・中国・国家宗教事務局がオンラインによる宗教活動に新たな規制—共産党の指導の下、外国との関わりや未成年への布教禁止

 

国家宗教事務局ウェブサイトに掲載された新規制。

The new regulations published in the National Religious Affairs Administration website.

   今や中国の宗教政策が「信仰の自由」というより「我々が指示する内容を、静かに、オフラインで、できれば標準中国語で信じる自由」であることは周知の事実だ。

 しかし国家宗教事務局が発表した最新の規制文書—”教皇勅書”のような官僚的厳粛さとハンマーのような繊細さを兼ね備えたこの文書—は、聖職者に対するデジタル上の拘束を新たな精度へと引き上げている。

 9月15日に公表されたこの文書は「宗教教職人員ネットワーク行為規範」と題され、「宗教関係者がオンライン上で行ってよいこと、行ってはならないこと」を定めた18条からなる。儒教的礼儀作法とサイバーセキュリティ政策、そしてオーウェル的な統制手法が混ざり合ったような内容だ。

 その口調は紛れもなく父権的だ― 「説教は公式認可の経路でのみ許可される。教育活動は認可されたプラットフォーム上でのみ認められる。そして何よりも、”お香の儀式”を生配信するなど絶対に許されない」。

 基本事項から説明しよう。ここに定められた諸規定は、中国国内で活動する全ての宗教教職者(香港・マカオ・台湾出身者、さらには本土で活動する外国人教職者を含む)に適用される。

 オンライン布教と宗教教育は、政府発行の「インターネット宗教情報サービス許可証」を保持する登録宗教団体(寺院・教会・神学校)が運営するプラットフォームでのみ認められる。個人のSNSアカウント、ライブ配信、WeChatグループ、非公式フォーラムでの宗教指導は厳禁される。

 自己宣伝は禁止され、聖職者は宗教的立場を利用して信者やアクセスを集めてはならない。外国との関わりは禁止される。「海外からの宗教的浸透」への支援・参加は認められない。過激主義や異端は明確に違法とされ、それには「邪教」「迷信」「非主流」宗教思想の宣伝も含まれる。

 未成年者への働きかけは禁止。聖職者は未成年のユーザーへの布教や、青少年向け宗教キャンプ・研修の開催を行ってはならない。商業化は認められない。オンライン上での資金調達、宗教関連商品の販売、宗教活動の収益化は一切認められない。AI伝道も禁止事項だ。聖職者は生成AIを用いて宗教コンテンツを制作・拡散してはならない。

 違反者は行政処分(宗教資格停止、オンラインアカウント閉鎖、刑事捜査を含む)を受ける可能性がある。非準拠コンテンツをホストするプラットフォームは、問題アカウントの制限・警告・閉鎖を命じられる場合がある。

 この規制は単なる行動規範ではなく、思想的整合性を求めるものだ。

 聖職者は、中国共産党の指導を堅持し、社会主義的価値観を推進し、宗教の「中国化」を支持することが義務付けられている。これは、宗教教義を国家イデオロギーに整合させることを意味する。つまり、宗教的表現は愛国的で、党に友好的な、文化的に浄化された「中国的な特徴を持つ説教」でなければならない。

 この文書は「秩序」や「調和」という言葉で表現されているが、その意味するところは厳しい。実質的に、オンライン上での自発的な宗教的表現を犯罪化し、聖職者を国際的な宗教的議論から隔離し、神聖な言葉を国家検閲官の監視下に置くものである。

 中国が宗教生活への締め付けを強化するのは今回が初めてではないが、技術的に最も侵襲的な措置の一つとなる可能性がある。説教がストリーミングされ、祈りがオンラインで交わされるデジタル伝道の時代において、この規制は社会から神聖なものを意図的に切り離そうとする試みに感じられる。

 聖職者は依然として発言できるが、党の拡声器を通してのみである。

 許可されるもの:国家宗教事務局のウェブサイトは常に習近平を最優先に宣伝する。What is allowed: the National Religious Affairs Administration’s website always promotes Xi Jinping first.

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「宗教聖職者のネット行動に関する規定」の全文は以下の通り。

第1条:本規定は『宗教事務条例』『宗教聖職者管理弁

法』『インターネット情報サービス管理弁法』『インターネット宗教情報サービス管理弁法』その他の法令に基づき制定され、宗教聖職者のネット上の行動を規範化し、インターネット宗教分野の秩序を維持することを目的とする。

第2条:オンライン活動に従事する宗教職者は、祖国を愛し、中国共産党の指導を支持し、社会主義制度を擁護し、国家の法律・法規に従い、宗教事務管理に関する関連規定を遵守しなければならない。社会道徳を遵守し、公序良俗を維持し、「インターネット文明利用自律規約」の遵守において模範を示し、宗教の規律・規則に従い、政府の監督と社会の監視を受け入れなければならない。

第3条 宗教職者は、インターネット利用において社会主義中核的価値観を堅持し、わが国宗教の独立自主・自主管理の原則に従い、わが国宗教の中国化を堅持し、積極的に宗教を社会主義社会に適応させるよう導き、宗教・社会・民族の調和を促進しなければならない。

第4条:宗教職者が職務外でオンライン活動を行う場合、国家の法律・法規及び宗教事務管理に関する関連規定を遵守しなければならない。宗教職者として情報共有や即時通信を行うための公開オンラインアカウントを登録・利用する際は、インターネットサービスプロバイダーに対し職位証明書を提出して認証を受ける必要がある。

第5条 宗教職者は、宗教団体、宗教学校、寺院、教会等が合法的に設立し、「インターネット宗教情報サービス許可証」を取得したウェブサイト、アプリケーション、フォーラム及び類似のプラットフォームを通じてのみ、説教、宗教教育及びオンライン研修を提供することができる。

第6条 宗教職者は良好なネット習慣を養い、意図的にネガティブなネット文化に抵抗し、自己宣伝や宗教的話題・内容を用いた注目・トラフィック集めを行ってはならない。

第7条 宗教関係者がインターネットを通じて作成、複製、保存、公開、

共有する全ての情報には、国家権力転覆の扇動、中国共産党指導への反対、社会主義制度・国家統一・民族和合・社会安定の破壊、国家司法・教育・婚姻・社会管理制度の執行妨害を内容として含めてはならない。

第8条:宗教聖職者は、インターネットを通じて外国勢力と結託してはならず、外国の宗教的浸透活動を支持または参加してはならない。

第9条:宗教聖職者は、オンライン上で過激な宗教的服装を展示・着用・宣伝したり、過激な宗教思想を拡散したり、宗教的狂信を煽動したり、過激主義・テロリズム・民族分離主義を助長してはならない。

第10条 宗教の聖職者は、インターネットを通じて未成年者に宗教思想を流布したり宗教的信仰を誘導したりしてはならず、未成年者を組織して宗教教育・訓練、サマー(ウィンター)キャンプに参加させたり、未成年者を組織・強制して宗教活動に参加させてはならない。

第11条 宗教の聖職者は、インターネット上で邪教や仏教の異端宗派を宣伝したり、占い・占卜・占星術などの封建的迷信に関与してはならない。

第12条 宗教職者は、インターネット上で未確認の虚偽情報を公表してはならず、不和を煽り、対立を煽り、噂を流布し、虚偽の告発を行い、攻撃し、または誹謗してはならない。異なる宗教間及び同一宗教内の調和ある共存を損なうことを避け、宗教的・非宗教的市民を差別または侮辱してはならない。

第13条:本規則第5条に定める場合を除き、宗教職者はライブ配信、ショート動画、オンライン集会、WeChatグループ、WeChatモーメンツ等による布教を行ってはならない。また、儀式・礼拝・ミサなどのオンライン宗教活動、ならびに焼香・仏事・読経・授戒・洗礼などの宗教儀式の主催・参加を行ってはならず、「瞑想」「浄化」「癒し」など宗教的色彩・内容を持つオンライン学習・研修を実施してはならない。

第14条:宗教職者は、オンライン上で宗教を利用して収入を得ることを禁止する。宗教施設の建設や宗教活動の名目でデジタル寄付を募ることを禁止する。商品販売、ライブ配信、報酬提供などの商業活動や、商業的な公演・芸能活動への参加を組織・関与することを禁止する。

第15条:宗教職者は、インターネットを通じて宗教内部刊行物や違法出版物を配布・共有してはならない。

第16条:宗教職者は生成AI製品・サービスを法に基づき使用し、AI技術を用いて違法情

報を説教・制作・出版・拡散したり、不法活動に参加してはならない。

第17条:宗教職者が本規定に違反した場合、宗教事務局は期限を定めて行為の是正を命じる。従わない場合、同局はインターネット情報弁公室、通信部門、公安機関、国家安全機関及びその他の関係部門と連携し、関連法規に基づき処罰を科す。情状が重い場合、同部門は関連宗教団体・宗教学校・活動場所に対し宗教活動の停止または聖職者資格の剥奪を勧告し、責任者を問責する。違反聖職者がオンライン宗教情報プラットフォームの登録ユーザーである場合、同部門はインターネット情報弁公室及び公安機関と連携し、プラットフォーム提供者に対し法律及び契約に基づき警告・是正・制限・アカウント閉鎖等の措置を講じるよう要求する。

第18条:海外ウェブサイトプラットフォームを通じてオンライン活動を行う宗教聖職者は、本規定を遵守しなければならない。香港、マカオ、台湾の宗教聖職者及び外国籍宗教聖職者は、国内でオンライン活動を行う際、本規定を参照するものとする。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

2025年9月20日

・中国で政府・共産党の”台本付きプロパガンダ”が国内メディアに広く浸透ー米国の調査報告(Bitter Winter)

さまざまな中国語の新聞を販売するキオスクでは、すべてが同じストーリーを伝えています。AI生成。(図右:さまざまな中国語の新聞を販売するキオスクでは、すべてが同じストーリーを伝えている=AI生成)

 メディアが政府のコミュニケーションに対抗する批判的な声として活動する他の国々とは対照的に、中国のジャーナリズムは公式のプロパガンダを広めるためだけに存在している。

 米国の中国研究者たちがまとめた調査分析報告「習近平下の中国における諸ニュースメディアの10年にわたる成長」が明らかにしたもので、 U.S. National Academy of Sciences(米国科学アカデミー)の紀要に掲載され、6月17日にスタンフォード大学中国経済・制度研究センターでの議論のテーマに取り上げられた。

 この重要な研究は、習近平が権力を握った2012年から2022年にかけて、中国の新聞における政府制作のコンテンツ(「台本付きプロパガンダ」と呼ばれる)の体系的な成長を分析している。

 調査・分析に当たって、研究者たちは、中国国内の700の共産党の新聞といわゆる商業新聞に掲載された1100万件以上の記事を含むデータ資料を用いて、中国共産党(CCP)が中央集権的に”スクリプト化”(一連の党の指令をプログラムとして記述すること)されたコンテンツを国内のメディアにどのように浸透させているかについて、実証している。

 その分析結果によると、中国におけるメディア多元主義を否定し、専制独裁的な環境の中で(これに抵抗するような)”秘密のプロパガンダ”を検出するための、新しい枠組みを導入している、という。調査報告は、”台本化されたプロパガンダ”は、中国共産党宣伝部や国営通信社・新華社などによって、ほとんどそのまま、全国の新聞などメディアに提供される。そして、複数のメディアに同時に掲載されることがよくある、としている。

 ”スクリプト化”されたコンテンツを検出するために、研究者たちは、さまざまな新聞に同じ日に掲載された類似の記事のクラスターを見つける新しい計算方法を開発した。それによって、「China Digital Times」からリークされた1000件以上のプロパガンダ指令で検証され、国家が認めた記事の掲載を義務付けたことが確認された。

 中国では、「台本通りのプロパガンダ」が、各種メディアを通して、ほぼ日常的に行われている。2012年から2022年にかけて、党の新聞は90%の日に少なくとも1つの台本記事を掲載した。台本付きの記事は、記念日、指導者の交代、危機など、政治的にデリケートな時期に、主要な新聞の全コンテンツの最大30%を占める可能性がある。

しかも、”スクリプト化”されたコンテンツの使用は著しく増加しています。2012年には、党の新聞の一面記事の約5〜7%しか台本化されていなかったが、2022年には、4倍の約20%に増えた。この台頭は、習近平政権下での「メディアの中央集権化」と「イデオロギーによる制約」という広範な傾向を浮き彫りにしている。

ジャーナリストと会う習近平。出典:中華人民共和国大統領府(写真左*ジャーナリストと会う習近平。出典:中華人民共和国大統領府)

 中国国内の新聞には従来、”台本記事”をそれぞれの置かれた状況に合わせたり、〝現地化”したりする傾向があったが、今は薄れつつある。

 2010年代の初めには、いくつかのメディアが見出しを変更したり、地元の文脈を追加したりしていましたが、今回の調査対象期間の終わりまでに、ほとんどの記事は〝台本記事”に手を加えず,〝複製″するようになっており、編集の独立性の低下と中国政府・党の発するメッセージの徹底を示している。

 「プロパガンダは、政党が支配するメディアに限定されている」という西側の”常識”に反して、中国では、商業新聞でも記事の「台本化」が浸透していることを、この報告は明らかにしている。

 共産党の出版物が主なチャネルであるが、商業新聞、特に読者数の多い新聞は、政府・党が作成した記事を特集することが多く、多くの場合、情報源の適切な開示が行われていない。

 台本通りのプロパガンダは、イデオロギーや政治関係のテーマに留まらない。ナショナリズム、党の業績、習近平思想などのテーマが一般的であるものの、この報告では、台本のあるコンテンツには、公衆衛生、自然災害、犯罪、ライフスタイル問題などのトピックも及んでおり、この”多様な取り組み”によって、中国政府・党は、さまざまな日常の問題に関する”公の意見”を形成することが可能になっている。

 この報告では、新型コロナの大感染の下での中国メディアの報道についても分析しており、「危機管理における台本化されたプロパガンダ」が中国政府・党によって使われたことを実証している。感染拡大が始まった際、中国政府・党は重要な最新情報の国民や世界への提供を先延ばしする一方で、国家権力を使って、”不確実性を最小限に抑える”ための台本付きの物語を、国内の新聞メディアに氾濫させた。政府・党の統制から離れた報道を制限し、危機に対する一般市民の理解に影響を与えた。

 報告は、習近平政権下で中国におけるメディア統制が著しく増加したことを示す強力な証拠を示している。台本通りのプロパガンダの出現は、中央集権的なイデオロギー統治へのより大きな移行を意味しており、中国共産党はすべてのメディアチャネルで「一つの声で話す」ことを目指している。

 中国共産党宣伝部が制作する台本コンテンツの量が増え、柔軟性に欠けていることは、独立したジャーナリズムの余地が縮小していることを示している。以前は比較的独立していると考えられていた商業新聞でさえ、今では主に国家のメッセージングのチャネルとして機能している。

中国共産党の宣伝部(通称:広報部)の本部。クレジット。(写真右:中国共産党の宣伝部(通称:広報部)の本部)

 報告は、中国共産党が、プロパガンダの定義を非イデオロギー的な内容にまで広げることで、メディアを活用して自党の視点を浸透させ、情報の拡散を制御し、反対意見を抑圧している、と強く指摘。災害、公衆衛生、犯罪に関する台本のある記事は、物語を作り上げ、異なる解釈を防ぐために使用されている、としている。

 中国政府・党が”デジタル・シルクロード”などのプロジェクトを通じてメディアモデルを国際的に推進する中で、国内プロパガンダの仕組みを政府・党が掌握するが一層重要になっている、と彼らは認識している。

 報告は、専制独裁主義な政府・党が、舞台裏でコンテンツを細心の注意を払って管理しながら、「多様なメディア環境の幻想」を作り出す方法にも焦点を当てている。彼らは、広範で順応性があり、より洗練されつつある一種の秘密プロパガンダを発展させてきた。中国共産党は、台本のあるコンテンツを党紙と商業紙の両方に融合させることで、表面的には多様に見えるが、その核心は高度に制御されたメディア環境を作り上げた。

 中国が海外で自己の”国民の統治モデル”を推進しようとする中で、中国の”メディア管理システム”がどのように機能しているかを把握することは、単なる学術的な課題ではなく、重要な地政学的必要性となっている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年7月20日

・当局の弾圧強化の中でカトリック”地下教会”の司祭、一般信徒は新教皇の対応を不安と期待で見ているー温州教区の例(Bitter Winter)

(2025.7.11 Bitter Winter  Zeng Liqin)

 バチカンとの司教任命に関する暫定合意のもとで、中国政府・共産党の統制下にあるカトリックの組織、中国天主愛国協会への参加を拒否する司祭、修道女、一般信徒への弾圧を続け、強化している。Conscientious objector Bishop Shao Zhumin. From X.

(写真右は、”良心的兵役拒否者”の邵周民司教=Xより)

 教皇レオ14世は、2018年の司教任命に関するバチカン・中国暫定合意の今後の扱いについて検討していると伝えられている。

 その一方で、北京当局は暫定合意に反対する”カトリック”良心的兵役拒否者”への取り締まりを強化している。彼らは教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”に属しており、2018年のバチカンとの暫定合意により、理論的には、党が統制する中国天主愛国協会に参加することで”消滅”するはずだった。

 中国南東部の浙江、特に温州教区では、地下教会に対する弾圧が憂慮すべき規模に達している。2025年春に始まった規制強化は聖職者と一般信徒を強制的に天主愛国協会に従属させることを目的とし、司祭、修道女、一般信徒の逮捕、礼拝所の閉鎖などが現地の当局の手で組織的に行われている。

 その直接的なきっかけは、2024年に地下教会の聖職者と一般信徒のグループが海外に巡礼に出かけたことだった。彼らの帰国後、当局は「不法移住」という根拠のない非難を開始し、彼らが「観光ビザを使って宗教活動を行った」と決めつけた。この告発は単なるでっち上げで、”良心的兵役拒否”の重要な提唱者である邵周民・司教に、天主愛国協会に従うよう強要するためのものだと思われる。

 ”地下教会”の現実は厳しい。邵・司教は悲惨な最後通牒に直面している。天主愛国協会に従えば、拘束された聖職者は解放されるが、抵抗すれば、正式な告発を受ける危険がある。St. Paul’s Catholic cathedral in Wenzhou. Credits.

(写真左は、温州の聖パウロ教会)

 2025年4月以来、宗教局や地元警察など6つの政府部門が画策した家宅捜索が温州の教会を恐怖に陥れている。多くの聖職者が強制退去させられ、聖堂は閉鎖され、信徒は、「愛する人に忠誠心を変えるよう説得しなければ職を失う」と脅されている。その結果は驚くべきものだ。これまでに”地下教会”の礼拝所の90%が閉鎖された。

 閉鎖を免れるために、やむなく天主愛国協会に属する司祭を受け入れている地域もあるが、かなりの数の地域が、そういった司祭からの聖体拝領を断固拒否している。信者たちはやる気を失い、混乱し、恐怖を感じている。邵・司教の度重なる逮捕に関するニュースをネットで共有するだけでも、取り調べを含む不穏な反響を招いている。

 このような混乱の中、中国の状況について教皇レオ14世がどのような対応をするのか、不安を持ち、あるいは期待する司祭もいる。

ある司祭はBitter Winterにこう語っている。 「沈黙は選択肢ではない。ローマと教会への揺るぎない忠誠と、教皇への忠誠よりも中国共産党への忠誠を優先する司教団への服従を拒否するために、私たちは苦しみに耐えているのです」。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年7月13日

・中国共産党が仏教、カトリックなど”公認”宗教団体に、外国人宗教者の活動を規制する新ルールの厳格実施を指示

第30回全国宗教団体合同会議。微博より。The 30th meeting of the National Religious Groups Joint Conference. From Weibo.

(2025.7.9 Bitter Winter   Lai Mingxia)

 中国の”公認”宗教団体代表による第30回全国宗教団体合同会議が6月30日、北京で開かれ、国内の宗教活動を統制する中国共産党・統一戦線工作部から、5月1日施行の「中華人民共和国における外国人の宗教活動管理条例実施規則」の厳格な順守が指示された。

 会議では、中国共産党中央委員会の統一戦線工作部副部長で国家宗教事務総局主任の陳瑞峰氏が基調講演をし、中国仏教協会の顔冉・主席、中国道教協会の李光復・主席、中国イスラム協会の楊発明・主席、中国愛国カトリック協会の李山・主席、三自愛国運動の徐暁紅・主席らが続いて講演。習近平・主席の” 法治思想”を宗教活動に応用 し、宗教界に実施規則を教育することの重要性が強調された。

 国家宗教事務総局は4月1日、中国における外国人の宗教活動を規制する包括的な規則「教令第23号」を発表した。これまでバラバラだった関連の規定を統一的な枠組みに統合したもので、5月1日に施行された。

 中国の宗教活動の管理方法は単純明快で、党の統一戦線工作部の監督下にあるカトリック、仏教など5つの公認宗教が行う活動のみが合法とされる。これらの宗教は、無許可で外国と交流することが禁じられ、国内団体が独自に活動することが求められている。外国人による宗教活動は、中国共産党の管理下にある宗教関係者が招聘した公式代表団 でない限り、一般的に疑いの目で見られ、抑制され、厳しく規制される。

 新規定は、中国国外にいる中国人キリスト教徒やその他のアジア諸国民による無秩序な入国、活動や、国内外の仏教・道教寺院間の交流に関連する問題に対処することを目的としている。外国人を招聘する際には、より詳細で厳格な要件が課される。招待は、認可された5つの宗教にのみ許可され、広範な書類と事前の承認によって裏付けされなければならない。外国人が中国の寺院で組織する宗教的な修養会や活動でさえ、関連する公認宗教の代表者による事前承認と監督が必要だ。

 海外からの宗教書や宗教資料の輸入は、現在も厳しく制限されている。中国にいる外国人説教師は、事前に説教内容を提出し、承認を得なければならない。この規制は、ヒンズー教やユダヤ教など、中国に小さなコミュニティを持つ5つの公認グループ以外の宗教形態も対象としている。これらの宗教の信者にとって、「中国に友好的であること」を公に示さない限り、中国で宗教活動を行うことは非常に困難だ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

2025年7月10日

・中国の新疆ウイグル地域の重要鉱物の採掘、精錬などで奴隷労働、欧米の多国籍企業数十社が関係(Bitter Winter)

(2025.6.18  Bitter Winter  Marco Respinti)

(写真右・新疆 非鉄金属産業グループにおけるベリリウム製錬 。報告書より )Beryllium smelting at Xinjiang Nonferrous Metals Industry Group. From the report. 

  国際人権団体Global Rights Complianceが11日、中国の新疆ウイグル 自治区(非漢族住民は東トルキスタンと呼ぶ)の重要鉱物セクターと欧米企業との重大なつながりを明らかにする詳細な報告書を発表した。

 これは、新疆ウイグル自治区の主要産業である鉱物セクターにおける欧米の一流企業と強制労働とのつながりを網羅した初めての調査報告。

 調査は18か月にわたり、エレクトロニクス、航空宇宙、エネルギー、防衛など、さまざまな世界の主要産業に不可欠な鉱物であるチタン、リチウム、ベリリウム、マグネシウムなどの必須鉱物のサプライチェーンについて、中国の政策文書、政府の出荷記録、学術出版物、調査報道などさまざまな情報源をもとになされた。

 中国の重要な鉱物産業に関するこの調査は、トマトピューレの製造など食品関係分野での強制労働の実態を明らかにした前回調査に続くもの。前回調査では、コカ・コーラ、コスタ・コーヒー、スターバックス、ウォルマートといった世界的な企業を含む、少なくとも68の多国籍企業が、強制労働のもとで製造された製品とサプライチェーンでつながっていることを明らかにしていた。

 中国は重要な鉱物について、採掘、加工、製造の各部門を支配し、世界的に重要な役割を果たしており、2024年には、44種類の重要鉱物のうち30種類の主要生産国として報告されている。そうした中で、新疆ウイグル自治区は、貿易取引を急増させており、2024年の輸出額は前年比21.8%増の599億8000万米ドル。

 今回の報告書によれば、西側諸国の経済はこの地域から調達される鉱物への依存度を高めており、特に米国と英国への輸出が顕著に増加している。そして、新疆ウイグル地域で操業している重要鉱物セクターの企業として77社確認されており、過去2年間で欧米などの企業15社がウイグル地域から直接調達している。中国がサプライチェーンを戦略的に把握しにくくしていることを考えると、関与している企業の数はもっと多いとみられる。

 報告書では、集団監視、抑留、投獄、強制労働を特徴とするウイグル市民への組織的な弾圧を指摘。ウイグル人が置かれている過酷な状況の詳述の中では、強制労働、強制移送や、コンプライアンス違反なども含まれている。また具体的に名が挙がっている企業の中には、リチウム加工会社の「新疆非鉄」があるが、同社は、強制労働慣行への関与が記録されているため、米国政府のウイグル人強制労働防止法リストに加えられている。

 報告書は、欧米政府や企業に対して、重要鉱物に対する支配力を強める中国と、ウイグル人に対する深刻な人権侵害に対処するため組織的に対応すること求め、サプライチェーンにおける強制労働の実態を開示し、それに対処する立法措置を要求。また欧米企業に対し、サプライチェーンを注意深く追跡し、強制労働との関連を明確にしたうえで、適切に対処すること、欧米各国政府に対して、新疆ウイグル地域で現在進行中の人権侵害に対し、早急かつ断固とした行動を取るよう求めるとともに、中国の重要鉱物への依存を減らすよう提唱している。

 「カトリック・あい」⇒報告書の全文はGRC-critical-minerals.pdf (globalrightscompliance.org) から読めます。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年6月19日

・中国 共産党・統一戦線工作部が「中国伝統文化を学び、体験する宗教指導者のためのイベント」開催、カトリック大司教など参加(Bitter Winter)

(2025.5.28 Bitter Winter   Lai Mingxia)

Chen Ruifeng, Deputy Minister of the Central United Front Work Department and Director of the State Administration of Religious Affairs, presided over the training in Hebei. From Weibo.(写真右・中央 統一戦線工作部副部長 兼 国家宗教事務管理局局長の陳瑞鳳氏=微博より)

 中国で宗教活動を統括する共産党・統一戦線工作部が主催の「中国伝統文化を学び、体験する宗教指導者のためのイベント」が5月11日から17日にかけ、河北省で開かれ、中国全国からカトリック、プロテスタント、仏教、イスラム教など”公認”宗教団体の代表100人が出席した。

  イベントの冒頭、党統一戦線工作部の副部長で国家宗教局長の陳瑞鳳氏が演説、続いて、中国仏教協会会長の顔冉氏、中国道教協会会長の李光復氏、中国イスラム協会会長の楊発明氏、中国天主愛国協会会長のジョセフ・リー・シャン北京大司教、中国基督教会三自愛国運動委員会委員長の徐暁紅氏らが登壇した。 参加者たちは、宗教の「中国化」と「厳格な統治」を学び、テーマ別の文章作成、特別講義への出席、現場での指導への参加、グループ討論などが行われた。

 「中国化」とは、中国共産党のイデオロギーに、宗教的信念と実践を”適応”させることにある。「厳格な統治」とは、統一戦線工作部が、五大公認宗教の指導者たちを信用せず、現地の宗教団体の活動に直接介入することを意味する隠語だ。

An image of the training event in Hebei. From Weibo.

 そして、「中国の伝統文化」とは、中国共産党の公式マルクス主義のフ

ィルターにかけた伝統であり、内戦や毛沢東時代の「赤い文化」、習近平国家主席の教えを含む。議論されたテーマを見ると、参加者が「中国の優れた伝統的な中国文化」に関わることで、「中国共産党の理論、指針、政策を真摯に学び、実践する 」努力が含まれていることが明白。

 ある参加者はBitterWinterの取材に対して、「この研修で何か新しいことを期待してはいけない。彼らは宗教を中国化し、党に従順に従うべきだということをずっと繰り返している」と述べた。

(写真左・河北省での”訓練イベント”の様子=微博より。)

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年5月29日

・中国の1200万人のカトリック信者は教皇レオ14世の対応を注視(La Croix)

(2025.5.14 La Croix   Dorian Malovic)

 

 

*「新教皇のことはよく知らない…」

 

 今、中国の1200万人のカトリック信者は、新教皇レオ14世が北京との関係をどのように扱うかを注視している。

 「新しい教皇、レオ14世の選出に感激し、喜んでいます」-中国の微信(WeChat)アカウントで教皇選出のライブ中継を見た中国のある司祭は、「しかし、正直言って、私は彼のことをよく知らないんです。1990年代にオハイオ州で神学を学んだ時、彼の名前を聞いたことはあるはずなんですが…」と語った。

 そして、「自分にとって新教皇が米国人かどうかは関心がない。読んだり聞いたりしたところでは、彼は謙虚で、オープンで、深い精神性を持っているようです。それは普遍的な教会にとっても、中国のカトリック教徒にとっても良いことだと思います」と語ったが、80年近く国交を断絶している北京との今後の関係について、早々に結論を出さないように新教皇に希望した。

*中国外務省公式発表は「建設的な対話」希望だが…

 

 例によって、中国政府が何らかの公式発表をするまでに約1日を要した。「新教皇の指導の下、バチカンが中国と建設的な対話を続け、相互の関心事である国際問題について綿密な意思疎通を行うことを望む」と、外交部の林建報道官は5月9日に述べた。これは中国外務省の標準的で慎重な声明だが、外務省はバチカン問題を扱っていない。(「カトリック・あい」注・中国国内の宗教活動は共産党統一戦線工作部が統括しており、バチカンとの関係も実権はそこにある)。バチカン問題に関する”機密ファイル”は、習近平・国家主席が直接、監督している。

 中国全土のいくつかの教区で暗号化されたメッセージ・アプリを介して連絡を取ったところ、あるカトリック信者は、個人的な経歴や教区の経験によって期待は異なるものの、新教皇レオ14世についてほとんど知らなかったことを認めた。北京に住む女性のカトリック信徒は、新教皇決定について 「とてもうれしいし、満足している」というだけで、詳しい言及を避けた。

 中国共産党の圧力とバチカンの姿勢の両方をうまく操ることに長けた ”進歩的 ”な教区で30年間奉仕してきた、リ神父(仮名)にとって、重要なのはレオ14世の開放性だ。「教皇がオープンマインドであり続ける限り、ローマと北京の関係は改善されると信じている」。

*中国共産党の圧力に妥協しないよう望む声も

 

 また、新教皇に、より確固とした姿勢を示すよう期待する声もある。上海の著名なカトリック家系の信徒で、5世代にわたって信仰を持ち続ける知識人のシー・ウー(仮名)は、新教皇に「ヨハネ・パウロ2世のように、十字架と神への揺るぎない忠誠を守ってもらいたい」と熱く語った。

 現在70代のシー・ウーは、「政治的弾圧を恐れず、自分の考えを自由に話すことができる」と感じており、「教皇が北京からの圧力に屈したり、共産党に対して譲歩や妥協をしないことを望んでいる」と述べ、司教任命に関するバチカンと中国当局の暫定合意については、「さまざまな教会筋によると、教皇は中国における司教指名の最終的な権限を保持している」との確信を強調した。

 この暫定合意は、党に服従せず、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教に関わるいくつかのケースなどの解決に役立っているようにみえるが、中国の1200万人のカトリック信者の間では依然として不安が続いている。「日常生活では多少の柔軟性が認められていても、私たちは常に、共産党と当局の統制と監視下に置かれて続けている」と、中国北部の教区の修道女で海外留学経験もあるシスター・マリー(仮名)は語った。

*対中政策のキーパーソンの人事を新教皇はどうする?

 

 中国共産党の管理・統制下にある中国天主愛国協会と司教協議会は、教皇レオ14世に対して非常に慎重な祝賀メッセージを発表した。だが、少なくないカトリック信者たちは、新教皇が引き続き自分たちの不安定な状況を真剣に受け止め、政治的に微妙な環境の中で信仰深く生きる方法について明確な指針を示してくれることを望んでいる。

 チャン(仮名)によれば、自分たち中国のカトリック信者の課題は「キリストとバチカンに忠実でありながら、共産党の要求に屈することなく、善良な中国市民であり続けること」だという。それは、中国のカトリック信者が何十年にもわたり続けてきた”バランス感覚”の所作である。

 教皇レオ14世のもとで、バチカンと中国の関係がどのように進んでていくかを判断するのは、まだ時期尚早だ。チャンは、「レオ14世は中国の専門家ではない。レオ14世はバチカンの司教省長官だったが、実際に中国での司教任命を担当したのは国務長官のパロリン枢機卿だった。つまり、バチカンの対中国政策のキーパーソンだったのだ」と指摘する。

 パロリン枢機卿が国務長官に留任するか否かが、バチカンと中国の関係の次のステップを決めるかもしれない。2023年に故教皇フランシスコによって枢機卿に任命されたイエズス会士のステファン・チョウ枢機卿が、ローマと北京の仲介役として今後重要な役割を果たす可能性がある、と多くの香港の関係者は考えている。「対中政策について、レオ14世がどのような方向に進みたいのか、これからの動きを見なければならない。新教皇は教会法の専門家だが、教会法は、いかなる国家主権も司教任命に干渉すべきではない、と明確に規定しているということもある」とチャンは述べた。

 もしレオ14世が、中国における司教任命などについて教会法を厳格に適用するつもりなら、中国との緊張関係は、すぐそこまで来ているのかもしれない。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

(注:LA CROIX internationalは、1883年に創刊された世界的に権威のある独立系のカトリック日刊紙LA CROIXのオンライン版。急激に変化する世界と教会の動きを適切な報道と解説で追い続けていることに定評があります。「カトリック・あい」は翻訳・転載の許可を得て、逐次、掲載していきます。原文はhttps://international.la-croix.comでご覧になれます。
LA CROIX international is the premier online Catholic daily providing unique quality content about topics that matter in the world such as politics, society, religion, culture, education and ethics. for post-Vatican II Catholics and those who are passionate about how the living Christian tradition engages, shapes and makes sense of the burning issues of the day in our rapidly changing world. Inspired by the reforming vision of the Second Vatican Council, LCI offers news, commentary and analysis on the Church in the World and the world of the Church. LA CROIX is Europe’s pre-eminent Catholic daily providing quality journalism on world events, politics, science, culture, technology, economy and much more. La CROIX which first appeared as a daily newspaper in 1883 is a highly respected and world leading, independent Catholic daily.

2025年5月15日

・教皇空位期間中に、中国共産党・政府がバチカンの同意えず司教二人を任命(Bitter Winter)

 教皇の空位期間中、カトリック教会では新しい司教を指名することはできない。しかし、中国共産党・政府が、上海と新郷の二つの教区で二人の新司教を”任命”した。

Appointed by the CCP as the new Auxiliary Bishop of Shanghai: Father Wu Jianlin. From Weibo.

 故教皇フランシスコの遺産で最も問題なのは、バチカンと中国との関係だ。2018年に教皇フランシスコの下で、バチカンは中国と、中国国内での司教任命について暫定合意し、以来、期限が来るたびに更新してきた。その詳細はいまだに双方とも明らかにしていないが、ポイントは、司教は、双方の同意のもとに任命される、ということだ。

 だが、任命の実権を握る中国共産党統一戦線工作部は、これまで、上海教区などで一方的に新司教を任命し、バチカンはそれを一定期間を置いて追認する、というルール違反を繰り返してきた。

 そして、4月28日、中国共産党の管理下にある中国天主愛国協会(CCPA)は、上海教区の司祭たちを集め、司教総代理の呉建林神父(写真左=微博より)を新たな補佐司教に選出した。さらに翌29日、新郷教区の司祭たちが、李建林神父(写真右)を司教に選出した、という。いずれの”選挙”でも、候補者はただ一人だった。

 バチカンと中国の司教任命に関する暫定合意では、双方は同意のもとに中国国内で新たな司教を任命できる。だが、今回の新司教選出は、4月21日の教皇フランシスコの死去に伴い、5月8日の新教皇選出まで、教皇座が空席となった期間に行われた。

 カトリック教会では、司教を任命できるのは教皇だけであり、教皇座が空位の期間中は当然、新しい司教が任命されることはない。今回の選出、任命は、教皇の同意を得ることができない期間に行われ、暫定合意に違反した行為とえる。

Father Li Jianlin, appointed by the CCP as Bishop of Xinxiang. From Weibo.

 また、新郷教区には、中国共産党の管理に入ることを拒否する”地下教会”の、教皇から任命を受けた67歳のジョセフ張偉鋳(チャン・ウェイチュウ)司教がすでにいる。にもかかわらず、新たに司教を任命したことになる。

 今回、事実上、中国共産党が一方的に任命した二人は、いずれも中国共産党に忠実な人物として知られている。呉神父は2018年、中国の最高政治諮問機関である中国人民政治協商会議第13期全国委員会の委員に選出されたている。

 

 中国側は、今回のようなやり方を繰り返すことで、しかも教皇空位期間にそれを行うことで、中国共産党主導の司教任命を既成事実化することを狙っている、と思われる。そうした中国共産党・政府の”ルール違反”に、新教皇レオ14世はどのように対応するのだろうか?

 故教皇フランシスコに倣い、中国との良好な関係を維持するために不本意ながら二人の新司教を追認するのか、あるいは、この機会に暫定合意の見直しを求めるのか。新教皇の決意を試す”踏み絵”になりそうだ。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2025年5月10日

・中国における外国人の宗教活動に5月1日より新たな制限₋国家宗教事務局が新包括規定(Bitter Winter)

(写真右・北京の春宮(チュン・グン)にある国家宗教事務局の建物)

 4月1日、国家宗教事務局は、中国における外国人の宗教活動に関する新たな包括的規定を定めた第23号令を公布した

Prince Chun’s Mansion in Beijing, hosting offices of the State Administration for Religious Affairs. Credits.

 第23号令に盛り込まれた内容のほとんどは、すでに施行されている規定を、さまざまな規則に分散して記載したものだ。中国の宗教管理に関する一般的な原則は、5つの公認宗教が中国共産党統一戦線工作部の管理下で管理する宗教活動のみを合法とする、というもの。

 政府が管理する宗教は、定義上「自治」であり、外国の団体と定期的な関係を持つべきではない。中国における外国人の宗教活動は、中国共産党が管理する宗教官僚、統一戦線工作部、または党が公式代表団を招待し、広報や宣伝を目的としている場合を除き、敵対的とされ、一般的に奨励されず、厳しく規制されている。

 おそらく、中国国外やその他のアジア諸国からのキリスト教徒の訪問、あるいは政府官僚が関与しない中国国内と国外の仏教寺院や道教寺院間の交流が原因で、この新しい規制は、既存のすべての基準をまとめ、その施行を容易にすることを目的としている。

 新しい規定といっても、それほど目新しいものではないが、もし何かあるとすれば、外国人の宗教活動への招聘依頼(5つの公認宗教からの依頼のみ受理)には、多くの書類を添付し、当局の承認を事前に十分に得なければならないという、より詳細で厳格な規定が盛り込まれていることだ。

 また、中国寺院で外国人によって時折行われる宗教的な活動や黙想会は、観光収入の源となっているものの、事前に承認を得て、関連する公認宗教の代表者による監督下に置かれねばならない。

 海外からの書籍や宗教関連の物品の持ち込みは厳しく制限されている。外国人が中国で説教を行う場合、たとえ規定に従って正式に招待されたとしても、事前に「主な内容」を中国当局に提出し、承認を得なければならない。

 この規定では、5つの公認宗教の枠外にある宗教形態についても言及。明白に外国の宗教家は、宗教間対話のイベントを除いては、通常、公認宗教の官僚に招待されることはない。ヒンドゥー教やユダヤ教などの世界宗教は、5つの公認宗教ではなく、中国での存在感は小さい。また、5つの公認宗教以外の多くの新宗教運動も存在するが、その信者が中国で宗教活動を行うためには、中国に対して友好的であることを公に表明している場合を除いて、この規制により中国への入国が極めて困難になっている。認められる場合も、多くの書類手続きが必要だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

2025年4月9日

・「中国共産党の基本原則に従い、社会主義の中核的価値観を擁護せよ」北京で全国宗教団体連合会議

(2025.3.28 Bitter Winter 

| 中国で政府・共産党管理下の宗教団体による重要な会議が開かれ、習近平・政権の最新文書を説教や学習会で強調することが呼びかけられた。

 中国の全国人民代表大会(全人代)と中国人民政治協商会議(政協)の合同会議が3月4日から11日まで北京で開催された。不安定な国際情勢を背景に、習近平・主席は、両会で中国の経済と軍事力の強化に重点を置いた。発表された法案のなかには、民族の団結強化、分離主義との闘い、および全地域における標準中国語の使用を定めるものもあった。

Bishop Shen Bin. Screenshot.

 会議終了から2日後の13日、北京で全国宗教団体連合会議が開かれ、カトリックの沈斌・上海司教(写真右)が議長を務めた。

 沈司教は2023年4月、バチカンに通知することなく、(中国政府・共産党によって)上海司教に任命された。これは、2018年になされ、今も更新されているバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意に明らかに違反する者だったが、バチカンは、その3か月後の同年7月、いわゆる「正規外の任命」を認めた。

 沈司教は昨年10月のバチカンでの世界代表司教会議(シノドス)第18回総会にも招かれ、「中国のカトリック教徒は完全な信教の自由を享受している」とする演説をした。彼は中国カトリック司教会議の議長も務めているが、この組織は中国共産党の公認だが、バチカンは認めていない。

 全国宗教団体連合会会議では、国内の宗教を管理・統括する中国共産党の統一戦線工作部の副部長で国家宗教事務局の局長でもある陳瑞峰(写真左下)を始め、その管理下にある宗教団体の指導者たち、演覚(中国仏教協会)、李光富(中国道教協会)、楊馳明(中国イスラム協会)、李山(中国愛国カトリック協会:北京大司教)、徐暁紅(三自愛国教会)なども演説した。

Chen Ruifeng, Deputy Minister of the United Front Work Department and Director of the National Administration of Religious Affairs. From Weibo.

 中国共産党は、五つの公認宗教団体の布教・学習活動を調整するために、全国宗教団体合同会議を開いている。「厳格な統治」と呼ばれる政策の下、統一戦線工作部による統制がますます強まっており、会議は、参加宗教団体に対して、「両会(全国人民代表大会と全国人民政治協商会議)のテキストと精神」と習主席の演説をもとに、布教や学習を行うよう命じた。

 しかし、同会議が強調したかったのは、「すべての聖職者および宗教団体が、党の中央委員会の決定と取り決めに沿って、思想と言動を一致させること」だった—説教や研究グループは、「宗教活動に関する党の基本原則に従い、社会主義の中核的価値観を擁護し、中国文化を統合し、国内の宗教の中国化を促進し、宗教事務の厳格な管理を強化すべき」とし、政府・共産党が管理する宗教団体は、中国共産党の”教義”を説くべきであり、その中には「両会のテキストと精神」も含まれると告げられ、体制の代弁者としての役割を果たすよう求められた。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

2025年3月29日

・司教の任命を中国共産党の発表から半年後にバチカンが発表-”暫定合意”の奇妙な運用(Bitter Winter)

(2025.2.5 Bitter Winter  He Yuyan)

 中国共産党は、教皇フランシスコが司教を任命する3か月前に、その司教を「選出した」と発表した。そして、司教の叙階式では、「教皇が任命したこと」には言及されなかった。

Bishop Ji Weizhong. From Weibo. 2018年のバチカンと中国の司教任命に関する暫定合意(2024年にさらに4年間更新)によると、中国共産党とバチカンは、中国国内での司教の任命について合意する必要があることは明示されているが、合意の詳細は7年近く経った今も、秘匿されている。

 これまでの司教任命をめぐるいくつかのケースの任命の手順を見ると、合意の細目とは一致していない可能性が高いようである。

 つまり、①司教の「選出」は中国共産党が行い、そのニュースを公表する。②その後の数か月の間、バチカンからの”反応”がない。これは、バチカンが誰が「選出」されるのか事前に知らされていなかったことを強く示唆している。⓷共産党が公表してから数か月後、教皇がその司教を承認する。④司教叙階式が、教皇の権限とはまるで無関係であるかのように、教皇による「任命」には、まったく言及されることなく、執り行われ、中国共産党の管理下にある中国愛国天主協会の「司教協議会」から承認の手紙が読み上げられる―だ。

 そのもっとも最近の例は、季維中(Ji Weizhong)司教(写真左=Weiboより)に関するものだ。中国共産党は、昨年7月19日に李司教が山西省の呂梁教区の司教に選出された、と発表した。興味深いことに、その日付の段階で「呂梁教区」は存在していなかった。その地域を管轄していたのは汾陽教区であり、呂梁教区は、カトリック教会の教区を国の行政区分に合わせる、という中国共産党の方針の一環として、後に”新設”されたのだ。つまり、昨年7月19日の段階で、呂梁教区長である李司教なるものはいなかったことになる。The consecration of Bishop Ji Weizhong on January 20. From Weibo.

 以前の上海教区の司教任命の時と同じように、バチカンと中国共産党の間で水面下の交渉があったとみられるが、ともかく、今回の件については、共産党の発表から半年後の今年1月20日、バチカンが、「2024年10月28日」に、教皇が汾陽教区の廃止と呂梁教区の新設、季偉中神父の呂梁教区長の司教として任命した、と発表した。

 司教任命の発表時期が中国共産党とバチカンで半年ずれたのに加え、もう一つの興味深い疑問は、昨年10月28日に教皇が中国共産党の司教区改廃と司教任命を「批准」したのであれば、バチカンの新聞発表が3か月も遅れて出されたのか、ということだ。

 その答えは、季司教の叙階を「合法化」することが急務であったからであり、まさに1月20日にそれは行われた(写真右=Weiboより)。 例によって、叙階式では教皇の承認や委任は言及されず、中国司教協議会の書簡が読み上げられたが、あたかもバチカンが承認していないこの団体が、教皇ではなく司教の正当性の源であるかのようにであった。

 司教任命に関するバチカンと中国の暫定合意は、依然として、かなり”奇妙”な形で機能しているのだ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2025年2月6日

・「習主席の文化思想は深遠で…大きな意義がある」-中国共産党、各宗教の聖職者に「”紅色”文化教育」を実施(Bitter Winter)

10月下旬の 7日間、聖職者たちは河南省を回り、中国共産党の英雄に敬意を表し、「習近平の文化に対する思想は深遠で、論理的に厳格で、大きな意義がある 」ことを学んだ。(写真右下は、河南省教化ツアー中の聖職者=微博より)An image of the clergy during the Henan indoctrination tour. From Weibo.

 カトリック、仏教、イスラム教など中国の5つの公認宗教は、聖職者を「愛国教育」、つまり2024年1月1日に施行された法律で導入された教化の国家プログラムに参加させるという指示を非常に真剣に受け止めている。宗教がこれをどのように実施すべきかについての特別なガイドラインが1月4日に発表された。

 聖職者の強制的な教化に好都合なのは、内戦や共産党の歴史の”赤い神社”への巡礼を企画することらしい。それらは、伝統的な宗教巡礼の時期に組織され、効果的にそれに取って代わる。また、聖職者たちは観光の機会を好み、宴会や旅行と交互に行われれば、退屈なプロパガンダの講義にも耐えやすくなると考えられている。The clergy during one of the lectures. From Weibo.

 このプログラムの一環として、10月21日から27日まで、河南省で全省・地域の聖職者を対象とした「紅色文化ツアー」が開催された。統一戦線工作部が主催したこのイベントには、全国から140人の宗教関係者が参加した。(左は、講演中の聖職者たち=微博より)。

 聖職者たちは、第20期中国共産党中央委員会第3回全体会議で承認された「改革のさらなる深化と中国の特色ある現代化の推進に関する中国共産党中央委員会決議」についての講義を受けた。同決議は「社会主義文化大国の建設」を強調しており、これは中国における宗教の中国化を完成させるためにも不可欠であると指摘している。

 7日間の教化ツアーでは、講義、現場での指導、グループ討論が行われた。主催者側は、「習近平の文化思想を理解すること」と、南北戦争中に戦略的に位置した紅軍の基地を指す「大辺山の精神」についての講演を企画した。

Specialized guides taught the clergy the “red” history of Henan.

 専門のガイドが聖職者たちに河南省の「赤い」歴史を教えた(写真右)。

 ここは、紅旗運河、焦油記念館などとともに、聖職者たちが訪れる「紅」の巡礼地のひとつであった。紅旗運河は河南省の灌漑整備を目的としたものだが、聖職者たちが知らされていなかったのは、困難な状況の中でこれを建設した人々の「ヒロイズム」が自然発生的なものではなかったということだ。

 文化大革命の最中に、多くの場合強制連行された労働者たちによって完成し、多くの死者が出た。死者81人という公式発表は、おそらく過小評価だろう。焦玉茹記念館は、毛沢東時代の共産主義者の英雄の一人を称えている。焦は蘭高の党主席で、1964年に42歳で癌のため亡くなった。彼は農業における並外れた成功で賞賛されているが、それはおそらく想像上のものだろう。

 ソーシャルメディアや公式プレス発表で伝えられているように、聖職者に叩き込まれたメッセージは、「習近平の文化に関する思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている」というものだった。 習近平の文化思想は深遠で、論理的に厳密で、大きな意義があると誰もが信じている。

 

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。
2024年11月9日

・中国の司教たちがシノドス総会に参加の一方、英国貴族院の有力カトリック議員が中国における教会の迫害に注目

As Synod features Chinese members, British Lord draws attention to religious persecution

(2024.10.22 Crux  Managing Editor  Charles Collins)

 英国貴族院の有力カトリック議員、デイビッド・アルトン卿がこのほど、「中国で迫害されている10人のカトリック司教」と題する声明を発表、「中国共産党の統制に従う中国天主愛国協会に反対する中国本土の司教10人を標的に虐待している」と非難した。

 バチカンは、2日から始まった世界代表司教会議(シノドス)総会第2会期に中国本土から司教2人が参加させ、さらに総会開催中に、中国国内での司教任命に関する暫定合意の三度目の期間延長を発表しているが、中国国内でカトリック教徒や他の宗教信者が迫害されていることには事実上、目をつぶっている。

 アルトン卿によると、迫害を受けているのは、ビンセンシオ・グオ・シジン司教、アウグスチヌス・クイ・タイ司教、ユリアヌス・ジア・ジーグオ司教、タデウス・マー・ダキン司教、ペトロ・シャオ・ジュミン司教、メルキオール・シー・ホンジェン司教、ヤコブ・スー・ジミン司教、ヨゼフ・シン・ウェンジ司教、ヨゼフ・ゼン・ゼキウン司教、ヨゼフ・チャン・ウェイジュ司教の10人。

 彼らのうち7人は正当な手続きなしに拘留され、うち何人かは数年または数十年にわたって継続的に刑務所に入れられ、別の司教たちは2018年のバチカンと中国の司祭任命に関する暫定合意以来、最大6回も繰り返し拘留されている。

 卿は、彼らを「バチカンが『忘れてほしい』と思っている10人の都合の悪い司教」と呼び、「なぜ彼らはそのような措置をうけているのか。それは、彼らに何を信じ、考え、何を言うべきかを指示する中国共産党の”権利”を受け入れないからだ」と語り、米国の保守系有力シンクタンク、ハドソン研究所の信仰の自由センターのニーナ・シェア所長の記事を引用して、中国共産党が10人の司教を「正当な手続きなしに無期限に拘留、失踪、治安警察による無期限の捜査、教区からの追放、脅迫、監視、尋問、いわゆる再教育など司教の職務に対するその他の妨害」にさらしていると批判した。

 

 シェア氏は記事で、2015年に中国共産党による宗教の中国化政策が本格化して以来、「中国のカトリック教会は、毛沢東時代以来最大の弾圧を受けている」とし、「中国とバチカンの暫定合意は、『地下教会』と呼ばれることの多い、中国天主愛国協会への”良心的兵役拒否者”への配慮をせず、宗教的迫害にも対処していない。バチカンは、内容が秘匿されているこの暫定合意を『司教任命の権力分担の取り決めにのみ焦点を当てている』としているが、中国政府・共産党はこれを利用して国内の司教たちに中国天主愛国協会への加入を迫っている」と指摘。

 「中国政府・共産党は暫定合意に明らかに違反して、一方的にいくつかの司教任命を発表。だが教皇フランシスコは、中国のカトリック教会の”統一”を図るために、事後にこれらの任命を承認した」と述べ、「だが、10人の司教に対する中国政府・共産党による迫害は、カトリック教会の統一に対する本当の脅威だ」とシェア氏は強調している。

 アルトン卿はまた、10月17日付け米ウォールストリートジャーナル紙に掲載された、シノドスにおける中国代表に関するジョージ・ワイゲル氏(ヨハネ・パウロ2世教皇の伝記作家)の記事のコピーをフォロワーに送ったが、この記事でワイゲル氏は、宗教共同体を「中国化」させ、「習近平思想」に従わせようとする「しばしば残忍な取り組み」がある、と指摘。「バチカンと中国との交流は、完全な失敗だった」と批判している。

 ワイゲル氏の記事は、今回のシノドス総会に参加している福建省下浦(福寧)教区長のビンセント詹思露(ヤン・シル)司教について、「中国政府は2000年に彼を司教に任命した。教皇の承認なしに司教の叙階を受け入れたため破門された。その後、2018年になってバチカンと和解したが、その1年後には『宗教の”中国化”を断固として実行する』ことと『社会主義社会に順応する道を歩み続ける』ことを公に誓っている」と非難。

 さらに、中国本土からのもう一人の総会参加者の司教は、中国天主愛国協会の副会長である、と指摘。このようなことは、「中国政府・共産党の支配を受け入れている教会と、聖職者や信徒が投獄されたり殉教したりしてもローマに忠誠を誓い続けている、苦境に立たされた地下教会の間の溝をさらに深めるものだ」と警告している。

 そして、教皇が、このような暫定合意の再延長に同意したのは、バチカンの外交官らが「暫定合意を結び、延長し、2人の司教のような人物をシノドス総会に迎え入れることは、現在、台湾と外交関係のあるバチカンが、(中国と)との完全な外交関係を結ぶ一歩だ」と説得したためだ」とし、「この”外交幻想”の追求は、中国で迫害されているすべてのカトリック信者に声を上げないようにすることに通じる…教皇は『対話に満足している』と述べており、その結果は『良かった』としているが、実際には、それは恥ずべきことだ」とワイゲル氏は述べている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年10月23日

・バチカン、中国と司教任命に関する暫定合意をさらに4年延長

教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ)教皇フランシスコと中国の司教たち (写真アーカイブ) 
(2024.10.22  VATICAN NEWS)

    バチカンが、中国国内での司教任命に関する同国との暫定合意を、さらに4年、延長することで同国と合意した。バチカン広報局が22日発表した。発表文は以下の通り。

 「教皇庁と中華人民共和国は、司教任命をめぐる暫定合意の効果的な適用に向けた共通認識に照らし、適切な協議と検討の結果、本日付けで、同合意の有効期間をさらに4年延長することで合意した。教皇庁側は、中国におけるカトリック教会と同国の全国民の利益を考慮し、両国関係の発展のために、中国側との敬意ある建設的対話を継続する意向である」

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 中国国内での司教任命については2018年9月22日に暫定合意された。その後、2020年10月22日、一回目の2年延長、2022年10月22日に二回目の2年延長がなされ、その起源となる10月22日に3回目の延長が、これまでの二倍、4年延長することになった。

 これまでの繰り返しの暫定合意の延長は、それまで教皇の認可を得ずに、中国政府・共産党の判断で一方的に司教叙階が行われてきた数十年間の状態に終止符を打った。2018年の暫定合意から6年間に、十数人の司教の任命と叙階が行われ、中国側がこれまで司教として認めていなかった何人かの聖職者が公式に認められるようになった。

 また、新しい協力関係の目に見えるしるしとして、バチカンで開かれている世界代表司教会議(シノドス)総会に中国本土から司教が参加している。昨年ポルトガルで開かれた「世界青年の日(ワールドユースデー)リスボン大会」のような、欧米で行われるカトリック教会のイベントや、教皇フランシスコのここ数年のアジア諸国訪問の際の諸行事にも、中国の信者たちの参加が見られるようになっている。

 

*ただし、中国のカトリック教会でも、政府・共産党への忠誠を拒み、教皇のみに忠誠を誓う”地下教会”の司教、司祭、信徒に対する、政府・共産党の対応は逆に厳しさを増しており、カトリック教会に限らず、中国国内のあらゆる宗教団体を習近平主席の思想に従わせる〝中国化”は年々厳しさを増している(「カトリック・あい」)

 

(編集「カトリック・あい」)

2024年10月22日

・シノドス総会に参加の中国本土の司教たち、”協力”の重要性、”文化”の尊重を強調

Bishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope FrancisBishop Joseph Yang Yongqiang of Hangzhou shakes hands with Pope Francis (Credit: Vatican Media.)

 

2024年10月20日