・「信教の自由が世界中で”集中砲火”に遭っている」-ローマで世界専門家会議(Crux)

(2022.7.21  Crux  Rome Bureau Chief  Inés San Martín)

ローマ発-米ノートルダム大学主催の信教の自由をテーマとする会議が20日から22日にかけて、ローマの教皇庁立グレゴリアン大学で開かれ、世界中で信教の自由が脅かされる深刻な事態となっていることが多くの出席者から報告された。

  ワシントンに本部があるウィルソン・センターのフェロー、サマ・ノーキスト氏は「宗教に対する暴力は過去10年間で歴史的なレベルにまで上昇し、世界のほぼすべての宗教団体に影響を及ぼしている」とし、

 「キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒、仏教徒、ヤジディス、バハイ教徒を含む、ほぼすべての宗教の信徒たちは、差別、嫌がらせを受け、国家および非国家主体による迫害、ならびに思想運動による抑圧に直面している」と訴えた。

 自身もウイグル出身であるターケル氏はさらに、「習近平ではなくアッラーを崇拝している」ことが犯罪とされ、100万人以上のウイグル人が強制収容所に入れられ、拷問、レイプ、強制労働、殺害などの犠牲者となっている、と指摘。「中国共産党は、宗教が党のイデオロギーと個人崇拝に代わるものとなることに脅威を感じ、党とその指導者のみを崇拝することを狙っている。党にとっての”最悪の悪夢”は、人権と人間の尊厳を重んじる共同体。信仰の厚い宗教団体、組織は、中国政府・共産党の独裁が信教の自由と整合性をもたないことから、彼らにとって脅威なのです」。

*南アジア全体で進む非イスラム教徒に対する改宗強制

 会議では、信教の自由のための世界国会議員会議のメンバー、パキスタンのファラフナーズ・イスパハニ氏も出席し、宗教的および世俗的な人権擁護者の間に国や地域ごとの、そして世界的な協力体制を構築することが「最も重要」と訴えた。彼女の国では、特に非イスラム教徒である少数者にとって、イスラム法の基づく法規制が、信教の自由を脅かし続けており、「ヒンズー教徒、キリスト教徒、シーク教徒などの宗教的少数派のイスラム教への強制改宗の動きが放置されている」と指摘。

 さらに、パキスタンを含む南アジア地域全体で、公立、私立学校の教育内容を通じて、イスラム教の子供たちに他宗教の子供たちに対する憎悪または無関心を強めていることを非難。また、「反ユダヤ主義をあおる陰謀説は至る所で振り撒かれ、聖職者や政治家によって広められている。非武装の宗教的少数者の団体のメンバーに対する暴力や、礼拝所の破壊を狙った攻撃も、パキスタンの歴史のほとんどを通じて行われています」と訴えた。

 そして、「人々は信教の自由について認識する必要があり、他の人権と同じようにそれを支持せねばなりません。他宗教の人が拷問に苦しんでいることに嫌悪感をもたないように、人々は自分たちに信徒の権利だけを気にすることがあってはならない。信教の自由の原則に注意を払うべきです」と述べた。

*それでも私たちは信教の自由、良心の自由を求め、戦い続ける

 ノートルダム法科大学院の学部長で、「ノートルダム宗教の自由運動」の創設者であるマーカス・コール氏は、「私たちは、世界史上、最も強力な帝国であった首都で、会議を開いている。その帝国の廃墟は私たちの周りにある。マタイ福音書で、イエスは、エルサレムの神殿を指さして、『ここに積み上がった石は、一つ残らず崩れ落ちる』と預言された。ここローマにいて、偉大なローマ帝国が、信仰によって〝征服”されたこと、イエスの言葉の真実を明かしできる」と述べた。

 「ローマ人は初めは、信仰を笑いものにしたが、結局、笑いは止まった。今、信教の自由の敵たちは、私たちを笑うだろうが、私たちは退くことがない。良心の自由と信教の自由を求めて、すべての人が喜んで受け入れてくれるまで戦い続ける」と訴えた。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2022年7月22日