・周・香港教区長、バチカンと中国の緊張高まる中での北京訪問終える(Crux)

Bishop Stephen Chow Sau-yan of Hong Kong visits Beijing (Vatican News)Hong Kong bishop closes Beijing visit amid rising Sino-Vatican tensions

(2023.4.22 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ –バチカンと中国の緊張が高まる中で、香港の司教として香港の中国返還後初めて北京を訪れていた周守仁・司教は21日、現地の信徒たちに教会と国家の両方を愛するよう促すすとともに、今回の招待者である北京教区長の李山・大司教を香港に招待することを表明して5日間の訪問を終えた。

(Photo Credit: TVB via AP.)

 

*初日に北京最大、最古の聖堂で北京大司教と晩の祈り

 周司教の今回の訪問には、夏志誠・補佐司教と司教総代理の蔡惠民・神父が同行した。事前の声明で「橋渡しをするという香港教区の使命」を強調し、交流を促進する」のが目的と説明していた周司教は、AsiaNewsによると、初日17日に、北京市西城区の同市最大、最古の「救世主教会」で、李大司教と共に、司祭、信徒数十人が参加する中で、晩の祈りを捧げた。

*マテオ・リッチの模範を通して福音宣教の熱意に再び火がともるように

 

 祭壇には、中国で本格的な宣教を始めた、周司教の大先輩のイエズス会士、マテオ・リッチ師の像が置かれ、Fides通信によると、典礼の中で、同師の列福を願って香港教区が作った祈りを捧げ、「リッチ師の傑出した模範を通して、私たちの福音宣教の熱意に再び火がともされ、日々の暮らしの中で愛をもって真理を実践し、他者を、特に中国の兄弟姉妹が、あなたを知り、愛することを学ぶよう導くことができますように」と祈った。周司教たちは北京市内にあるリッチの墓も訪れた。

*カテドラルでのミサで、香港と中国本土の教会の協力強化を訴え

 

  香港のニュース サイト RTHK によると、20日に北京のカテドラル、救世主大聖堂で捧げられたミサの中で、周司教は、神の意志に従って香港の教会と中国本土の教会が協力を強めるよう訴え、「聖霊は一致させる神であり、分断する神ではない」と指摘。「香港と北京の二つの教区はさらなる協力と交流を持ち、互いをもっと知ること、神の信仰の証しをすることを、私たちは希望している」と述べ、教皇のシノドス(共働性)の精神を持って、互いに耳を傾け合う必要があることを強調した。

 ミサ後に大聖堂の外で地元メディアのインタビューを受けた周司教は、「今回の北京訪問で、李大司教と、若者たちの召命を進める方法についての有益な意見交換ができた」と述べるとともに、司祭や信徒が「国と教会の両方を愛することの重要性」を強調し、「私たちは皆、国と教会を愛することを学ばねばなりません。 誰もが自分の国がうまくいくことを望んでいます。 誰も自分の国が悪くなることを望んでいません。 愛国的であることは義務です。 香港あるいは中国本土に住む人は、自分の国を愛すべきです」と述べた。

 

*「訪問で”バチカンと中国の緊張”が溶けた」との見方は否定、北京大司教の香港訪問を招請

 

 その一方で、一部にある「今回の訪問で(バチカンと中国政府・共産党の)緊張が溶けた」とする見方については明確に否定し、「1994年に当時の香港教区長、胡振中・枢機卿が中国本土の三つの都市を訪問している。今回の私の訪問も、そうした過去の伝統を引き継いだものだ」とも語った。そして、緊張状態にある中国・バチカン関係における香港の役割についての質問には、「香港教区は草の根レベルでの対話を促進する架け橋として役立つことができる」と答え、李山・大司教を香港に招待したことを明らかにした。

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 バチカンと中国政府は2018年秋に、中国での司教任命に関する暫定合意を結び、これまでに2度延長されている。中国に共産政権が樹立された後、1950年代から続く、政権・共産党の管理指導に従う教会と、教皇のみに忠誠を誓う、いわゆる”地下教会”との分裂状態を、双方合意のもとに終わらせようというのが、バチカン側の基本的な狙いだったが、暫定合意で中国政府・共産党に教会全体が取り込まれることを懸念し、強く批判していた元香港教区長の陳日君・枢機卿が、昨年5月、「香港の民主化運動を助けた」という理由で香港当局に逮捕、起訴され、罰金刑を課せられた。

 また中国当局が、昨年11月と今月初めの二回にわたって、暫定合意に違反して、一方的に新設した江西教区への司教任命と空席だった上海司教の任命を、バチカンの同意どころが通知もせずに強行。バチカンとの緊張を高めている。

 これまで二回更新された暫定合意の期限までにあと1年余りある。このような状況が続く限り、バチカンが再々更新を考えるかどうか、現在は不明だが、周司教の北京訪問と李大司教に対する香港訪問招請は、少なくとも現時点では、対話への扉を開いたままにしておこうとするバチカンの意図を見ることができるようだ。

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

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*周司教は、ミサの説教で、”シノドスの道”の歩みを進める教皇メッセージを伝えた(Vatican News)

 なお、Vatican Newsによると、周司教は18日、北京のカトリック神学校を訪問、無原罪懐胎教会(南堂)でミサを捧げた後、何人かの中国政府の代表者と面会した。最終日の21日には、聖ヨセフ教会(東堂)でもミサを捧げた。20日の救世主大聖堂での李大司教と共同司式のミサでは、説教で、教皇フランシスコの言葉を取り上げ、「教会で”シノドスの道”の歩みを進め、教会のすべてのメンバーが互いに耳を傾け合い、旅を導く聖霊に耳を傾けるのを学ぶように、教皇は勧めておられます」と語った。中国の政府・共産党の管理・指導の下にある”地上教会”で、教皇の言葉が紹介されるのは異例だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

2023年4月23日

・中国版チャットGPTに当局が規制-反国家、反共産党の内容は禁止(BW) 

Baidu’s press conference unveiling ERNIE Bot, its version of ChatGPT. From Twitter.

 人工知能チャットボット「チャットGPT」が世界的に流行し始め、規制の是非をめぐって大きな議論を呼んでいるが、中国当局が11日、Alibabaや Baiduが始めようとしている中国版チャットGPTに関する規制案を公開した。中国共産党が承認しないテキストを利用者が取得するのを防止する狙いだ。規制案を公開し、国民の意見を聞く体裁をとっているが、案に対する批判は受け入れられず、ほぼ案通り実施される。

 チャットGPTでは、人工知能が中国政府・共産党に批判的なテキストを作り出す”危険”があると判断した中国政府・共産党の対応は素早く手を打ち、その指示を受けた国家サイバースペース管理局が「生成型人工知能 (AI) サービス管理措置」をまとめた。

 それによると、中国のユーザーに対して、「人工知能プラットフォームは、社会主義の核心的価値を反映すべきであり、国家権力の転覆、社会主義制度の打倒、国家分裂などを扇動し、国民の一致を損なうものであってはならない」という条件を満たすコンテンツの配信のみを認める」とし、具体的に禁止されるのは、「テロ、過激主義、民族的憎悪、民族差別、暴力、わいせつ、ポルノ、虚偽の情報を助長し、経済秩序と社会秩序を混乱させる内容」で、中国共産党 に対する批判や反対意見は禁止される。

 Alibaba は 「Tongyi Qianwen」 と呼ばれる中国版チャットGPT の提供を始めた。提供企業は「人間」が経営しているが、人工知能は「人間」ではない。だが、中国では、コンテンツの作成に「人間」が関与しない場合も、「生成されたコンテンツに対する作成者の責任」の原則が適用される。

 このことは、提供企業はアルゴリズム(解が定まっている「計算可能」問題に対して、その解を正しく求める手続き)を規制当局と共有し、常にチェックを受け、使用するソースとその使用方法を開示する必要があることを意味する。また、 サービスの利用者の名前を当局に開示するよう求められる場合があり、「社会主義の核心的価値観や中国政府・共産党の利益に沿わない質問をしたり、テキスト メッセージを要求したりする顧客の利用を禁止する必要がある。

In turn, Alibaba lunched its ChatGPT-style chatbot called Tongyi Qianwen. From Twitter.

 このような当局による中国版チャット規制は、インターネットと関連する技術を支配しようとする、習近平・主席が主導する中国共産党の闘争の新たな章のようだ。 中国政府・共産党にとっての問題は、特定のテクノロジーが本質的に制御不能であり、犯罪の可能性があるという警告にもかかわらず何百万人もの中国の若者が VPN (インターネット回線を利用して作る 仮想の専用ネットワーク)を使って当局の監視を逃れようとしていることでだ。中国共産党の”イデオロギー警察”の対応が、最終的には機能しない可能性もある。

 少なくともそうなるまでの間、Alibabaや Baiduの中国版チャットGPT を利用して学生たちが欠こうとする学期末のレポートは、中国共産党と習近平を賛美するものになるだろう。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

 

2023年4月21日

・中国当局の暫定合意無視が続く中で、カトリック香港司教が”返還”後初の北京訪問

カトリック教会香港教区の周守仁司教=2021年12月、香港(AFP時事)

(2023.4.21 カトリック・あい)

 世界の主要報道機関が20日までに伝えたところによると、カトリック香港教区の教区長、周守仁・司教が17日から5日間の予定で、北京を訪れている。中国政府・共産党公認の中国天主教愛国会に属する北京教区長の李山・大司教の招請を受けたもので、香港から北京に司教が訪問するのは1997年に香港が中国に返還されてから初めて。

 周司教は、訪問中に李大司教と会見するほか、カトリック教会の国立神学校を訪れ、玄武門教会でミサを捧げる。また、司教の大先輩のイエズス会士で中国で布教に当たったマッテオ・リッチ 神父(1552–1610) の墓を訪れる予定。

 周司教が事前にロイター通信に寄せた書簡では、中国ほんとの教会と、特にアジアを中心とする海外の教会との間で「交流が促進される」ことへの希望が宣べられ、バチカンからメッセージを託されたのか、というロイター側の質問には「教区間の交流。中国は国家事案についてバチカンと連絡体制を確立している」とだけ答えた。また、現地でのメディアの問いかけには「香港教区には、北京と香港の接触を促し、理解を深める橋渡し役の使命がある」と述べている。

 中国本土には中国政府・共産党公認の中国天主教愛国会に属するカトリック教会と”地下教会”に合わせて約1200万人の信徒がいるといわれる。バチカンと中国には国交がなく、長年、司教の任命権をめぐって対立してきた。

 2018年秋に任命に関して暫定合意がなされ、これに基づいて何人かの司教が双方の合意で誕生していたが、今回の周司教の北京訪問の直前、今月4日、過去9年間空席となっていた上海教区の教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の申斌(シェンビン)司教が就任した、とバチカンの同意がないまま、一方的に発表。バチカンのブルーニ広報局長は同日の会見で、「バチカンは数日前に中国当局の決定について知らされた」と述べ、今回の司教人事がバチカンの同意なしに中国側の一方的通告によってなされたことを公式に認めた。

 中国は昨年11月にも、江西省でバチカンが認めていない新設教区の補佐司教を一方的に任命、バチカン側が合意に違反するとして「遺憾の意」を表明している。

 周司教の地元の香港では、以前から中国政府・共産党の”地下教会”弾圧など信教の自由を踏みにじる行為に批判を続けてきた元教区長の陳日君・枢機卿を逮捕、拘禁するなど、中国当局による強硬姿勢が目立っている。

 バチカンは今のところ、こうした中国側の姿勢に”静観”を続けているが、中国側の周司教の北京訪問招請には、「バチカンとの一層の関係悪化を避けたい中国側の思惑がある」との見方も関係者の間にある。

2023年4月21日

・ 中国で、すべての宗教活動施設に「習近平主席の社会主義思想の徹底」など義務付ける新規則(BW)

Baiyun Taoist Temple, Guangzhou. Credits. 中国共産党・政府が近く、新たな「宗教活動施設の設置、承認、および登録に関する規則」を実施する。2005年実施の現行規則よりも一段と厳しい締め付けを行い、国内のすべての宗教の礼拝施設に中国共産党の宣伝を義務付ける内容となっている。

 中国では、 すべての宗教団体の活動が、行政や警察当局による日々の監視は言うまでもなく、数多くの法律、規則、条例によって、すでに”窒息”状態にある。

  それでも、習近平・主席は、宗教活動によって中国共産党が脅かされるリスクが依然、存在する、とし、これを受けた党、政府が継続的に新しい対策を講じている。新たな「宗教活動施設の設置、承認、および登録に関する規則」の実施もその一環だ。 新規則の原案はすでに公示されており、利害関係者は4月24日までに原案に対する意見を申し立てることができる、とされているが、この”疑似民主的な手続き”を経ても、過去の例を見る限り、修正はほとんどない。

 原案を見ると、現行規則で定めている「宗教施設の当局への登録義務付け」などに変更がないが、特徴は、すべての宗教の礼拝施設が 中国共産党の宣伝広報の”積極的な代理店”でなければならない、という点が強調されていること。具体的には、「 礼拝施設は、中国共産党の指導部を支持し、社会主義制度を支持し、習近平の社会主義思想を徹底的に実施する場合にのみ、運営許可を取得して、施設を維持することができる」「憲法、法律、政令、規則、および関連する宗教事務管理規定を遵守し、社会主義の核心的価値観を実践し、宗教の中国化の方向性を順守する」と定めている。

 そして、施設の閉鎖は従来よりも迅速かつ容易に行われることとされ、「祖国への愛と、中国共産党の指導部と社会主義制度への支持」を積極的に説くことが義務付けられ、 司祭、牧師、イマーム、僧侶も、「祖国への愛と、中国共産党の指導部と社会主義制度への支持」に基づいて選ばれる必要がある、としている。

 また、新疆、チベット、内モンゴル自治区を念頭に、礼拝施設では「国語(漢語)と文字の使用を促進し、国家の団結と進歩を促進し、宗教的な市民を指導して国家意識を高めるべきである」とし、「市民の意識、法の支配の意識、民族的慣習と宗教的信念の正しい区別、行政、司法、教育、社会生活を妨害するために宗教を使用すること」の禁止を明言している。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

*Bitter Winter(https://jp.bitterwinter.org )は、中国における信教の自由 と人権 について報道するオンライン・メディアとして2018年5月に創刊。イタリアのトリノを拠点とする新興宗教研究センター(CESNUR)が、毎日4か国語でニュースを発信中。世界各国の研究者、ジャーナリスト、人権活動家が連携し、中国における、あらゆる宗教に対する迫害に関するニュース、公的文書、証言を公表し、弱者の声を伝えている。中国全土の数百人の記者ネットワークにより生の声を届け, 中国の現状や、宗教の状況を毎日報告しており、多くの場合、他では目にしないような写真や動画も送信している。中国で迫害を受けている宗教的マイノリティや宗教団体から直接報告を受けることもある。編集長のマッシモ・イントロヴィーニャ(Massimo Introvigne)は教皇庁立グレゴリアン大学で学んだ宗教研究で著名な学者。ー「カトリック・あい」はBitterWinterの承認を受けて記事を転載します。

 

2023年4月8日

・共産党公認の中国カトリック教会が上海司教をバチカンの同意なしに任命

Chinese Catholics

(2023.4.5  カトリック・あい)

 中国のカトリック教会上海教区が4日、過去9年間空席となっていた教区長に、国政助言機関の人民政治協商会議(政協)常務委員の申斌(シェンビン)司教が就任したと発表した。

 2018年にバチカンと中国政府が暫定合意し、現在も有効な司教の任命に関する取り決めでは、双方の合意が必要とされている。

 バチカンのマッテオ・ブルーニ広報局長は同日の会見で、中国側によって行われたこの人事を確認する一方、「バチカンは数日前に中国当局の決定について知らされた」と述べ、今回の司教人事がバチカンの同意なしに、中国側の一方的通告によってなされたことを認めた。

 中国は昨年11月にも江西省でバチカンが認めていない親切教区の補佐司教を一方的に任命、バチカン側が合意に違反するとして「遺憾の意」を表明していた。

 今回の中国側の行為に対して、ブルーニ局長は「バチカンとしてこのことをどう評価するかについて、現時点で何も言うことはない」としているが、度重なる暫定合意違反が、カトリック教会にとって最重要の年間行事である聖週間の最中になされたことに、教皇フランシスコとバチカンがどう対応するか注目される。

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 中国共産党公認の中国天主愛国会の公式メディア「中国天主教」が4日付けで伝えたところによると、同日、上海で申斌司教の教区長就任式が行われた。

 式は、上海市天主教教務委員会主任の吳振神父が主宰。中国カトリック司教団の楊宇神事務局長が申斌司教の上海教区長のポストへの異動に関する「中国主教任命書」を朗読。 中国天主教愛国会の会長で北京教区長の李山司教が、さらに、上海市天主教愛国協会の会長、盧欽明と吳建林神父が上海天主教会を代表してあいさつ。

 申斌司教は、「上海カトリック教会の素晴らしい伝統を継承し続け、国を愛し、独立と自己管理の原則を遵守し、中国におけるカトリックの中国化の方向性を遵守し、上海でのカトリック伝道の健全な継承をよりよく促進する」と抱負を語った。

 

2023年4月5日

・「宗教を信じない」との誓約が幼稚園入園の条件―中国・温州市で

The Wenzhou atheistic pledge. 「優れた共産党教育」は幼稚園から始まり、必然的に無神論が含まれる- 3 月初め、浙江省温州市龍湾区のキリスト教徒の両親が、3 歳から 6 歳までの子供たちを幼稚園に通わせる条件として当局から署名を求められた誓約書を、人権団体に通報した。誓約書は実物と思われ、同様のものがすでに中国全土で配布されているという。

 誓約書には、「宗教を信じない幼稚園児の家族の約束」というタイトルが付けられ、保護者の署名と、入園を希望する子供の名前を明記することが求められている。

 具体的には保護者は「宗教を信じず、いかなる宗教活動にも参加せず、子供たちに宗教を教えない」こと、「文明化された家族」を導くことを約束。また、自分と子供が「他の邪教の法輪功」に近づかないようにし、「封建的な迷信」を避け、幼稚園児に科学、社会主義、中国共産党への信仰を教えることを約束する、としている。

 中国における「無神論のキャンペーン」は沈静化するどころか、地方レベルに浸透する形で進んでいる。 習近平・主席は「科学的無神論はマルクス主義の本質的な特徴である」と繰り返し主張しており、大衆文化はこの考えを教え込むために動員されている。 中国の子供たちへの宗教教育の完全な禁止は、これらのキャンペーンの一環であり、幼稚園はそれを実施することが期待されている機関の一つになっている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

2023年3月25日

・「司教任命に関する中国との暫定合意は期待通りにいっていない」とバチカン外務局長、EWTNとの会見で

Archbishop Paul Richard Gallagher

(2023.3.16 カトリック・あい)

 バチカン国務省のポール・ギャラガー外務局長(大司教)がこのほど、カトリックの国際テレビ・ラジオネットワーク、EWTNのインタビューに応じ、中国との間で2018年秋に結んだ同国内での司教任命に関する暫定合意について、当初期待されていたような結果が得られていないことを認め、”改善”について中国外務省と交渉していることを明らかにした。

 ギャラガー外務局長は、この暫定合意がされたのは好ましい時期ではなかった、とし、中国共産党が、カトリック教会共同体、いわゆる”地下教会”に圧力をかけるために利用したことを認めつつ、「(良い結果が得られるように)前進するしかない」と述べた。

 また、この暫定合意は、「その内容のほとんどは、ベネディクト16世教皇の時代に、バチカンと中国当局の間で了解されていた」とし、バチカンの外交官たちは、バチカンと中国当局が長年にわたってお互いに「より深い理解とより深い敬意」を持って関係を育てて来たと信じていると語る一方、「明らかに(中国側の対応)すべてが、中国の国内政治の文脈で行われている …したがって、私たちが出来ることは限られている」と付け加えた。

 ギャラガー外務局長は、EWTN とのインタビューで、「現在、他の司教の任命について交渉が進めらている」ことを認め、バチカンとして、今後も対話を続ける意思があると述べた。また、中国との関係を「数か月、あるいは数年単位ではなく、もっと長い時間の中で考えており、今後、より正常で、実りあるものに願っている。私たちは、善良なカトリック教徒は中国の善良な市民になり得る、と信じるところから出発している」と語った。

2023年3月16日

*中国カトリック教会「一会一団」が指導者合同会議を開催-「習近平思想に導かれ、中国共産党大会の精神を完全に実施」を確認

(2023.2.18 中国天主教ニュース)

 2月16日の朝、第2022回中国カトリック「一会一団」の第2023回指導者合同会議が北京で開催。全国宗教団体指導者の春節フォーラムでの中国共産党の中央政治局常務委員会メンバー、王滬寧氏と、中国共産党中央委員会の政治局メンバーで同党中央委員会の統一戦線工作部の責任者である石泰峰・部長の演説を学び、「中国カトリックの『一会一団』の作業概要」を共有、本年の重点を審議し、採択した。

 合同会議は、中国カトリック司教会議会長の沈斌司教と中国天主教愛国会会長の李山司教が主宰し、中国共産党中央委員会統一戦線工作部の関連指導者が出席。「王滬寧が国家宗教団体担当の責任者の立場で春節フォーラムに出席し、石泰峰・部長が『一会一団』を訪問して調査したことは、党中央委員会が中国カトリックの『一会一団』活動を重視していることを十分に示した。 常任委員の王滬寧氏と石泰峰・部長の演説は先見の明があり、意味合いが豊富で、方向性を指摘し、将来の仕事の青写真を描いた」とし、「われわれは、演説の精神の本質と豊かな意味合いを誠実に研究し、理解し、演説の精神に従って自己構築を強化し、愛国心と宗教愛の旗を高く掲げ、橋の役割を十分に発揮し、わが国のカトリックの中国化のプロセスを促進し続けるべきである。 われわれの政治的地位を絶えず向上させ、思想的理解を深め、識字能力を増強し、倹約を提唱し、浪費を慎むために、われわれは演説の精神を真摯に実践し、真新しい態度ですべての仕事において新しい状況を切り開くよう努めなければならない」ことを確認した。

 会議は2022年の「一会一団」の業績を完全に確認し、「一会一団」は「新時代の中国の特色ある社会主義に関する習近平思想」に導かれ、「中国共産党の全国代表大会の精神を完全に実施」し、「習近平総書記の宗教活動に関する重要な発言を深く研究し、理解」し、「カトリック活動の中心に密接に焦点を当て、全体的な状況に奉仕し、愛国心と宗教の旗を高く掲げ、教会の独立と自己管理の原則を遵守し、中国におけるカトリックの中国化の方向性を堅持し、宗教を包括的に厳格に管理」し、「崇費と贅沢の控えに関する共同イニシアチブ」の関連活動を積極的に実施するなど、すべての作業をしっかりと推進することで一致した。

 会議では、2023年は中国共産党全国代表大会の精神を完全に実施する最初の年であり、中国カトリック教会の全国代表大会の召集後の最初の年でもある。

 会議は、「一会一団」がデモンストレーション、ガイダンス、リーダーシップの役割を果たし、「自己教育、自己管理、自己規律を強化」し、「カトリック分野の悪い雰囲気を断固として修正」し、効果的に抑制し、未解決の問題を修正および改革し、「規則と規制を改善し、組織システムと管理モードを改善し、「内側の刃の勇気と石から水を滴下する粘り強さ」で宗教の包括的かつ厳格な管理を推進」し続け、中国のカトリックの健全な継承を保護するべきであると強調しました。 「一会一団」の仕事は、常に正しい政治的方向性を堅持し、わが国のカトリックの中国化のプロセスを深く促進し、グループ自体の建設と才能の育成を強化し、懸命に、堅実な仕事をする精神で、中国の愛国心と宗教の原因に新しい章を書く必要がある、ことも確認した。

*「カトリック・あい」注:中国天主教愛国会( Chinese Patriotic Catholic Association=中国愛国天主協会)は本部を北京市に置く、中国政府・共産党公認の団体で、中国天主教主教団(中国カトリック司教会議)と合わせて、中国カトリックの“一会一団”と呼称される。バチカンは未公認。このもとに、雑誌とニュースサイト『中国天主教』、聖書、宗教書なども編集、出版、発信されている。

2023年3月1日

・ニューデリーで2000人のキリスト教徒が、インド全土での迫害に抗議のデモ(Crux)

 

(2023.2.22  Crux  Contributor  Nirmala Carvalho)

   ムンバイ発 – インドの首都ニューデリーで19日、2000 人を超えるキリスト教徒が集まり、全国のキリスト教徒に向けられた暴力と差別に抗議する異例のデモ、集会を行った。

 主催者は、1947年に国家の独立が宣言されて以来、キリスト教徒が首都で、このような抗議集会を開いたのは5回とわずかだが、今回の行動は「キリスト教徒への迫害と差別の強まりに強いられたものだ」と説明している。

 キリスト教徒に対する迫害を監視する超宗派監視団体、キリスト教連合フォーラム(UCF) によると、2022 年の1年間に 21 州で 598 件のキリスト教徒に対する暴力事件が発生。8年前の 2014年の4倍に急増している。その内容は、脅迫、暴徒による暴力、性的なものを含む残忍な暴行、礼拝所の破壊、教会の閉鎖、信徒の社会的排斥、死者の埋葬の拒否、改宗に関する虚偽の報告、反改宗法に基ずく強制的な改宗など、多岐にわたっている。

 また、キリスト教徒が迫害に最も遭っているのはウッタル プラデーシュ州 (人口 2 億人の国内で最も人口の多い州) で 186 件、これに次いでチャッティースガル州が 132 件、ジャールカンド州が 51 件、カルナータカ州が 37 件、タミル ナードゥ州が33件となっている。

 抗議集会の主催者によると、19 日の抗議行動は、右派のヒンズー民族主義政党 BJP を代表するナレンドラ モディ首相率いる中央政府と、国の最高裁判所および市民社会に注意を向けさせるのを目的としていた。会場となったのは、18 世紀に建てられた有名な天体観測施設ジャンタル・ マンタル前の広場。

 バプテスト教会評議会、ユナイテッド ペンテコステ派教会 – 北東インド、マニプール福音ルーテル教会など、約 79 のキリスト教団体が抗議に参加し、抗議者たちは、キリスト教徒を標的にした憎悪と暴力に対する追悼を象徴する黒い腕章をつけて参加した。

 UCF の報告書はまた、昨年、反改宗法に違反し、キリスト教への改宗を強要したとして起訴されたキリスト教徒は74件でうち56件がウッタル プラデーシュ州、また逮捕者が最も多かったのも同州で332 人。続いてカルナータカ州で 40 人、マディヤ プラデーシュ州で 21 人、ウッタラーカンド州で 17 人に上っている。

 集会で、UCFののマイケル・ウィリアム会長は、「今日、私たちは、チャッティースガル州、ジャールカンド州、マディヤ プラデーシュ州、ウッタル プラデーシュ州、カルナタカ州、その他多くの場所でキリスト教を信仰している同胞の苦悩を分かち合うことを希望し、ここジャンタル マンタルに平和に集まりました。 私たちには信教の自由という基本的人権の最も基本となる権利が奪われている。私たちは結束して立ち上がり、インド大統領に覚書を提出する予定です」と語った。

 また、ニュー・ライフ・チャーチのバスカー牧師は、「抗議行動はインド政府に信教の自由を約束させることを目的としています。インドの憲法によれば、私たちが信じていることを実行し、公言する自由が認められている。ところが、キリスト教徒の殺害が多発し、キリスト教への改宗を強要した疑いもかけられている。私たちは政府に保護を求めているのです」と述べた。

 ジャーナリストで人権活動家のジョン・ダヤル氏も「政府は私たちを裏切った。カルナータカ、チャッティースガル、ジャールカンド、ウッタル プラデーシュなど、いくつもの州でキリスト教徒の共同体を標的とした攻撃が行われている。このことを認めるよう政府に求めたい」と批判、最近の迫害の事例として、キリスト教徒の埋葬地使用の拒否、日曜日の祈祷会の最中に教会への攻撃、ヒンズー教への改宗強要と拒否した者の村からの追放などを挙げている。

 

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

2023年2月23日

中国天主教愛国協会と中国天主教司教会議について公式説明

(2023.1.17 中国天主教)

中国カトリック愛国協会について、

リリース時間: 2014-05-30 著者:

中国カトリック愛国協会は 1957 年 8 月 2 日に設立されました。 それは、全国のカトリック司祭と信者で構成される非営利の愛国的で宗教的な大衆グループです。

ご存知のように、新中国の建国当初、中国のカトリックはまだ植民地状態にあり、教会を管理する権利は外国の宣教師の手にありました。 教会を浄化し、福音を広めるために、中国のカトリックの愛国的司祭たちは、中国のカトリック反帝国愛国運動を下から上まで開始しました。

1950 年 11 月 30 日、四川省広源県の 500 人を超えるカトリック信者が、王良左神父が率いる「広源カトリックの自立と革新運動宣言」を共同で発行し、「新しい教会を設立する」という考えを提案しました。それは、自律的で、自立的で、自己増殖的です。」 この宣言は、国の多くの地域でカトリック教徒によって反響されました. 1950 年から 1956 年末にかけて、全国に 200 を超える地元の愛国団体が設立され、全国的な愛国団体である中国カトリック愛国協会を設立する条件が整いました。

1956 年 2 月、中国人民政治協商会議第 2 委員会の第 2 回会合に出席した司教、司祭、信者、および特別に招待された代表者数名は、国務院書記長の習仲勲が主宰するシンポジウムに参加した。 シンポジウムでは、誰もが1955年の反帝国愛国運動と反革命運動の後、カトリック社会の愛国者、特に高級聖職者がさまざまなイデオロギー的制約から解放され、愛国意識を高めたと信じていました。 国家愛国団体設立の条件が整い、その時が来ました。

1956 年 7 月 19 日から 25 日まで、中国カトリック愛国協会準備委員会の準備会議が北京で開催され、36 人のプロモーターが会議に出席した。 会議は満場一致で中国カトリック友好協会の発起人会議の提案を承認し、中国カトリック友好協会大会準備委員会の準備室を設立した。 準備委員会の準備会議の後、周恩来首相は、翌日、中南海の自光閣で開催された会議に出席した世界中の司教、司祭、信者を迎え、自信を持って教会を運営するよう奨励した。

周首相は、「教会が神学校をうまく運営し、能力と道徳的誠実さの両方を備えた司祭を育成することを願っています。財政的な問題があれば、政府はそれを解決するために最善を尽くします。」 周首相のスピーチは参加者を勇気づけました。

1957 年 2 月 12 日から 16 日まで、中国愛国カトリック愛国協会イニシエーター(拡大)会議が北京で開催されました。 瀋陽教区のPi Shushi大司教が招待されました。 会議は、中国カトリック愛国協会を設立することを決議した。

1957 年 7 月 15 日、北京の新橋ホテルで中国カトリック代表会議が開催され、全国 26 の省 (市、自治区) から 241 名の代表 (実際には 237 名) が参加しました。 その中には、11 人の司教、4 人の使徒的首相、58 人の代理司教、代理司教、84 人の司祭、1 人の修道士、9 人の修道女、74 人の平信徒がいます。 8月2日、閉会式が行われました。 すべての代表者は満場一致で「中国愛国カトリック協会の憲法」を可決しました。

憲章は、「協会は中国のカトリック司祭と信者で構成される愛国的で宗教的な大衆組織である」と規定しており、その目的は「全国の司祭と信者を団結させ、愛国心の精神を推進し、社会主義の建設に積極的に参加することです。祖国と様々な愛国運動のために、世界平和を守り、政府が信教の自由の政策を実施するのを支援する.同日に可決された「中国カトリック代表会議の決議」は、「祖国と教会の未来のために、中国のカトリック教会は古い中国の帝国主義を完全に変え、私たちの教会に植民地と半植民地の国家を与え、独立を実行し、中国の司祭と信者自身によって運営されなければなりません.祖国の利益と独立した尊厳を守るために、私たちはバチカンの聖座と純粋に宗教的な関係を維持します.法王に従います.」

中国カトリック愛国協会の副会長、事務局長、副事務局長、および常任委員会のメンバー。 瀋陽教区の毘淑子大主教が、中国愛国カトリック協会の初代会長に選出された。 会議終了の 2 日後、人民日報は「カトリック反帝国主義愛国運動の発展」と題する社説を掲載した。

社説は、「中国のカトリック教徒は、中国で独自のカトリック教会を運営するすべての権利を持っている」と指摘し、「この中国のカトリック代表会議は非常にうまく開催され、カトリック教徒の政治的意識をさらに向上させ、将来の愛への努力の方向性を決定した」と指摘した。国を愛し、教会を愛してください。」

1962年に第2回中国カトリック全国代表大会が開催された際に、名称を「中国カトリック愛国協会」に変更し、それ以来使用されています。

 

中国天主教主教团について

 发布时间:2014-05-30作者:

1980 年 5 月 23 日から 30 日にかけて、第 3 回中国カトリック全国大会が北京で盛大に開催されました。 これは非常に重要な会議であり、中国のカトリックが文化大革命後の包括的な回復と再建の段階に入ったことを示しています。 この会議は、第2回中国カトリック代表会議から18年離れたものであり、「ギャングオブフォー」の粉砕後、カトリックコミュニティの最初の壮大な会議です。

この会議で、中国カトリック司教会議と中国カトリック教務委員会が設立され、当時は「二会一派」と呼ばれていた。 この二つの教務組織の設立は、教務の発展を促進する上で非常に重要な役割を果たしてきました。 宗懐徳司教が愛国協会の会長に選出され、張家樹司教が司教会議の初代会長に選出された。

この会議では、聖職者の後継者を養成するために中国カトリック神学哲学アカデミーを設立することも決定され、「全国カトリック司祭と友人への手紙」と「カトリック司祭と友人への手紙」を発行しました。台湾”。 その後、教務の発展の必要性から、1992年に開催された第5回中国カトリック信者全国代表大会で、全国の組織構造が調整され、元の3つの組織(つまり、「2つの協会と1つの連隊」)が調整されました。

カトリック司教会議と中国カトリック愛国協会の 2 つの機関である学務委員会は、教務を専門とする司教会議の下の委員会に調整されました。 中国のカトリック教会はこれまでに全国代表大会を8回開催し、そのたびに愛国協会と主教会議の憲章を時代に合わせて修正する必要があった。

2010 年 12 月に北京で開催された第 8 回中国カトリック代表会議で、改訂された「中国カトリック愛国協会の憲法」によると、中国カトリック愛国協会の目的は次のとおりです。

共産党と社会主義体制の指導の下、国家の憲法、法律、規則、政策を遵守し、愛国心と教会愛の旗を高く掲げ、独立と自己の原則を堅持する。政治、経済、教会事務の管理、国家主権と教会事務の自治、社会主義の擁護 社会に適応するため、教育事務組織が教会の民主的運営の精神に基づいて司牧伝道に良い仕事をするのを助ける教会; 祖国の統一、国家の統一、社会の調和、宗教の調和を維持し、世界平和に貢献するために、全国の司祭と信者が経済的および社会的発展を促進する上で積極的な役割を果たすように導きます.

「中国カトリック司教会議」は、このグループの目的を次のように規定しています。

第二バチカン公会議の精神を尊重し、信仰の宝庫を維持し、聖霊によって与えられた恵みを用いて福音を広め、聖なる宗教を広め、政治的、経済的、政治的、政治的、政治的、政治的活動における独立と自己管理の原則を遵守する.社会主義社会に適応するために国家の主権と教会の自治を維持し、全国の司祭と信者を団結させて指導し、憲法、法律、規制、政策を遵守し、経済的および社会的促進に積極的な役割を果たします。

祖国の統一、国家の統一、社会の調和、宗教の調和、世界を守ること 国、社会、人類の幸福を増進するために平和に貢献する」信仰と福音宣教の原因である使命は、主イエス・キリストによる使徒の派遣と聖霊による使徒のエンダウメントに基づいている.力を与え、司牧的使命を果たし、ペテロの後継者との交わりを維持する信じられ、行動されるべきである教義と正典の面で総主教;協会の組織では、それは中国のカトリック代表会議に責任があります.」中国のカトリック司教会議は当初設立されました。

現在、中国には 97 のカトリック教区があり、約 60 人の司教または副司教がいます。 40 近くの教区にはまだ司教がいません。 したがって、中国のカトリック教会の司教を選出するという課題は依然として急務です。

2023年1月17日

・「第18回東京-北京フォーラム」全体会議・パネルディスカッションー「厳しい世界情勢、日中はどういう存在になるべきか」

(2022.12.7 言論NPOニュース)

 言論NPOと中国国際伝播集団が主催する「第18回東京-北京フォーラム」は12月7日(水)、日本と中国をオンラインで結び開幕。午前の開会式と基調講演に続いて、「世界の平和と国際協調の修復に向けた日中両国の責任~日中国交正常化50周年で考える」と題するパネルディスカッションが行われました。

 「ロシアのウクライナ侵略後の世界の平和秩序をどのように修復するのか」、さらには「北東アジアの台湾海峡での懸念が高まる中で紛争を避けるために宮本.jpgはどうすればいいのか」という国際社会が直面する難題について、東京と北京、上海の3カ所から両国の有識者8人が1時間半にわたって活発な議論を交わしました。

 冒頭、日本側司会を務める元駐中国大使の宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表)が「ロシアのウクライナ侵攻、台湾海峡問題、世界経済の競争と分断に陥る中、国際社会は極めて厳しい十字路に直面している。世界の未来にとって日中両国はどういう存在になるべきなのか」と問題提起しました。

cyo.jpg 中国側司会の趙啓正氏(元国務院新聞弁公室主任、中国人民政治協商会議第11 期全国委員会外事委員会主任)も宮本氏の主張に賛意を示した上で、12月7日に北京・人民大会堂で開催された江沢民元国家主席の追悼大会に言及。「江沢民氏は中日関係に大きな期待を寄せていた。国交正常化50年で数多くの関係者が両国の関係改善に努力した。『朝日新聞』論説主幹で北京で亡くなった若宮啓文氏が『日本海に荒波があって、どうやって同じ船に乗ることができるのか』と書かれたが、百年に一度の大変革の時代に真摯に向き合うべきだ」と語り、議論がスタートしました。

 

 

*「中日協力でチェンマイ・イニシアチブの実体化を推進すべき」

朱.jpg 中国元財政部副部長の朱光耀氏は、1980年代から現代に至るシビアな国際金融市場環境に触れた上で、東アジアにおける経済危機に対応することを謳った2000年5月のチェンマイ・イニシアチブ(CMI)の重要性に言及。「中日両国が協力してチェンマイ・イニシアチブの実体化を推進すべきだ」と訴えました。

 

 

*「中国指導者が『天の下の道理を尊び 民を慈しむ』方向に進むか注目」

五百旗.jpg歴史ある「アジア調査会」会長など要職を務める五百旗頭真氏(兵庫県立大学理事長)は国交正常化50周年、来年の友好条約締結45周年の節目を迎える一方で、両国の政治環境が改善されないことに懸念を表明。「中国は世界の運命」の方向性を握っていることから、為政者は「天の下の道理を尊び 民を慈しむ」方向に進むかどうか、国際社会が注視しているとの見方を示しました。

tei.jpg 前中国駐日本大使の程永華氏(中日友好協会常務副会長、中国人民政治協商会議第 12 期全国委員会外事委員会委員)は世界経済の「頓挫」や「新冷戦」「覇権主義」などが懸念される現状について、歴史上「百年に一度の変化が起きている」と分析。その上で「21世紀はアジアの時代」であり、戦略的互恵関係やRCEP(地域的な包括的経済連携)協定の重要性を改めて唱えました。

河野.jpg

 

 

*「消えた”戦略的互恵関係”、日中防衛交流の早期再開が必要」

 

国際安全保障の専門家である河野克俊氏(前自衛隊統合幕僚長)は「第一次安倍政権─福田康夫政権時代の『戦略的互恵関係』が最近全く使われなくなった」と指摘した上で、ウクライナ戦争において、ロシアの「核使用」に対して中国側が明確に反対を表明したことなどを評価。国際的に懸念が高まる台湾海峡問題に関しても「尖閣諸島国有化を経て日中間の防衛交流が2013年以降途絶えている」として、早期再開の重要性を求めました。

中国国際戦略研究基金会上席研究員の張沱生氏は、台湾海峡問題を巡って米国の関与が強まっていることを念頭に「冷戦がアジア地域にやってきそうだ」と不快感を表明。同時に日中関係が悪化した理由について①相互信頼の弱体化②グローバリゼーションの進展③パンデミック④歴史認識──などに起因する問題を挙げて、「新しい大国関係をつくらねばならない」と主張しました。

 

*「日中の共通項は経済に。両国共通の土俵づくりを」

 

宮本.jpg 司会の宮本氏が「日中の共通項は経済にある」との認識を示し、元日銀副総裁の山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長)の意見を求めました。

yamaguchi.jpg 山口氏は「今ほど政治と経済を切り離して語れることはそうそうない。各国間の協調によって不安定化を避けている」との見解を示しました。ウクライナ戦争、北朝鮮ミサイル、台湾海峡問題などアンチ・グローバリゼーションを進める不安定要因が山積する中で、日中両国ともに共通の対応を求められると指摘。同時に「中国が改革開放路線を堅持してくれるのかどうか、日本の経済界は心配している」と述べ、両国共通の土俵づくりの構築が重要との認識を明らかにしました。

一連の発言を受けて、改めて宮本氏が「世界や日中が大きな問題を抱えている中で、両国がどのような関係を目指すべきか」と問題を提起しました。

五百旗頭氏は「中国が『核不使用』を表明した意味合いは大きい」と歓迎した上で、最近のゼロコロナ政策にも変化が生じていることに言及。強硬路線から「やや柔らかな路線に移ってきている」として、今後の方向性を注視する考えを示しました。

朱光耀氏は先の発言に続いて、チェンマイ・イニシアチブを念頭に「日中は協力を強化しなければならない」と指摘。その上でマクロ経済、地域政策、サプライチェーンなど各種政策を整理するためにも「今回のフォーラムは有効だ」と語りました。この発言を受けて、山口氏が「世界経済はディスインフレ、デフレからインフレの時代に変わりつつある」と懸念を表明。マクロ経済分野において、日中両国がどのような考えを持っているのか示すことも、世界経済にとって重要になると強調しました。

 

*安全保障分野で日中に意見の相違も明確に

 

また、安全保障分野について程永華氏が「今、わざと相手を敵だとみなす動きがあるが、日中間には平和友好条約がある。さらに交流を深めて対話を進めていくべきだと」と語りかけました。

一方、河野氏は、日本国民の間には尖閣諸島を巡る中国の行動に対して「脅威がある」と指摘。仮に台湾有事が生じれば、「日本の安全保障上対応せざるを得なくなる」と釘を刺しました。

cyo.jpg これに対して中国側司会の趙啓正氏は「中国からすると、日本のロジックは受け入れられない」「米国の空母、偵察機が台湾海峡付近をパトロールしているが、日本の基地からやって来ている。日米同盟も我々に不安を与える」と反論しました。

張沱生氏が「どのような中日関係が望ましいのか」と問題提起し、互恵関係や「一つの中国」原則の遵守などが基本になると指摘。同時にさまざまなレベル・分野での対話の回復をはじめ、APECなど国際的な枠組みでの議論が求められると主張しました。

日中双方の意見が真っ向から対立しそうな気配になったところ、五百旗頭氏が「ウクライナ戦争を終結させるイニシアチブを、日中が共同で働きかけることは重要だ。成熟した大国の雅量を示してほしい」と訴えました。

最後に司会の宮本氏、趙啓正両氏が「対話を基礎としたプラットフォーム」設定の重要性を確認。「まずはこの『東京─北京フォーラム』を大切にしよう」と語りかけて、1時間半にわたるパネルディスカッションは終了しました。

 

 
2022年12月9日

・「第18回東京-北京フォーラム」特別セッション:日中共同世論調査「小異を乗り越えて大同につくことが、相互信頼の醸成に」

(2022.12.8 言論NPOニュース)

 「東京─北京フォーラム」第2日目(12月8日)の特別セッション「世論調査」では、「国交正常化50周年を日中の両国民はどう迎えたか」と題して、日中両国から2人ずつ計4人の有識者がパネリストとして参加し、熱心に議論を繰り広げました。18回目を数える今回、「東アジアの軍事紛争」における「台湾海峡」問題と、今年2月に勃発した「ロシアのウクライナ侵攻と世界の平和」が初めて設問に加えられ、両国民の評価の違いが関係者やメディアなどの注目を集めている中での開催です。

*ウクライナと台湾海峡問題を中国国民に初めて聞いた世論調査結果

017Z0530_.jpg 日本側司会を務めた言論NPO代表の工藤泰志が「初めてウクライナと台湾海峡問題が入ったことに注目したい。日中国交正常化50年のタイミングで、日中両国民が両国政府に地域の平和の取り組みを求めていることは明らかだが、あまり機能してこなかった。このタイミングで再構築するべきではないか」と呼びかけて、議論がスタートしました。

017Z9910_.jpg 東大大学院合文化研究科の川島真教授は「双方が平和を求めている」傾向が浮き彫りになったことに関して「大変嬉しい」と賛意を表明しました。その上で「台湾海峡問題」への危機感が前年に比べて大きく増加したことについて「中国側が危険度を感じている」と分析。

 具体的には、中国側世論の8割近くが「問題の原因は米国の行動にある」とする一方で、日本側世論の6割余りが「中国に原因がある」と見ている結果を注視する必要があるとの認識を明らかにしました。

 また、尖閣諸島(釣魚島)を巡る問題についても「中国側は連絡メカニズムをつくることを歓迎するが、日本側は懐疑的だ」と述べ、世論の違いを指摘。

 さらに日中両国の対メディア観についても、中国側の8割超が「メディアは日中関係の改善や両国民間の相互理解の促進に貢献している」と日本側と異なる回答をしていることについても、議論の必要性を指摘しました。

 

中国側司会者で、中国国際伝播集団の高岸明副総裁兼総編集長が議論を引き取り、「マスコミが報道するポイントは、台湾海峡や地域の問題など相違のはっきりしている部分にフォーカスを与える」とし、「このフォーラムで包括的に話し合って、そうではない部分にも焦点を当てたい」と述べ、一層の議論の進展を求めました。

中国社会科学院日本研究所の金莹研究員は、ロシアによるウクライナ侵攻など国際情勢の反応について「反応は近寄っているが、因果関係において認識が大きく異なっている。福田康夫元首相が述べたように、重要なのは『同して和せず』の現状から、どうシフトしてゆくかだ」と語り、日中両国の協力関係の構築が重要との認識を示しました。

017Z9938_.jpg 日本を代表するオピニオン誌『中央公論』の五十嵐文編集長はロシアのウクライナ侵攻に関する設問・回答があったことに「大変貴重だ」と語り、関係者の努力と苦労を労いました。その上で、中国世論の2割超が「国連憲章や国際法に反する行動であり、反対すべきだ」としていること関して「驚きだ。中国世論が全面的に侵攻を支持するものではなく、安心した」と歓迎の意向を表明しました。

*「米中対立に対して日本はどちらにも与しない」という見方が多数

 

零点有数デジタル科技集団の袁岳董事長は、中日間に「米国」というファクターが影を落としている点に着眼しました。「ペロシ米下院議長の訪台などが中日関係に大きく影響を及ぼしている。中国人はもっと日本人と仲良くなり、関係が緩和することを望んでいる。日本は単に米国に追従するのではなく、”台湾独立反対”を宣言するなど独自の考えを示してほしい」と、独自の主張を展開しました。 これに対して、司会の工藤氏は「米中の対立に関して日本はどちらにも与せずに、世界に寄与したいと理念的に思っている」と懸念を打ち消しました。

一方で工藤は「今年が国交正常化50周年であることを『知っている』」とした日本人が3割余り、中国人は4分の1にとどまる実態を「どう考えればいいのか」と語り、再び問題を提起しました。

*日中関係の改善には外交関係の強化が重要

 

金氏は2020年の世論調査結果と今回を比較検討して「『歴史の岐路』という言葉が浮かんだ。国交正常化50周年の節目において、バックグラウンドとなる東アジア、国際環境の現状が良くない。経済は”バラスト”化が指摘されている。さまざまな意見の相違があり、本当に危険だ」と危機感を表明。日本の大幅な円安状況や防衛費増強論議にも憂慮を示しながら「レスポンス型の外交政策から呼応型の外交を目指すべきではないか」と主張しました。

こうした中国側出席者の不安感に関して、五十嵐氏は「両国民ともに、日中関係は極めて政治に左右される状況にある」と指摘。相手国の印象が悪くなる要因として、日本側は「尖閣諸島周辺の侵犯」、共産党中心の「政治体制への違和感」などを挙げているが、中国側は「侵略した歴史」問題や「釣魚島周辺の国有化」に不満を抱えていることに関して、「民間・若者交流、経済も大事だが、一たび政治問題が起きればストップしてしまう」と指摘。外交関係の強化が何よりも重要だとの認識を示しました。

袁岳氏は、メディアが中国共産党の政治体制に与える「マイナスイメージ」に不満感を表明しました。従来のゼロコロナ政策に関しても「政府は『成功』と言う中、『緩和が足りない』と言う人を取り上げる。どちらが国民に有利に働くのか、政府はきちんと考えている」と語り、最近の「緩和」方針が「国民の許容度と連動している」との見解を明らかにしました。

*「不戦」を実現するために、具体的な施策と議論の実行をどう担保するか

 

川島氏は今回の日中間の調査結果について「ある種の時間軸のズレ」がうかがえるとの見方を示しました。その上で北東アジアにおいても脅威が増大していることについて「非常に危機が迫っている」として、両国政府が調査結果を重く受け止めるべきだとの認識を示唆しました。

この点に関して、五十嵐氏も紛争を回避し、持続的平和のために両国が取り組むべき目標に関して「台湾海峡問題を意識して、中国の半数近くが『不戦』を挙げたのは貴重だ」と歓迎。その一方で「唱えるだけでは実現しないのは明々白々だ」として、具体的な施策と議論の実行が重要であると述べました。

袁岳氏も「実は良い兆しもある」と応じ、海空の防衛交流メカニズムの早期再開の重要性を訴えました。

中国側司会の高岸明氏は「相手に対する印象や台湾に対する考えは異なるものの、ルールベースの民間自由貿易などは大切だ。小異を乗り越えて大同につくことが、相互信頼の醸成につながる」と述べ、1時間の議論を結びました。日本側司会の工藤氏も「18回目の議論となるが、内容は非常に良かった」と語り、次回に向けて期待感を表明しました。

2022年12月9日

・「第18回東京-北京フォーラム」政治・外交分科会ー「アジェンダ設定の異なる課題をどうすり合わせるかが重要」

(2022.12.7 言論NPOニュース)

 言論NPOと中国国際伝播集団が主催する「第18回東京-北京フォーラム」は12月7日(水)、日本と中国をオンラインで結ぶ開幕しました。

 世界の平和秩序の再建と国連憲章の今日的意味を協議した特別分科会「平和秩序分科会」に続いて、政治・外交分科会が開催されました。「混乱が深まる世界と日中関係の未来」をテーマに、日中双方から計12人(司会を含めて日本側8人、中国側4人)の政治家や元外交官、有識者が出席し、国交正常化50年を迎えた日中関係の課題を話し合いました。

 日本側司会は言論NPO代表の工藤泰志、中国側司会は中華日本学会会長の高洪氏(中国人民政治協商会議第13期全国委員会委員)がそれぞれ務めました。

 工藤は冒頭、第18回日中共同世論調査の結果を踏まえて、両国関係の現状について両国民の「半数近くが満足していない。いろいろな政治文書も機能していない」と指摘。その上で国交正常化50年を念頭に「過去を祝うだけでなく、岐路に立つ地域の平和と安定のアジェンダは今日的課題だ」と問題を提起しました。高洪氏も「中日両国の足下の課題だ」と応じ、議論がスタートしました。

 

 

*政治的価値観が異なっても、長期視点を持ち友好関係を構築することが最大の安全保障

小倉.jpg

50年前の国交正常化交渉において、外務省アジア局中国課首席事務官として日中航空協定策定に奔走した小倉和夫氏(元駐仏大使、元駐韓国大使、国際交流基金元理事長)は「対中感情のもたらすことから、中国は『強国』であると自ら宣伝することは止めた方がいい」と指摘した上で「50年前の方が、はるかに政治的価値観が異なった。長期的視点を持ち、友好関係を構築することが最大の安全保障になる」と訴えました。

s程永華.jpg 前駐日本大使の程永華氏(中日友好協会常務副会長、中国人民政治協商会議第12期全国委員会外事委員会委員)は午前中のパネルディスカッションに続いて登壇。「孔子は『五十にして天命を知る』と言ったが、中日関係のレベルはまだまだだ」と現状を分析。その上で日本の対中姿勢に関して「『台湾有事』という言い方は一線を越えている。日中間の四つの政治文書を遵守すべきであり、日本には冷静に対処してほしい」と牽制しました。

薗浦.jpg 安倍政権で外務政務官、外務副大臣、安全保障担当首相補佐官を歴任した衆議院議員の薗浦健太郎氏は、日中の外交姿勢の違いについて「中国は台湾と歴史問題、日本は尖閣諸島と軍拡を最大の問題だと思っている。意思疎通、すり合わせをすることで対話がスタートする」と分析。同時にサプライチェーン問題についても「複雑でデカップリングができるわけがない。国民感情が良くない中で、50年間の知見が問われている」と述べました。

s胡令遠.jpg 復旦大学日本研究センター主任の胡令遠氏は過去50年間における冷戦構造の終焉、グローバリゼーションの進展に続いて、現在を「百年未曾有の時代」と位置づけました。この「三つの重要な結節点」を踏まえて「常に政治的な知恵で大きな障害を乗り越えてきた」と述べ、11月17日に初めて対面で実現した中日首脳会談で確認した五つのコンセンサスの具体的な実施を求めました。

西田.jpg 公明党参議院会長の西田実仁氏(党選挙対策委員長)は日中共同世論調査の結果を踏まえて「両国ともに、平和を希求し、不戦を求める結果が出ている。いかにして平和の機運を求めていくかが大事だ。パワーを軽視する平和主義は、リアリズムに徹する相手国に付け入る隙を与えてしまうため、軍事バランスを保つための一定の抑止力は必要になる」と指摘。その上で「アジア版OSCEとも言うべき常設の安保協力機構で、常駐の『東アジア平和担当大使』が定期的に接触することが有益ではないか」と提言しました。

 

*国民理解の進展と相互信頼の情勢に努めるべき

 

s高洪.jpg ここまでの議論を受けて、中国側司会の高洪氏が「激動の世界情勢」において「いかにして国と国の基本的信義を守り、どうやって改善していくべきか」と問題を提起して、さらなる議論の深化を求めました。

川口.jpg 元外務大臣などを歴任した川口順子氏は世論調査結果を踏まえて「グッドニュースは、平和を希求する共通基盤があることだ」と指摘。一方で「バッドニュースはないが、チャレンジはある」として「互いに脅威と思っていること」を挙げました。続けて外交政策において「既成概念を破る発想」の重要性に加えて、国民を「根」にたとえながら「根が深く張れば、木は倒れない」と述べ、国民の理解の進展が一層重要になると訴えました。

s劉洪才.jpg 中国国際交流協会副会長の劉洪才氏(元中国共産党中央対外連絡部副部長、中国人民政治協商会議第13期全国委員会外事委員会副主任)は四つの政治文書に言及して「50年間の成果であり、今後の両国関係をリードするものである」との認識を示しました。同時に「イデオロギーが異なっても、阻害するものはない。この議論に政治家が参加しているけれども、我々は自民党、公明党、民主党とも協議した経験があり、ベスト・プラクティクスだ。民間友好も重要であり、相互信頼の醸成に努めるべきだ」と語りました。

玉木.jpg 国民民主党代表の玉木雄一郎氏は日中共同世論調査の結果を受けて、「緊張を高める日本の世論を改めることが外交の幅を広げることにつながる」と述べました。具体的には、尖閣諸島付近の中国艦船の領海・接続水域通過問題や、ウイグル自治区人権問題に関する説明が足りないことなどを挙げました。さらに「いかなる衝突を避けるため」にも、両国間のホットラインの構築や国境を越えた若者文化交流の重要性を唱えました。

この点について、中国側司会の高洪氏は「我々は覇権を唱えていない。情報の非対称が大きな原因であり、悪意のある宣伝はミスリーディングされる」と釘を刺しました。

 中国グローバル化シンクタンク(CCG)理事長の王輝耀氏は「我々は一衣帯水の隣人である。私は留学生の研究をしており、コロナ禍前は民間交流は1000万人を超えていたし、香港、マカオを含めて10万人超の留学生がいた」と振り返りました。その上で「より良いコロナ対策を講じて人的・文化交流の強化に努めるべきだ」と主張しました。

木寺.jpg 国交正常化40年時の駐中国大使だった木寺昌人氏(元駐フランス大使)は、二階俊博自民党総務会長(当時)が主導した2015年の「3000人中国訪問団」の成功に触れて、さながら「中日友好大会だった。それまで『中日関係を悪くしたのは日本側だ』と主張していたのが、『中日双方が努力しないといけない』という言い方に変わった」と回想しました。その上で台湾問題に関して「日本が妨げているわけではないのに、なぜ結果が出ていないのか」と疑問を投げ掛けました。同時に「これ以上関係を悪くしない、ということが一つのアイデアではないか」とも述べました。

司会の工藤、高洪両氏が一連の発言を踏まえた意見を求めたところ、劉洪才氏が「日中関係は大きな成果を上げたが、大きく改善することもある。そのためには対話、コミュニケーションを強化することが大切だ。中国には、覇権を唱えると国が衰えるという言葉がある。平和発展の道は共産党規約にも、憲法にも記されている」と理解を求めました。

小倉氏は、日中国交正常化交渉で訪中した田中角栄首相、大平正芳外相が漢詩を詠んだ経験を踏まえて「伝統文化の交流が大切だ」と語りました。

程永華氏も「中日は各レベル・分野でさまざまな対話があったけれども、この3年間で途絶えてしまった」と振り返り、相互利益とアジアの発展のために「対話の復活」「ホットラインの構築」を促しました。

*交流は大事だが、地域の不安を解決するためにどうすればいいか

 

ここまでの経過を踏まえて、日本側司会の工藤氏が「対話を求めて青少年、文化交流は大事だ」としながらも「建設的な発言ばかりではなく、地域の不安を解決するための対話をどう考えるか」と再び問題を提起しました。

この点に関して、木寺氏は日本の大手スーパーAEONの中国での取り組みなどを例に挙げて「感動を共有した者同士は仲良くなるし、ケンカもしない。その努力をしないと、将来は良くならない」と、実体験を語りました。

高洪氏は、国際的に注視される「台湾海峡問題への懸念は理解している。しかし、こう申し上げたい。台湾とは同胞であり、平和統一するという考えは変わらない」と、政府の見解を繰り返しました。この点について胡令遠氏も「台湾は内政問題で、懸念することはない」と追従。王輝耀氏も先の台湾統一地方選挙で与党・民進党が敗れた結果を踏まえて「台湾の人々が平和を求めている表れである。(2024年の総統選を経て)国民党政権になれば、平和的統一につながる」との見通しを示しました。

一連の議論を踏まえて薗浦氏は「今までの議論を聞いていて、日中のアジェンダの設定が少し違う」と指摘。「すり合わせをすることが重要だと改めて思った」と語りました。

白熱した議論を受け、高洪氏が「東京─北京フォーラム」の役割について「トラック1.5とも位置づけることができ、私たちの努力に掛かっている。より良い目標に向かって汗水を一緒に流しましょう」と述べ、2時間に及んだ議論を結びました。

2022年12月9日

・「第18回東京-北京フォーラム」平和秩序分科会ー「日中両国は、国連憲章の理念実現へ”外交で勝つ”で切磋琢磨を」

(2022.12.8 言論NPOニュース)

12月7日に開幕した「第18回東京―北京フォーラム」。初日午後には、平和秩序分科会特別セッション「国連憲章の今日的意味と世界の平和秩序の再建」が行われました。日本側司会は言論NPO代表の工藤泰志が、中国側司会は楊伯江氏(中国社会科学院日本研究所所長、中華日本学会常務副会長)が務めました。

まず前半では、「ロシアのウクライナ侵攻と世界の平和秩序の今後」をテーマに議論が行われました。

*「国連中心の集団安全保障体制」「米国の抑止力」「世界の相互依存関係」で維持されてきた平和が壊れ始めている

 

tanaka.jpg 日本側から最初の問題提起を行ったのは田中均氏(日本総研国際戦略研究所特別顧問(前理事長)、元外務審議官)です。田中氏は現状分析として、これまでの世界は「1. 国連中心の集団安全保障体制」、「2. 米国の抑止力」、「3. 世界の相互依存関係」の三点によって平和が維持されてきたとしつつ、「それが壊れ始めている」と指摘。

1に関しては国連憲章を無視したロシアの侵略に対して拒否権を発動できない国連の無力さによってより露になり、仮に中国がロシアに与するようなことがあれば「完全に終わりだ」と強く懸念。

2については中東で間違いを犯した米国の弱体化を指摘し、3については各国による経済制裁の多発が大きな要因との見方を示しました。その上で田中氏は、これら三点の見直しが急務であると主張しました。

*日中関係50年の教訓を欧州で活かすべき

 

徐歩.jpg 中国側から最初の問題提起を行った徐歩氏(中国国際問題研究院院長、国連秘書長ハイレベル諮問委員会メンバー)はまず米国に対する批判を展開。地政学的な大国間競争が起き始めている要因として、国家安全保障戦略やインド太平洋の展開において中国をターゲットとしたり、貿易のみならずイデオロギーをも武器化している米国の行動を、平和秩序を乱すものとして強く批判しました。

徐歩氏は欧州の現状については、政治的・安全保障的な安定のための構造が出来なかったことを問題視するとともに、ここでは日中関係50年の教訓を生かせると提案。特に「歴史を鏡とする」姿勢によって、「ロシアとNATOの歴史をよく考えるべき」と提言。併せて周辺国家とともに共同発展を実現するという習近平主席の国際秩序についての考え方も大いに参考になるだろうと語りました。

日本が安保理非常任理事国になる今後2年間は日中協力のチャンス

神余.jpg 日本側二人目の問題提起を行った神余隆博氏(関西学院大学教授、元国連大使、元駐ドイツ大使)は、「ウクライナ戦争は国連憲章と国際法が禁じる典型的な侵略戦争」と切り出した上で、「中国はロシア非難決議には安保理でも総会決議でも賛成せず棄権している。侵略についての中国の立場は極めて曖昧だ」と苦言を呈しました。

また、北朝鮮のミサイル・核開発の問題に関しても、頻繁なミサイル発射をめぐる北朝鮮非難決議に対して中国とロシアは新たな拒否権を行使して成立を阻止しているとしつつ、「多くの国から見ればなぜ中国が拒否権を行使するのか理解できないと思う。中国はこの問題で北朝鮮に対して影響力を行使しているようには見えない」と批判しました。

続いて神余氏は、日本が来年1月から2年間、非常任理事国として中国と共に安保理の意思決定に加わることを踏まえ、日中協力についても問題提起。自身が国連大使を務めていた2006年から2007年も日本は安保理非常任理事国でしたが、「日中両国は北朝鮮の核・ミサイル開発等の問題で緊密に協力することができた」と振り返りつつ、「来年からの2年間はウクライナ戦争の停戦の実現と北朝鮮や台湾をめぐる情勢が緊張しないように防ぐ上で極めて重要な時期になる。今回も日中は国連安保理において東アジアと世界の平和のために協力すべきである」と主張。

具体的な紛争の平和的な解決や核軍縮、安保理改革といった点に加え、「法の支配」(ルール・オヴ・ロー)「合意は守らなければならない」(パクタ・スント・セルヴァンダ)という国際法の基本中の基本原則が守られていない事態への対処でも協力すべきと語りました。

大国間関係の安定化や国連を補完する仕組みづくりも必要

 

李東燕.jpg 中国側二人目の問題提起を行った李東燕氏(中国社会科学院世界経済・政治研究所研究員)は、国連の設立実現は「諸国民の平和への願いの結実であり、国際法の勝利だ」とその意義を強調しましたが、その限界についてはロシアのウクライナ侵攻以前からすでに露呈していたと指摘し、国連の機能強化のための改革は不可欠であるとしました。

しかし同時に、「大国間関係が悪化すれば国連以前に秩序は悪化してしまう」として大国間関係の安定化への取り組みを求めるとともに、「地域組織やその他の新しい組織、安全保障メカニズム」をつくることで国連を補完することも必要になってくるとの認識を示しました。

問題提起の後、ディスカッションに入りました。日本側からは国連の役割に対するポジティブな評価や抜本的な改革についての発言が相次ぎました。

akashi.jpg 明石康氏(国立京都国際会館理事長、元国連事務次長)は、国連は機能不全という指摘に対して、確かに当初予定されていた国連軍は1947年時点で早々に実現困難となったものの、それでも1956年のスエズ動乱から始まり、世界の平和維持のために様々な活動を行ってきたとしつつ、「全体としては国連は機能してきたのではないか」と評価。ウクライナ問題に際しても、停戦の実効性を確保するために国連ができることはあるとの見方を示しました。

jimbo.jpg 神保謙氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)も、「ウクライナ危機の中でも国連ができたことはある」とした上で、国連総会の緊急特別会合がロシアのウクライナ侵攻への非難決議採択を通じて国際的な規範形成をしたことや、マリウポリから退避するための人道回廊設置では役割を果たしたと評価しました。

神保氏はさらに、常任理事国という特別な地位を得ている中国が国連の役割を軽んじることは、中国自身の国益に合致していないと忠告。特に北朝鮮問題を念頭に、自分が絡んでいる対立を国連の場に持ち込んで機能不全にすべきではないと指摘しました。

yamaguchi.jpg 山口壯氏(衆議院議員、前環境大臣、元外務副大臣)は、一つの拒否権だけで機能不全に陥ることがないようにするための安保理改革について提言。米英仏ロ中5カ国が有する拒否権を剥奪するのではなく、理事国の数を増やして、多数決あるいは絶対多数で問題を処理することによって拒否権を行使したとしても議決可能となるようにする、といった改革を模索すべきと語りました。

一方の中国側からは、世界平和を乱しているのは米国であるといった主張や、ウクライナ問題についてもロシア側の事情や歴史的な背景などを考慮すべきといった意見が相次ぎました。

王文.jpg 王文氏(中国人民大学重陽金融研究院執行院長)は過去20年間、アフガニスタンやリビアなどでの失敗を通じて国連は弱体化を続けてきたが、それらはそもそも米国が起こしたトラブルであり、「米国こそが国連憲章の破壊者だ」と糾弾。

ウクライナ問題についても、ロシアの侵攻には反対としつつ、米国からプレッシャーを受ける中国の姿をロシアに重ね合わせながら、「圧迫を受けているというロシアの気持ちはよくわかる」と一定の理解を示しました。

何亜非.jpg 何亜非氏(元国務院華僑事務弁公室副主任、元中国駐国連ジュネーブ代表団大使、元外交部副部長)も、ウクライナ問題の背景は「歴史を踏まえながら分析すべきであり、どちらが悪いか白黒はっきりさせるのは難しい」と慎重な物言いに終始しました。

また、米国に対しては、積極的な同盟の展開を「時代に潮流に則っているのか」と苦言を呈すと、楊伯江氏も同盟展開自体が国連の精神に反するし、それは米国に追随する日本も同様だと補足しました。

趙啓正氏(元国務院新聞弁公室主任、中国人民政治協商会議第11期全国委員会外事委員会主任)も同様の視点から、国連の外部にNATOやクアッドをはじめとして様々な同盟・連携が存在していることが、国連の権威性を弱めていると指摘。同時に、中国はどことも同盟を結んでいないし、「ロシアとの間にも秘密裏の同盟など存在しない」ことを強調しました。

セッションの後半では、「世界の平和秩序の修復で日中はどう協力すべきか」をテーマとして議論が行われました。

*平和秩序修復での日中協力と同時に様々な分野での協力を積み重ねていくべき

 

中国側から最初の問題提起を行った何亜非氏は、世界の平和秩序が困難に直面し、グローバリゼーションが一部崩壊している今、秩序修復のためには協力しかないと切り出しつつ、日中両国は「地政学的対立を理由に隣国に責任を押し付け合うのではなく、協力発展を目指すべき」と主張。平和秩序修復での日中協力を訴えました。

何亜非氏は同時に、これまで世界の中心にあった西側の理念がその限界を露呈しつつある中では、東洋の理念が重要になってくるとも指摘。また、アジアの課題はアジア自身で解決することの重要性を説きつつ、「AIやデジタルでのオープンな技術協力や、経済のデカップリング阻止で日中協力の余地は大きい」とし、こうした様々な協力によるつながりを積み重ねることが結局は平和にもつながっていくとしました。

*大国である日中両国にはウクライナ和平に向けた責任がある

 

日本側から問題提起を行った神保謙氏は、「今我々がこうして議論している最中にもウクライナでは戦闘が続いている」とした上で、大国である日中両国には和平に向けた責任があると指摘。「少なくとも侵攻が始まった2月24日以前の状態に戻すことが望ましいステータスだとロシアに働きかけるべき」としつつ、停戦後の平和維持活動での日中協力が重要と語りました。

神保氏は日中間の課題として他にも、安全保障問題での対立とは別に経済関係の強化は進め、相互依存関係を深めていくことの重要性についても言及しました。

*日本は米国に追随せずに歴史から教訓を汲み取るべき

 

王文氏は、米国に追随し、台湾やウイグルへの干渉を続けたり、中国を軍事的脅威とみなす日本の姿勢に対して「中国国民は当惑している」としつつ、「日本は歴史から教訓を汲み取るべき」と釘を刺した上で、日中関係の今後について提言。未来志向の戦略を共有するとともに、歴史や領土で共通認識を持つべきとしつつ、「中国の姿を冷静に見て、平和的台頭を受け止めてほしい」と注文を付けました。

*カンボジアにおける日中協力をウクライナでの再現に期待

 

明石氏は、国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)代表としてカンボジア和平に携わった際の日中PKO協力を回顧しつつ、ウクライナにおいても「あのような日中協力ができれば」と期待を寄せました。

また明石氏は、ウクライナ和平に向けて米仏はすでに議論を始めているとしつつ、こうしたイニシアティブに加わるだけではなく、「自分たちからも議論をリードしていくことも必要だ。待っているだけでは生産的ではない」とより積極的な行動を求めました。同時に、ノン・ガバメントにも果たすべき役割はあり、有識者の知恵も求められてくると居並ぶ両国のパネリストに語りかけました。

問題提起の後、ディスカッションに入りました。

*まず日中関係再構築。日本は米国だけでなく中国との結びつきも意識すべき

 

cyo.jpg 趙啓正氏は、「まず日中両国間の平和と友好をしっかりと固めること。そこが安定しないとアジアや世界の平和を語っても机上の空論にしかならない」と地道に足元を固めることの重要性を指摘。その上で、北東アジアの平和を実現する上での最大の障害は北朝鮮問題であるとし、ここで日中協力は不可欠との認識を示しました。

趙啓正氏は日米関係に関しても言及。政治・経済・安全保障など多面にわたる強固すぎる関係によって「中国は蚊帳の外に置かれている」としつつ、日本に対しては「中国ともしっかり結びつくべき」と要望し、半導体など技術分野ではそれは十分可能との認識を示しました。

こうした「まず日中関係再構築。そこからアジア、世界」との視点や、技術や貿易など他分野での協力を強固にすべきとの意見は、他のパネリストからも相次ぎました。

*反覇権の考えを広め、外交で勝負する

 

神余氏は、日米関係は「自由、人権、法の支配という価値を共有しているから強固なのだ」と日中関係との違いを強調しましたが同時に、日中両国も価値を越えて協力できることはあると提言。日本と中国が平和条約で合意している「反覇権」の考え方は、「国連憲章にもないユニークかつ重要な原則だ」としつつ、「これを協力して世界に広めることが今後の世界平和の鍵となる」

kudo.jpgと主張。

また、「この反覇権と現状変更のための武力不行使の原則を、すべてのアジア諸国で確認するための国際会議を国連と共に日中が協力して開催できれば世界平和への素晴らしい貢献となる」、「国連憲章の理念を実現するために、日中両国は何事も『戦わずして勝つ』こと、すなわち『外交で勝つ』ことに徹底して、切磋琢磨すべきである」などと語りました。

神保氏もこれを受けて、米中の戦略的な対立とは異なる場面での日中協力は可能とし、「その大元には国連憲章があるべき」と語りました。

議論を受けて最後に工藤は、「まず議論が始まったことが収穫だ」とし、今後さらなる議論の展開に意欲を見せました。

2022年12月9日

・「第18回東京-北京フォーラム」メディア分科会ーメディア版「不戦の誓い」で合意

(2022.12.8 言論NPOニュース)

12月7日から開催している「第18回東京-北京フォーラム」は8日も各種の分科会が開催されました。「対立する世界とアジアの平和で問われる報道の在り方」を大テーマにしたメディア分科会では、日中両国のメディア人が率直な議論を繰り広げました。

冒頭、日本側司会の川島真氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)は「世論調査の特別セッションは日中双方の議論がかみ合った。調査結果を見ると、中国の印象が良くないのは日本のメディアが『中国を悪く喧伝しているからだ』と。一方でメディアの貢献度に関する設問では、日本は低く、中国は高く見ている」などと述べ、両国のメディア・報道に対する認識の違いを指摘し、議論が始まりました。

議論前半のテーマは「ウクライナ侵攻や世界の対立を両国メディアはどう報じたか」に設定。日本側の問題提起者の一人、朝日新聞の坂尻信義編集委員は「国交正常化50年があまり盛り上がっていないとされたが、40年も盛り上がりを欠けた。しかし、45年は盛り上がっていた」と述べ、曖昧な印象論は気にする必要はないとの認識を表明。その上で2013年の本フォーラムで「不戦の誓い」を世界に向けて発した取り組みを評価し、コンセンサスを維持発展させることが重要だと述べました。

デジタルで情報発信する彭湃新聞の劉永鋼総裁・総編集長は、ウクライナ情勢などを例に挙げて「第三国の国民は、マスコミ報道によってステークホルダー、さまざまな声を知ることになる。干渉を避けて、事実に基づいて報道する原点に戻るべきだ」と原則論を主張。同時に中日関係について「相手国へのネガティブキャンペーンを避け、共通の問題も報道できるはずだ」と語りかけました。

*「日本のメディアは米国に反対の報道はしないのか」

二人目の問題提起者である日経新聞の藤井彰夫常務執行役員・論説委員長は、「政府発表ベース」の中国メディアに対して、日本の報道姿勢は「政府から独立し、さまざまなソースで多様な意見、議論を提供している」と違いを強調。中国の若者らによる最近の「ゼロコロナ」政策への批判的対応が報道されたのかどうかなど、メデイアの対応をただしました。

鳳凰衛視(フェニックステレビ)中国語局の黄海波副局長は、日本メディアによる中国の「軍事大国化」報道に不満を表明するとともに「米国はたくさんの戦争を引き起こしたのに、なぜ報道しないのか」と疑問を示しました。同時にロシアのウクライナ侵攻に関して「中国は中立であり、覇権的な対応はとらない。平和的な対応を選ぶ」と明言しました。

アジア太平洋広報センター総編集長の王衆一(中国人民政治協商会議第13期全国委員会外事委員会委員)は「『人民日報』などオールドメディアは包括的に報道している。歴史番組などでNHKは深い洞察力を示しており、現実面でも深みのある報道ができるのではないか」と、中国側の視点で要望しました。

共同通信国際局編集委員多言語サービス室長の辰巳知二氏は、黄海波氏が言及した「米国の戦争」について応答しました。「ブッシュ(息子)政権によるイラク戦争に対して、日本は批判的だった。米軍に従軍し、精力的に報じた」と振り返り、「現場の記者は命がけで取材した。戦争で犠牲になるのは子供や住民だ」と批判しました。

 

*日中両国のメディア間で認識の差が明らかに

 

中国側司会の金?氏は、イラク、アフガニスタン戦争に言及した上で「日本メディアは、組織ジャーナリストとフリージャーナリストでは立場の違いがある。米国の意に沿った報道をしている印象だ」と指摘。これに関連して、人民日報国際部編集者の劉軍国氏も「現象が生じた後の本質を考える必要がある。我々は現象から、米国の覇権主義を見ている。日本側も本質を見るべきではないか」と、金?氏の指摘に賛意を示しました。

一方、毎日新聞外信部長の古本陽荘氏は「日本メディアが、中国に関してネガティブに報じて悪化したとは思わない。我々は現に米国の選挙や銃規制、差別問題などを詳報し、かなり批判的に報じている。隣国の友人が間違ったことをきちんと言い合えることが健全な関係ではないか」と反論したところ、金?氏は「認知戦に巻き込まれている」と再反論しました。続けて「日本の主要メディア5紙は大体、政府と同調しているのではないか。中国の人々は幾つかの層に分かれており、反応も多元的だ」と主張しました。

中国青年報国際面融合メディア編集長の陳小茹氏は「ウクライナ侵攻の本質はロシアと米国の衝突だ。どちらかを弁護するのではなく、”放火”したのはどちらかと考察することに意味がある。メディアは思考を単一化しているが、中国は多元的に報じている」と強調しました。

*メディアは紛争の不安と対立を煽っているのか

 

議論の後半は「報道は、アジアで高まる紛争の不安と対立を煽っていないか」をテーマに、再び熱っぽい議論が展開しました。

NHK解説室の神子田章博解説主幹は、中国側が主張したロシアのウクライナ侵攻に関する見解に対して「何もしていない人々がかわいそうな状況に陥っている。(本質という)大きな事柄から見れば、そうではないとするのは、問題のすり替えではないか」と厳しく指摘。同時に、欧米日が対ロシア経済制裁に踏み切ったことについて「中国が加わらないのは、ロシアから自由にエネルギーを得ているからではないか。それこそ”漁夫の利”であり、日本側の印象悪化につながっている」との見解を示しました。

日本側司会の川島氏は、ロシアのウクライナ侵攻が「NATOの東方拡大」だけが理由とは言えないのではないかと指摘。むしろ「認知戦」が「不安と対立」をあおってはいないかと重ねてただしました。

この点について、中国側司会の金?氏は香港民主化問題における日本の報道姿勢を例に挙げて「北東アジアに目を向けて、自己批判をした方が良い」と応じました。さらに「各々の理念に基づいて、互いに助け合えばいい。日本の原籍は欧米にある。アジアの国なのに、北朝鮮、ロシア、中国と敵対しているではないか」と畳みかけました。

この発言に対して、川島氏は日米安保に触れて「米国に追従しているように見えるかもしれないが、日本の対外政策は米国べったりではない」と反論しました。NHKの神子田氏も「中国のメディアは、政府の宣伝機関であるという印象だ。日本は事実に基づき、付加価値を付けて報じている」と指摘。米シンクタンクのランド研究所による台湾有事のシミュレーションに言及して「作用と反作用がある。日本のEEZにミサイルを撃ち込み、メディアが台湾有事を念頭に一様に報じたのは、中国側の身から出た錆だろう」との見方を示しました。

この発言を受けて、金?氏は「ロシアのウクライナ侵攻を、中台関係に当てはめるのはいかがなのものか。台湾は国ではないし、必ず有事が起きるとも限らない」と述べ、内政干渉に不満を表明しました。

*メディア版「不戦の誓い」には、日中両国の参加者が賛同

 

二人目の問題提起者である共同通信の辰巳氏は、コロナ禍で途絶えた人的交流などを踏まえて「日本の報道機関で、中国の脅威を過度に報じる社はない」と理解を求めました。その上で、先の「不戦の誓い」に言及して「メディアとして、より確実に戦争のためのペンは持たないことを確認してはどうか」と提案。出席者全員で「メディア版『不戦の誓い』」を確認することに賛意を表明しました。

読売新聞国際部の小川聡部長も「日中友好に資する報道に努めているが、それができない安保政治状況がある。中国は軍拡を続け、日本は自衛のための必要最小限度の防衛を議論している。対立分裂を加速するリアクションを正当化せず、友好機運を高めるためにも、国際協調に努めてほしい」と呼びかけました。

18年連続で参加している元国務院新聞弁公室主任の趙啓正氏が「メディアの立場も違うが、互いの胸襟を開くことが大切だ。互いの相違点、欠点を捉えるのはネガティブになる。もっとポジティブに捉えた方が良い」とサディスチョンを与えました。さらに「ぜひ関係者、相手国記者との交流を図り、北東アジアや世界のために使命を果たしてほしい」と訴えて、2時間にわたる議論を終えました。

 

2022年12月9日