・周・香港教区長、バチカンと中国の緊張高まる中での北京訪問終える(Crux)

Bishop Stephen Chow Sau-yan of Hong Kong visits Beijing (Vatican News)Hong Kong bishop closes Beijing visit amid rising Sino-Vatican tensions

(2023.4.22 Crux  Senior Correspondent  Elise Ann Allen)

 ローマ –バチカンと中国の緊張が高まる中で、香港の司教として香港の中国返還後初めて北京を訪れていた周守仁・司教は21日、現地の信徒たちに教会と国家の両方を愛するよう促すすとともに、今回の招待者である北京教区長の李山・大司教を香港に招待することを表明して5日間の訪問を終えた。

(Photo Credit: TVB via AP.)

 

*初日に北京最大、最古の聖堂で北京大司教と晩の祈り

 周司教の今回の訪問には、夏志誠・補佐司教と司教総代理の蔡惠民・神父が同行した。事前の声明で「橋渡しをするという香港教区の使命」を強調し、交流を促進する」のが目的と説明していた周司教は、AsiaNewsによると、初日17日に、北京市西城区の同市最大、最古の「救世主教会」で、李大司教と共に、司祭、信徒数十人が参加する中で、晩の祈りを捧げた。

*マテオ・リッチの模範を通して福音宣教の熱意に再び火がともるように

 

 祭壇には、中国で本格的な宣教を始めた、周司教の大先輩のイエズス会士、マテオ・リッチ師の像が置かれ、Fides通信によると、典礼の中で、同師の列福を願って香港教区が作った祈りを捧げ、「リッチ師の傑出した模範を通して、私たちの福音宣教の熱意に再び火がともされ、日々の暮らしの中で愛をもって真理を実践し、他者を、特に中国の兄弟姉妹が、あなたを知り、愛することを学ぶよう導くことができますように」と祈った。周司教たちは北京市内にあるリッチの墓も訪れた。

*カテドラルでのミサで、香港と中国本土の教会の協力強化を訴え

 

  香港のニュース サイト RTHK によると、20日に北京のカテドラル、救世主大聖堂で捧げられたミサの中で、周司教は、神の意志に従って香港の教会と中国本土の教会が協力を強めるよう訴え、「聖霊は一致させる神であり、分断する神ではない」と指摘。「香港と北京の二つの教区はさらなる協力と交流を持ち、互いをもっと知ること、神の信仰の証しをすることを、私たちは希望している」と述べ、教皇のシノドス(共働性)の精神を持って、互いに耳を傾け合う必要があることを強調した。

 ミサ後に大聖堂の外で地元メディアのインタビューを受けた周司教は、「今回の北京訪問で、李大司教と、若者たちの召命を進める方法についての有益な意見交換ができた」と述べるとともに、司祭や信徒が「国と教会の両方を愛することの重要性」を強調し、「私たちは皆、国と教会を愛することを学ばねばなりません。 誰もが自分の国がうまくいくことを望んでいます。 誰も自分の国が悪くなることを望んでいません。 愛国的であることは義務です。 香港あるいは中国本土に住む人は、自分の国を愛すべきです」と述べた。

 

*「訪問で”バチカンと中国の緊張”が溶けた」との見方は否定、北京大司教の香港訪問を招請

 

 その一方で、一部にある「今回の訪問で(バチカンと中国政府・共産党の)緊張が溶けた」とする見方については明確に否定し、「1994年に当時の香港教区長、胡振中・枢機卿が中国本土の三つの都市を訪問している。今回の私の訪問も、そうした過去の伝統を引き継いだものだ」とも語った。そして、緊張状態にある中国・バチカン関係における香港の役割についての質問には、「香港教区は草の根レベルでの対話を促進する架け橋として役立つことができる」と答え、李山・大司教を香港に招待したことを明らかにした。

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 バチカンと中国政府は2018年秋に、中国での司教任命に関する暫定合意を結び、これまでに2度延長されている。中国に共産政権が樹立された後、1950年代から続く、政権・共産党の管理指導に従う教会と、教皇のみに忠誠を誓う、いわゆる”地下教会”との分裂状態を、双方合意のもとに終わらせようというのが、バチカン側の基本的な狙いだったが、暫定合意で中国政府・共産党に教会全体が取り込まれることを懸念し、強く批判していた元香港教区長の陳日君・枢機卿が、昨年5月、「香港の民主化運動を助けた」という理由で香港当局に逮捕、起訴され、罰金刑を課せられた。

 また中国当局が、昨年11月と今月初めの二回にわたって、暫定合意に違反して、一方的に新設した江西教区への司教任命と空席だった上海司教の任命を、バチカンの同意どころが通知もせずに強行。バチカンとの緊張を高めている。

 これまで二回更新された暫定合意の期限までにあと1年余りある。このような状況が続く限り、バチカンが再々更新を考えるかどうか、現在は不明だが、周司教の北京訪問と李大司教に対する香港訪問招請は、少なくとも現時点では、対話への扉を開いたままにしておこうとするバチカンの意図を見ることができるようだ。

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*周司教は、ミサの説教で、”シノドスの道”の歩みを進める教皇メッセージを伝えた(Vatican News)

 なお、Vatican Newsによると、周司教は18日、北京のカトリック神学校を訪問、無原罪懐胎教会(南堂)でミサを捧げた後、何人かの中国政府の代表者と面会した。最終日の21日には、聖ヨセフ教会(東堂)でもミサを捧げた。20日の救世主大聖堂での李大司教と共同司式のミサでは、説教で、教皇フランシスコの言葉を取り上げ、「教会で”シノドスの道”の歩みを進め、教会のすべてのメンバーが互いに耳を傾け合い、旅を導く聖霊に耳を傾けるのを学ぶように、教皇は勧めておられます」と語った。中国の政府・共産党の管理・指導の下にある”地上教会”で、教皇の言葉が紹介されるのは異例だ。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2023年4月23日