感染者が4月21日以来初めて30万人を下回ったものの、死者は1日あたり4千人を超え続けている。昨年初めに新型コロナ感染が明確になって以来の感染者の死者の累計は17日現在で27万4390人という。

*適時適切な対応の不足補う対策

 中部のマディヤ・ プラデーシュ州のジャバルプル教区長のジェラルド・アルメイダ司教は「たくさんの司祭が、適時適切な治療を受けられずに死線をさまよっています。恐ろしい状況です… 司祭が不足し、司祭職への召命が非常に少ないこの国で、非常に多くの司祭が亡くなっていることに、大きな衝撃を受けています」と語った。特に、地域の教会共同体の信徒たちの司牧に当たる現場の司祭やシスターの感染死を懸念し、「この災難を克服するために、彼ら、彼女らの心身の健康を守ることに努めたい」と述べている。

 アルメイダ司教は具体的な対応として、感染した司祭やシスターのための酸素吸入などの機器を備えた隔離治療センターを開設。現在、訪問医と4人の看護師が、14人の司祭、26人のシスターの治療に当たっている。また、教区の司祭、シスター全員に対し、発熱や頭痛などの症状が出たら軽度のものであっても、必ず、報告するよう指示し、検査で陽性と判定されれば、直ちにセンターに収容されるよう手順を整えている。「重症患者は専門病院に送り、軽症の場合はセンターで回復するまで手当てを続けます」と言う。

 

*聖職者へ精神的なケアの体制強化も必要

 ある聖職者は、「新型コロナ感染そのものに十分な対策が出来ていないことも問題だが、司祭などへの精神的ケアの充実も課題」と指摘する。 「新型コロナ感染による悲惨な状況の中で、多くの司祭が、信徒たちへの司牧活動を制限され、孤立し、苦悩している。福音宣教と言う彼らの使命が果たせないことが、彼らにとってショックなのです」と苦渋を漏らしている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年5月18日