中国のカトリック信徒、政府の新規制によるさらなる抑圧を懸念(Crux)

(2017.9.22 Catholic News Service/Crux  CONTRIBUTOR) 香港発―カトリック教会幹部は中国政府が発表した宗教関係の規制改定が、国の安全を守る名目で、国内の宗教的な活動をさらなる抑圧につながることを懸念している。

 李克強首相が今月初め、新規制を来年2月1日から実施する、と発表した。香港の聖霊研究センターのアンソニー・ラム事務局長はucanews.comに対して「新規制の内容は、改訂にあたって、宗教団体の意見を聞かなかったことを示している。2005年施行の現在の規制は比較的緩やかなものだったが、そもそも規制の目的は宗教を完全に政府の管理下に置くことなのだ」と言う。

 また、新規制には、習金平政権の前政権との政治手法の違いが出ている、と言う。当局の許可を得ない宗教活動の場は厳しく取り締まる、としており、これは、例えば、自宅で禅の瞑想をする内装をしたら取り締まりの対象となる、ということだ。「新規制で影響を受けるのは、政府公認のカトリック教会も、”地下”教会も同じだ」とラムは強調する。政府に責任者が登録されている公認教会でも、当局から非公認の宗教施設と判断されれば、裏金を要求される。

  新規制の原案は2014年に発表されていたが、最終版が公けになったのはごく最近だ。 ucanews.comによると規制内容は全般的な規制と、宗教団体、施設、個人、財産、法的責任などの章に分かれており、宗教団体の構成や活動の要件なども定められている、という。

  香港中国大学神学部のイン・フク・ツアン学部長はucanews.comに「この‶法の支配〟の重点は宗教関係全般の管理強化にある。中国政府は、規制の狙いが市民の宗教的自由の保護にある、としているが、そんなことはありえません」と語った。主たる狙いは、宗教関係の団体を中国の憲法、諸法律、諸規制そのたの決まりごとに従わせるだけでなく、「社会主義の核心的価値」を実践させることにある、のだと言う。そして、宗教団体や信徒に具体的に何を要求しようとしているのかまだ明らかでないところもあり、信仰の真髄まで危機に陥れることを狙っているのではないか、と懸念を深めている。

 浙江省の‶地下〟教会で司牧活動をしているヨゼフ神父はucanews.comに、組織的で大きな規模の宗教活動が、非公認と決めつけられ、罰則が適用されることを心配している、と語り、「現行の規制と表面上は大きな差はないが、締め付けが厳しくなる」と懸念する。新規制によって、当局は許可を得ない宗教活動に、最低1万5000ドル相当の罰金を科することができ、献金収入や不動産を差し押さえることも可能になる。それだけではなく、教会責任者に辞任を求めることも可能になるという。

 ヨゼフ神父は、「バチカンがこのような事態をどこまで正確に認識しているか分からない」とも語っている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2017年9月28日