・「直ちに殺人行為をやめよ」ーミャンマー、ボー枢機卿が訴え―死者120人超える

 2月1日の軍事クーデター以後騒乱が続くミャンマーでは、クーデターを強行した国軍が14日から15日にかけて、最大都市ヤンゴンの6地区に戒厳令を発令し、警察に代わり国軍が主体となってデモの弾圧を進める構えを示している。これまでに軍、警察によるデモ弾圧などで民の犠牲者は120人を超えているが、国軍は、国際社会の批判、警告を無視し、弾圧をいっそう本格化させようとしている。

 そうした中で、同国のカトリック教会の指導者、チャールズ・ボー枢機卿が、38人と一日としてはこれまでで最大の死者を出した14日、軍、警察の治安部隊による残虐行為、殺人行為を強く批判、「直ちに殺人行為をやめねばならない」と訴えた。

A candlelit protest in Yangon, Myanmar. A candlelit protest in Yangon, Myanmar.  Card. Bo: “Killing must stop at once” in Myanmar

(2021.3.15 Vatican News  Robin Gomes)

*兄弟姉妹の血が流されている

 ボー枢機卿の訴えは、先の民主選挙で国民が選び、軍のクーデターで投獄されている政治指導者、国軍指導者はじめすべての国民に当てた公開書簡の形で出された。

 その中で枢機卿は「ミャンマーのカトリック教会を指導する者として、私たちはミャンマーのすべての組織・団体に平和の追求を強く求めます」とし、 「現在の危機は、流血によって解決されることはありません… 既に多くの人が命を落としています。殺人行為は直ちに止めねばなりません」と訴えた。

 さらに、「流されている血は、”敵”の血ではない。私たちの兄弟姉妹、私たちの民衆の血なのです」と強調した。

 ミャンマーでは14日、ヤンゴンなどで軍、警察などの治安部隊による発砲で、少なくとも38人が殺害されたが、これに抗議する人々の一部が、国軍を支持しているとみられる中国が出資する工場を焼き討ちするなど、騒乱に拍車がかかった形になっている。人権団体の政治犯支援協会(AAPP)によると、これまでに2156人が軍、警察に拘束され、うち1837人が現在も拘留されているという。

*若者たちが希望を失う国にしないで

 ボー枢機卿は、軍、警察の治安部隊に「残虐行為の道を放棄する」よう促し、「これまで若者たちは、希望を持って生きてきました… 彼らを、生きていても意味がない、と失望させる国にしてはなりません」と懇願した。

 また、教皇フランシスコが先月の日曜正午の祈りで、ミャンマーの騒乱の当事者たちに向けて語られた言葉ー軍事クーデターによって民主主義への道が「乱暴に中断された」ことを強く悲しみ、軍の指導者たちに公益に奉仕し、社会正義と国家の安定を促進する誠実な意思を示すように」として、逮捕・投獄されている民主指導者たちの早期解放を求めたーを思い起こし、教皇と聖座の励ましによって強められたミャンマーのカトリック教会は「相互理解と平和の中で、国が再び立ち上がれるように全力を挙げる」と表明した。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

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2021年3月16日