Cardinal Joseph Zen, Bishop Emeritus of Hong Kong
(2022.5.13 カトリック・あい)
中国の強権日支配が強まる中で香港市民の人権と信教の自由を訴え続けてきたカトリック指導者、陳日君枢機卿(90)が11日夜、香港公安当局によって逮捕された。罪状は「612人道支援基金」の管理者として「外国勢力と共謀した」というもの。
香港では8日に、行政長官選挙が行われ、唯一の立候補者で中国の習政権の支持を受けた警察出身の李家超氏が圧倒的多数が当選した。李氏は、香港当局の人権、表現の自由の弾圧に抗議する市民たちの動きを厳しく抑え込む先頭に立って来た人物。
習主席の後ろ盾を受けた強硬派の香港行政トップへの就任で、さらに統制が強まるとの懸念が内外で強まり、9日には、日米英独など主要7か国(G7)外相とEU上級代表が、今回の香港行政長官の選出プロセスについて「政治的多元性及び基本的自由に対する継続的な攻撃の一環として、我々の重大な懸念」と表明したばかり。
そうした中での、人権・信教の自由を守る先頭に立つ陳枢機卿の逮捕は、そうした懸念をものともしない姿勢の露骨な表明以外の何ものでもない。バチカンの報道官は、この事態を憂慮するとともに、重大な関心をもって当局の動きを注視している、としているが、中国の習主席による宗教活動への規制が強まる中でなお、中国国内での司教任命に関する「暫定協定」を続けているバチカンが今後、どのような対応をするか注目される。
香港の民主化運動を弾圧する当局の動きには、2005年の香港の中国への返還時から一貫して反対の立場を取り、弾圧される人々を守る立場を続けてきた。また、バチカンが中国政府・共産党と融和の姿勢に傾く中で、中国国内で共産党の宗教規制を容認するのに利用されることを懸念し、とくに教皇の身に忠誠を誓い、中国政府・共産党の管理下に入ることを拒む”地下教会”の司教、司祭、信徒を守る必要を、バチカン、教皇に繰り返し訴えてきた。
そして、2018年9月に、バチカンが中国政府との間で、長年対立していた司教の任命権について「暫定合意」した際には、「バチカンは中国の信者を売り渡した。絶望している」と批判。同合意に基づいて教皇フランシスコが、中国政府任命の7人の司教を承認したのに対して「(教皇は)中国の体制を理解していない」「この合意は中国における『真の教会』の消滅につながる」「私が風刺漫画家なら、教皇がひざまずき、中国の習近平・国家主席に天国の鍵を差し出して、『どうか私を教皇として認めてください』と言っている絵を描くだろう」など、厳しく批判した。その後も、批判の姿勢を変えず、バチカンの対応の警鐘を鳴らしている。
(以下の部分は、11日付けVatican Newsによる)
2002年から2009年まで香港教区の司教を務めた陳日君枢機卿が11日夜、香港当局の「中国の国家安全保障を監視するため」の部署によって逮捕された。湾仔警察署の外で撮影した陳枢機卿の写真を投稿した地元記者がソーシャルメディアで流した報告によると、枢機卿は保釈され、警察署を出た際、コメントなしで車に乗り込んだ、という。
「612人道支援基金」は、市民の人権を守る運動で逮捕、虐待を受けている人々への訴訟費用や医療費などを財政支援する団体で、2019年に設立され、昨年10月に解散。陳枢機卿が同基金の評議員の1人だったことをもって、「外国軍との共謀」の罪を犯したとされたようだ。
陳枢機卿逮捕について、バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官は、記者団の質問に対して、「聖座は枢機卿の逮捕のニュースを重大な懸念をもって聞き、状況の進展を細心の注意を払ってみている」と述べた。
11日には、当局が同様の罪で、枢機卿の他、元野党議員で世界的にも知られる人権派弁護士 Margaret Ngを含む基金の主要メンバー3人も逮捕した。
香港の地元メディアは今回の4人の逮捕について、当局は、中国政府・共産党が2020年5月に香港で試行した「国家安全法」に基づき、612人道支援基金による「外国勢力」との「共謀」の容疑に焦点を当てている、と報道した。これは、香港での民主化運動を抑圧することを目的とした同法に基づいて犯罪とされた「破壊」「分離」「テロ」と並ぶもので、最高刑はは終身刑だ。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)