中国政府・共産党による新疆ウイグル自治区におけるウイグル人など少数民族への人権侵害行為を告発する「ウイグル人のためのキャンペーン」「ウイグル人権プロジェクト」「世界ウイグル人会議」「共産主義犠牲者記念財団」の国際人権4団体がこのほど、米国のブリンケン国務長官らに対し、同国のウイグル人権法とグローバルマグニツキー法による制裁発動を求めた。
(ウイグル人権法は、2020年6月に米大統領の署名で発効。ウイグル人などの少数民族に対する「恣意(しい)的な拘束、拷問、ハラスメント」に責任を負うべき中国当局者を特定し、これらの中国当局者について、米国内に保有する資産凍結と米国への渡航禁止を義務付ける内容。マグニツキー法は2012年に制定された法律で、世界全体を適用範囲とし、米政府が人権侵害に関わった個人・組織を特定、米国内の資産を凍結するとともに、入国を禁止するなどの制裁措置をとることができる。同様の法律が欧州など34か国でも導入されている)
中国新疆ウイグル自治区で少数民族のウイグル族らが「再教育施設」などに多数収容されている問題で、徹底的な取り締まりを指示する共産党幹部の発言記録や収容施設の内部写真、2万人以上の収容者リストや顔写真や公式の極秘文書など大量の内部資料が流出、その内容を米国のNPO「共産主義犠牲者記念財団」(VOC)が今年5月、英国営BBCや仏ルモンド紙など世界の主要メディアを通し明らかにしている。
「新疆警察ファイル (xinjiangpolicefiles.org)」としてインターネット上で現在も公開されているその内容によると、党幹部の発言記録には、新疆ウイグル自治区トップの陳全国・党委員会書記(当時)が2017年5月の演説で「海外からの帰国者は片っ端から捕らえろ」「拘束者が数歩でも逃げれば射殺せよ」と指示したことや、習近平総書記ら党中央の関与を示す公安トップの発言もある。
また機密文書の中には、中共公安部長の趙克志氏が2018年に行った内部演説に関する内容もあり、趙氏は演説の中で、新疆南部だけで200万人以上が「過激派宗教思想の浸透に深刻な影響を受けた」と警告。また、中国共産党中央の指導者が新疆ウイグル自治区の強制収容所の収容能力を増強するよう直接命じたことに言及している。
収容者リストには、カシュガル地区コナシェヘル県のウイグル族ら2万人以上の身分証番号や収容理由が記されている。VOCによると、同県で2018年頃、成人全体の12.1%以上が収容されていた。10代から70代までの収容者2800人超の顔写真のほか、当局者が収容者に手錠や覆面をつけて尋問したり、制圧訓練を行ったりする施設内部の写真もあり、VOCは「罪なきウイグル人らが犯罪者のように扱われていることを証明するものだ」としている。
ウイグル人たちに対するジェノサイドともいえる大規模な民族粛清行為が、このような膨大な内部流出資料によって、さらに明白に裏付けられたとする「ウイグル人のためのキャンペーン(CfU)」「ウイグル人権プロジェクト(UHRP)」「世界ウイグル会議(WUC)」「共産主義犠牲者記念財団(VOC)」はこのほど、ブリンケン国務長官はじめ米国の政府高官に書簡を送り、ウイグル人権法に基づき、ウイグル人などの少数民族に対する「恣意(しい)的な拘束、拷問、ハラスメント」に責任を負うべき中国当局者を特定し、米国内に保有する資産凍結と米国への渡航禁止の措置を取るよう要請した。
書簡は、「新疆警察ファイル」によって現在開示されている新しい証拠を挙げ、「中国政府の趙浩志・公安部長、中央新疆作業調整小組の王楊・組長、中国の政治法務委員会の郭盛君・事務局長を含む中国政府の関係高官」を制裁の対象とするよう求め、こうした人々に厳しい制裁を課すことによって、「中国がジェノサイド条約に違反して残虐行為を犯すのを、世界が傍観しない、という強力なメッセージを送ることができる」と強調している。
UHRPの代表者は、Bitter Winterの取材に対して、「すべての政府は、ジェノサイド条約に基づく義務を負っています。彼らにできる最低限のことは、何百万人もの無実の人々に対して、故意に残虐行為を働いている加害者を制裁することだ」とし、「欧州各国政府も、何もせずに、『国際社会』に責任を転嫁することはできない」と述べている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)