(2022.12.7 言論NPOニュース)
「第18回東京-北京フォーラム」
*開幕式・基調講演ー林芳正外務大臣、王毅国務委員兼外相がメッセージ
2022年12月07日
*建設的かつ安定的な日中関係の構築に向けて、国民間の交流が不可欠
日本側の政府挨拶に登壇した外務大臣の林芳正氏は、国交正常化以降の50年間の日中関係を「政治、経済、文化、人的交流等の幅広い分野で着実に進歩を遂げた」と振り返りましたが、同時に「多くの課題や懸案にも直面している」とも指摘。その上で、「地域と国際社会の平和と繁栄にとって共に重要な責任を有する大国」である日中両国は、課題や懸案があるからこそ率直な対話を重ね、国際的課題には共に責任ある大国として行動し、共通の諸課題について協力する「建設的かつ安定的な日中関係」の構築という共通の方向性を、双方の努力で加速していくことが重要であると語りました。
最後に林外相は、「建設的かつ安定的な日中関係」の実現のためには国民間の交流が不可欠との認識を示し、「新型コロナで激減してしまった両国間の国民交流をしっかりと戻していく必要がある。先般の日中首脳会談でも、両国の未来を担う青少年を含む国民交流を共に再活性化させていくことで一致したところだ」としつつ、日中間最大の民間対話である本フォーラムの役割にも大きな期待を寄せました。
*「力よりも理」「暴力よりも国連憲章」こそ大事で、そのために日中両国には大きな責任がある
中国側の政府挨拶に登壇した国務委員兼外交部長の王毅氏はまず、11月の日中首脳会談では、両首脳が日中関係の重要性を再確認するとともに、新時代の日中関係を目指すことで一致したことを踏まえながら、今年の国交正常化50周年、来年の日中平和友好条約45周年というこの2つの節目の年に、「両国は日中関係の初心に帰るべき」と切り出しました。
王毅外相はさらに、日中共同声明が発表された後に当時の周恩来首相が「言必信、行必果」(言は必ず信あり、行いは必ず果たす)という題辞を田中角栄首相に贈り、これを受けた田中首相が「信為万事之本」(信は万事のもと)と返したことを振り返りながら、信頼のためには約束を守る必要があり、その約束は4つの政治文書に具体化されていると指摘。今後も互いにとっての脅威とならないことや経済的にWin―Winの関係を続けていくべきとしつつ、米中対立を念頭に「一方の陣営に与してゼロサムゲームの罠に陥らないように」したり、香港や台湾、ウイグル問題などでの日本側からの干渉を戒めました。
また王毅外相は、多国間主義と国際秩序が大きな挑戦を受けている現在は百年の一度の大変革期にあるとの認識を示した上で、こうした難局の中では力よりも「理」、暴力よりも国連憲章を核心とする国際関係の基本準則こそが大事だと強調し、これを守るために日中両国には大きな責任があると説きました。
最後に王毅外相は、10月に行われた共産党大会の政治報告では、「周辺国家との友好、相互信頼と利益融合」を追求するとしていることに言及しつつ、改めて次の50年に向けた日中協力を呼びかけました。
*米中対立のどちらに与する議論ではなく、胸襟を開いた本音の対話を
日本側の主催者挨拶には、「東京―北京フォーラム」実行委員長の武藤敏郎氏(大和総研名誉理事、元東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会事務総長)が登壇。ロシアのウクライナ侵攻により世界情勢は不安定化し、世界経済にも分断化の傾向が強まっていること、アジア地域においても台湾海峡問題など不安や緊張の高まりがあること、そして対面ではおよそ三年ぶりとなる11月の日中首脳会談の直後のタイミングであることなどを挙げながら、武藤氏は今回のフォーラムが「特に重要な意味を持っている」と強調しました。
さらに、国連を含めた国際ルールに基づき、国際協調による世界の平和秩序の確立を目指すべきだとの認識を示した武藤氏は、今回のメインテーマ「世界の平和と国際協調の修復に向けた日中両国の責任」についても、依然として続く米中対立という構図の中でどちらかに与して議論するべきではなく、「両国の有識者が胸襟を開いて本音で対話をすることによって、世界とアジアの平和と安全のために何ができるのか、ともに考えていこうではないか」と呼びかけました。
*安定的な日中関係の土台になるのは民間交流
中国側の主催者挨拶に登壇した杜占元氏(中国国際伝播集団総裁、中国翻訳協会会長)は、世界第二、第三の経済大国である日中両国が協力関係を深めていくことは、激動し、不確実性が増している世界情勢の中では、単なる二国間関係の発展にとどまらず、世界全体の平和と発展を促進するために不可欠であるとし、両国の大国としての国際的責任を強調。
同時に国交正常化50周年を踏まえて、「孔子曰く、四〇にして惑わず、五〇にして天命を知るというが、両国にとって不惑というのは、歴史的偏見を捨て、政治の目先の利益にこだわらず、利害の違いを直視し、干渉を排除した上で、Win-Winのチャンスを掴むことだ。そして天命を知ることは、世界・時代・歴史の変化といった大勢を理解した上で、世代の友好を受け継ぎ、両国の発展を促し、世界の平和を守り、人類の幸せを増進する責任と使命を共有することだ」と語りました。
その上で杜占元氏は、具体的な協力のメニューとして、「デジタルエコノミー、グリーン発展、ヘルスケア、産業・サプライチェーンの安定化・円滑化」など様々なものがあるとしつつ、そのためにもより安定的な日中関係が必要であり、その土台となるのはやはり民間交流、とりわけ青少年交流であると主張。また、18年間にわたって両国関係の健全な発展のために尽力してきたハイレベルかつ大規模な民間交流のプラットフォームである本フォーラムの議論の展開にも期待を寄せました。
*新たな時代の、新たな日中関係構築への歩みを
続いて、基調講演が行われました。まず日本側基調講演には、「東京―北京フォーラム」最高顧問の福田康夫氏(元内閣総理大臣)が登壇。その冒頭、「世界は、混迷の度合いをますます深め、対立と分断に向かっており憂慮に堪えない」と切り出した福田氏は、その理由を「現在われわれが享受している平和と繁栄、それをもたらした戦後国際秩序が動揺を来たし、崩壊しかねない状況になっているからだ」と指摘。その上で福田氏は、習近平主席の「人類運命共同体の構築」、自身の父・福田赳夫元首相の「世界は共同体である」といった発言に触れながら、「私が(首相在任時の)2008年の日中共同声明において戦略的互恵関係を打ち出したのも、このような考えに沿うものと考えたからだ」と振り返りつつ、日中両国に協働して現行国際秩序を改善し強化する具体的作業に着手することを要望。「そうすればその先に、アジアの伝統的価値観が色濃くにじむ、人類運命共同体の姿が浮かび上がってくることだろう」と期待を寄せました。
福田氏は、対立を緩和し、分断を回避することは、そう簡単なことではなく、手間もかかるとしつつ、現在の国際社会には懸命の努力が不足していると苦言を呈するとともに、政治指導者たちにも大局的判断と懸命な行動を強く求めました。とりわけ、ロシアのウクライナ侵攻や台湾海峡における緊張の高まりにおいては、こうした視点からの外交努力が圧倒的に不足しているとの見方を示した福田氏は、対話の強力な推進が不可欠と主張。また日本外交と台湾問題については、「1つの中国」政策を堅持しつつ、米中との対話を進めながら、緊張緩和の道を探ることを日本外交の中心的課題とすべきと強調しました。
また福田氏は、経済のグローバリゼーションについても言及。経済安全保障が重視されるようになったからといって世界経済が分断されてよいという理由にはならず、マイナス要因を極小化する新しいプロセス管理を開発する必要があるとしてきしました。
福田氏は最後に、気候変動問題や核不拡散など他にも課題が山積みである中、やはり日中協力は不可欠と改めて強調。国交正常化以降の50年間に思いを致しながら、「新たな時代の新たな日中関係の構築への歩みを進めてもらいたい。世界の中に日中を置き、両国国民が正面から向き合い、手を握り合う関係を作りあげるべきではないか」とし、講演を締めくくりました。
*青年交流を含めた民間交流を推進し、友好の基盤を固めることが重要
中国側からは孫業礼氏(中国共産党中央委員会宣伝部副部長)が登壇しました。そこではまず、世界が激動する新たな変革の時期に入る中、日中関係も重要な歴史的節目を迎えているとの認識を示しつつ、こうした難局の中で健全かつ安定した発展を推進する上での大きな助けになるのは、「この国交正常化50周年来の経験と知恵」であるとし、これを真剣に考え総括し吸収することが大事だと主張。その上で自身の分析として、「国交回復の初心を振り返り平和友好の正しい方向を把握すること」、「経済協力を深化させ互恵・Win-Winの利益の繋がりを緊密にすること」、「人的文化交流を推進し両国の民意基盤をうち固めること」、「協調と協力を強化し世界の繁栄と安定した発展を促進すること」といった四点のポイントを提示しました。
また孫業礼氏は、民間が果たすべき役割についても言及。まず、両国の国民が日中関係についての正しい認識を得る上でのメディアの役割の重要性を指摘し、この分野での日中協力の深化を求めました。
次に、本フォーラムに多くのシンクタンクが関係していることを踏まえ、シンクタンクの役割について言及。国交正常化50周年の今年は、両国のシンクタンクや専門家、学者はシンポジウムや対話など多くの交流活動を行い、良い結果を得たと評価しつつ、今後もシンクタンク間の共同研究や定期的な交流を行うことを通じて、日中関係の発展を促進するための助言や、対立や課題を解決するために知恵を出すこと、さらには世論を導く役割を果たすことにも期待を寄せました。
続いて、青年交流を推進し友好の基盤を固めることの重要性を指摘した孫業礼氏は最後に、中国国務院新聞弁公室としても今後もこうした多面的な民間の交流へのサポートを続けていくと意気込みを語りました。
開幕式の後、パネルディスカッションに入りました。
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*全体会議パネルディスカッション報告
「世界が不安定化する中、日中関係の未来を考えるプラットフォームに」
2022年12月07日
言論NPOと中国国際伝播集団が主催する「第18回東京-北京フォーラム」は12月7日(水)、日本と中国をオンラインで結び開幕しました。
午前の開会式と基調講演に続いて、「世界の平和と国際協調の修復に向けた日中両国の責任~日中国交正常化50周年で考える」と題するパネルディスカッションが行われました。
ロシアのウクライナ侵略後の世界の平和秩序をどのように修復するのか、さらには北東アジアの台湾海峡での懸念が高まる中で紛争を避けるために
はどうすればいいのか、という国際社会が直面する難題について、東京と北京、上海の3カ所から両国の有識者8人が1時間半にわたって活発な議論を交わしました。
冒頭、日本側司会を務める元駐中国大使の宮本雄二氏(宮本アジア研究所代表)が「ロシアのウクライナ侵攻、台湾海峡問題、世界経済の競争と分断に陥る中、国際社会は極めて厳しい十字路に直面している。世界の未来にとって日中両国はどういう存在になるべきなのか」と問題提起しました。
中国側司会の趙啓正氏(元国務院新聞弁公室主任、中国人民政治協商会議第11 期全国委員会外事委員会主任)も宮本氏の主張に賛意を示した上で、12月7日に北京・人民大会堂で開催された江沢民元国家主席の追悼大会に言及。「江沢民氏は中日関係に大きな期待を寄せていた。国交正常化50年で数多くの関係者が両国の関係改善に努力した。『朝日新聞』論説主幹で北京で亡くなった若宮啓文氏が『日本海に荒波があって、どうやって同じ船に乗ることができるのか』と書かれたが、百年に一度の大変革の時代に真摯に向き合うべきだ」と語り、議論がスタートしました。
中国元財政部副部長の朱光耀氏は、1980年代から現代に至るシビアな国際金融市場環境に触れた上で、東アジアにおける経済危機に対応することを謳った2000年5月のチェンマイ・イニシアチブ(CMI)の重要性に言及。「中日両国が協力してチェンマイ・イニシアチブの実体化を推進すべきだ」と訴えました。
歴史ある「アジア調査会」会長など要職を務める五百旗頭真氏(兵庫県立大学理事長)は国交正常化50周年、来年の友好条約締結45周年の節目を迎える一方で、両国の政治環境が改善されないことに懸念を表明。「中国は世界の運命」の方向性を握っていることから、為政者は「天の下の道理を尊び 民を慈しむ」方向に進むかどうか、国際社会が注視しているとの見方を示しました。
前中国駐日本大使の程永華氏(中日友好協会常務副会長、中国人民政治協商会議第 12 期全国委員会外事委員会委員)は世界経済の「頓挫」や「新冷戦」「覇権主義」などが懸念される現状について、歴史上「百年に一度の変化が起きている」と分析。その上で「21世紀はアジアの時代」であり、戦略的互恵関係やRCEP(地域的な包括的経済連携)協定の重要性を改めて唱えました。
国際安全保障の専門家である河野克俊氏(前自衛隊統合幕僚長)は「第一次安倍政権─福田康夫政権時代の『戦略的互恵関係』が最近全く使われなくなった」と指摘した上で、ウクライナ戦争において、ロシアの「核使用」に対して中国側が明確に反対を表明したことなどを評価。国際的に懸念が高まる台湾海峡問題に関しても「尖閣諸島国有化を経て日中間の防衛交流が2013年以降途絶えている」として、早期再開の重要性を求めました。
中国国際戦略研究基金会上席研究員の張沱生氏は、台湾海峡問題を巡って米国の関与が強まっていることを念頭に「冷戦がアジア地域にやってきそうだ」と不快感を表明。同時に日中関係が悪化した理由について①相互信頼の弱体化②グローバリゼーションの進展③パンデミック④歴史認識──などに起因する問題を挙げて、「新しい大国関係をつくらねばならない」と主張しました。
*両国共通の土俵づくりが重要
司会の宮本氏が「日中の共通項は経済にある」との認識を示し、元日銀副総裁の山口廣秀氏(日興リサーチセンター理事長)の意見を求めました。
山口氏は「今ほど政治と経済を切り離して語れることはそうそうない。各国間の協調によって不安定化を避けている」との見解を示しました。ウクライナ戦争、北朝鮮ミサイル、台湾海峡問題などアンチ・グローバリゼーションを進める不安定要因が山積する中で、日中両国ともに共通の対応を求められると指摘。同時に「中国が改革開放路線を堅持してくれるのかどうか、日本の経済界は心配している」と述べ、両国共通の土俵づくりの構築が重要との認識を明らかにしました。
一連の発言を受けて、改めて宮本氏が「世界や日中が大きな問題を抱えている中で、両国がどのような関係を目指すべきか」と問題を提起しました。
五百旗頭氏は「中国が『核不使用』を表明した意味合いは大きい」と歓迎した上で、最近のゼロコロナ政策にも変化が生じていることに言及。強硬路線から「やや柔らかな路線に移ってきている」として、今後の方向性を注視する考えを示しました。
朱光耀氏は先の発言に続いて、チェンマイ・イニシアチブを念頭に「日中は協力を強化しなければならない」と指摘。その上でマクロ経済、地域政策、サプライチェーンなど各種政策を整理するためにも「今回のフォーラムは有効だ」と語りました。この発言を受けて、山口氏が「世界経済はディスインフレ、デフレからインフレの時代に変わりつつある」と懸念を表明。マクロ経済分野において、日中両国がどのような考えを持っているのか示すことも、世界経済にとって重要になると強調しました。
*安全保障分野では意見の相違も
また、安全保障分野について程永華氏が「今、わざと相手を敵だとみなす動きがあるが、日中間には平和友好条約がある。さらに交流を深めて対話を進めていくべきだと」と語りかけました。
一方、河野氏は、日本国民の間には尖閣諸島を巡る中国の行動に対して「脅威がある」と指摘。仮に台湾有事が生じれば、「日本の安全保障上対応せざるを得なくなる」と釘を刺しました。
これに対して中国側司会の趙啓正氏は「中国からすると、日本のロジックは受け入れられない」「米国の空母、偵察機が台湾海峡付近をパトロールしているが、日本の基地からやって来ている。日米同盟も我々に不安を与える」と反論しました。
張沱生氏が「どのような中日関係が望ましいのか」と問題提起し、互恵関係や「一つの中国」原則の遵守などが基本になると指摘。同時にさまざまなレベル・分野での対話の回復をはじめ、APECなど国際的な枠組みでの議論が求められると主張しました。
日中双方の意見が真っ向から対立しそうな気配になったところ、五百旗頭氏が「ウクライナ戦争を終結させるイニシアチブを、日中が共同で働きかけることは重要だ。成熟した大国の雅量を示してほしい」と訴えました。
最後に司会の宮本氏、趙啓正両氏が「対話を基礎としたプラットフォーム」設定の重要性を確認。「まずはこの『東京─北京フォーラム』を大切にしよう」と語りかけて、1時間半にわたるパネルディスカッションは終了しました。
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*政治・外交分科会報告
「日中間でアジェンダ設定が異なる課題を、どうすり合わせるかが重要」
2022年12月07日
言論NPOと中国国際伝播集団が主催する「第18回東京-北京フォーラム」は12月7日(水)、日本と中国をオンラインで結ぶ開幕しました。
世界の平和秩序の再建と国連憲章の今日的意味を協議した特別分科会「平和秩序分科会」に続いて、政治・外交分科会が開催されました。「混乱が深まる世界と日中関係の未来」をテーマに、日中双方から計12人(司会を含めて日本側8人、中国側4人)の政治家や元外交官、有識者が出席し、国交正常化50年を迎えた日中関係の課題を話し合いました。
日本側司会は言論NPO代表の工藤泰志、中国側司会は中華日本学会会長の高洪氏(中国人民政治協商会議第13期全国委員会委員)がそれぞれ務めました。
工藤は冒頭、第18回日中共同世論調査の結果を踏まえて、両国関係の現状について両国民の「半数近くが満足していない。いろいろな政治文書も機能していない」と指摘。その上で国交正常化50年を念頭に「過去を祝うだけでなく、岐路に立つ地域の平和と安定のアジェンダは今日的課題だ」と問題を提起しました。高洪氏も「中日両国の足下の課題だ」と応じ、議論がスタートしました。
*政治的価値観が異なっても、長期視点を持ち友好関係を構築することが最大の安全保障

50年前の国交正常化交渉において、外務省アジア局中国課首席事務官として日中航空協定策定に奔走した小倉和夫氏(元駐仏大使、元駐韓国大使、国際交流基金元理事長)は「対中感情のもたらすことから、中国は『強国』であると自ら宣伝することは止めた方がいい」と指摘した上で「50年前の方が、はるかに政治的価値観が異なった。長期的視点を持ち、友好関係を構築することが最大の安全保障になる」と訴えました。
前駐日本大使の程永華氏(中日友好協会常務副会長、中国人民政治協商会議第12期全国委員会外事委員会委員)は午前中のパネルディスカッションに続いて登壇。「孔子は『五十にして天命を知る』と言ったが、中日関係のレベルはまだまだだ」と現状を分析。その上で日本の対中姿勢に関して「『台湾有事』という言い方は一線を越えている。日中間の四つの政治文書を遵守すべきであり、日本には冷静に対処してほしい」と牽制しました。
安倍政権で外務政務官、外務副大臣、安全保障担当首相補佐官を歴任した衆議院議員の薗浦健太郎氏は、日中の外交姿勢の違いについて「中国は台湾と歴史問題、日本は尖閣諸島と軍拡を最大の問題だと思っている。意思疎通、すり合わせをすることで対話がスタートする」と分析。同時にサプライチェーン問題についても「複雑でデカップリングができるわけがない。国民感情が良くない中で、50年間の知見が問われている」と述べました。
復旦大学日本研究センター主任の胡令遠氏は過去50年間における冷戦構造の終焉、グローバリゼーションの進展に続いて、現在を「百年未曾有の時代」と位置づけました。この「三つの重要な結節点」を踏まえて「常に政治的な知恵で大きな障害を乗り越えてきた」と述べ、11月17日に初めて対面で実現した中日首脳会談で確認した五つのコンセンサスの具体的な実施を求めました。
公明党参議院会長の西田実仁氏(党選挙対策委員長)は日中共同世論調査の結果を踏まえて「両国ともに、平和を希求し、不戦を求める結果が出ている。いかにして平和の機運を求めていくかが大事だ。パワーを軽視する平和主義は、リアリズムに徹する相手国に付け入る隙を与えてしまうため、軍事バランスを保つための一定の抑止力は必要になる」と指摘。その上で「アジア版OSCEとも言うべき常設の安保協力機構で、常駐の『東アジア平和担当大使』が定期的に接触することが有益ではないか」と提言しました。
*国民理解の進展と、相互信頼の情勢に努めるべき
ここまでの議論を受けて、中国側司会の高洪氏が「激動の世界情勢」において「いかにして国と国の基本的信義を守り、どうやって改善していくべきか」と問題を提起して、さらなる議論の深化を求めました。
元外務大臣などを歴任した川口順子氏は世論調査結果を踏まえて「グッドニュースは、平和を希求する共通基盤があることだ」と指摘。一方で「バッドニュースはないが、チャレンジはある」として「互いに脅威と思っていること」を挙げました。続けて外交政策において「既成概念を破る発想」の重要性に加えて、国民を「根」にたとえながら「根が深く張れば、木は倒れない」と述べ、国民の理解の進展が一層重要になると訴えました。
中国国際交流協会副会長の劉洪才氏(元中国共産党中央対外連絡部副部長、中国人民政治協商会議第13期全国委員会外事委員会副主任)は四つの政治文書に言及して「50年間の成果であり、今後の両国関係をリードするものである」との認識を示しました。同時に「イデオロギーが異なっても、阻害するものはない。この議論に政治家が参加しているけれども、我々は自民党、公明党、民主党とも協議した経験があり、ベスト・プラクティクスだ。民間友好も重要であり、相互信頼の醸成に努めるべきだ」と語りました。
国民民主党代表の玉木雄一郎氏は日中共同世論調査の結果を受けて、「緊張を高める日本の世論を改めることが外交の幅を広げることにつながる」と述べました。具体的には、尖閣諸島付近の中国艦船の領海・接続水域通過問題や、ウイグル自治区人権問題に関する説明が足りないことなどを挙げました。さらに「いかなる衝突を避けるため」にも、両国間のホットラインの構築や国境を越えた若者文化交流の重要性を唱えました。
この点について、中国側司会の高洪氏は「我々は覇権を唱えていない。情報の非対称が大きな原因であり、悪意のある宣伝はミスリーディングされる」と釘を刺しました。
中国グローバル化シンクタンク(CCG)理事長の王輝耀氏は「我々は一衣帯水の隣人である。私は留学生の研究をしており、コロナ禍前は民間交流は1000万人を超えていたし、香港、マカオを含めて10万人超の留学生がいた」と振り返りました。その上で「より良いコロナ対策を講じて人的・文化交流の強化に努めるべきだ」と主張しました。
国交正常化40年時の駐中国大使だった木寺昌人氏(元駐フランス大使)は、二階俊博自民党総務会長(当時)が主導した2015年の「3000人中国訪問団」の成功に触れて、さながら「中日友好大会だった。それまで『中日関係を悪くしたのは日本側だ』と主張していたのが、『中日双方が努力しないといけない』という言い方に変わった」と回想しました。その上で台湾問題に関して「日本が妨げているわけではないのに、なぜ結果が出ていないのか」と疑問を投げ掛けました。同時に「これ以上関係を悪くしない、ということが一つのアイデアではないか」とも述べました。
司会の工藤、高洪両氏が一連の発言を踏まえた意見を求めたところ、劉洪才氏が「日中関係は大きな成果を上げたが、大きく改善することもある。そのためには対話、コミュニケーションを強化することが大切だ。中国には、覇権を唱えると国が衰えるという言葉がある。平和発展の道は共産党規約にも、憲法にも記されている」と理解を求めました。
小倉氏は、日中国交正常化交渉で訪中した田中角栄首相、大平正芳外相が漢詩を詠んだ経験を踏まえて「伝統文化の交流が大切だ」と語りました。
程永華氏も「中日は各レベル・分野でさまざまな対話があったけれども、この3年間で途絶えてしまった」と振り返り、相互利益とアジアの発展のために「対話の復活」「ホットラインの構築」を促しました。
*交流は大事だが、地域の不安を解決するためにどうすればいいか
ここまでの経過を踏まえて、日本側司会の工藤氏が「対話を求めて青少年、文化交流は大事だ」としながらも「建設的な発言ばかりではなく、地域の不安を解決するための対話をどう考えるか」と再び問題を提起しました。
この点に関して、木寺氏は日本の大手スーパーAEONの中国での取り組みなどを例に挙げて「感動を共有した者同士は仲良くなるし、ケンカもしない。その努力をしないと、将来は良くならない」と、実体験を語りました。
高洪氏は、国際的に注視される「台湾海峡問題への懸念は理解している。しかし、こう申し上げたい。台湾とは同胞であり、平和統一するという考えは変わらない」と、政府の見解を繰り返しました。この点について胡令遠氏も「台湾は内政問題で、懸念することはない」と追従。王輝耀氏も先の台湾統一地方選挙で与党・民進党が敗れた結果を踏まえて「台湾の人々が平和を求めている表れである。(2024年の総統選を経て)国民党政権になれば、平和的統一につながる」との見通しを示しました。
一連の議論を踏まえて薗浦氏は「今までの議論を聞いていて、日中のアジェンダの設定が少し違う」と指摘。「すり合わせをすることが重要だと改めて思った」と語りました。
白熱した議論を受け、高洪氏が「東京─北京フォーラム」の役割について「トラック1.5とも位置づけることができ、私たちの努力に掛かっている。より良い目標に向かって汗水を一緒に流しましょう」と述べ、2時間に及んだ議論を結びました。