(2020.11.6 カトリック・あい)
バチカンで、数億ユーロにのぼる世界の信徒の献金や資産運用などで得た資金の使い道を巡る疑惑解明の捜査が進んでいるが、これと関連して、その管理・運用、監督権が国務省から他の部署に移管されることになった。
これまで国務省はバチカンの役所の中で圧倒的な権力を握り、そのトップである国務長官は、教皇に次ぐ権威を持つとされてきたが、多額の資金の管理運用を巡る失態、さらに今回の権限移譲で、その権威は大きく揺らぐことになりそうだ。
(2020.11.5 Vatican News)
バチカンのマッテオ・ブルーニ報道官が5日発表したところによると、教皇フランシスコは、昨年8月に書簡で国務長官に示した計画を実施する委員会を設立し、今後3か月以内に、これまで 国務省が担当して来た資金の管理運用を聖座財産管理局に、監督・規制業務を財務事務局に移管することを承認した。
報道官によると、教皇は、この決定を4日に招集したバチカンの関係幹部による会議で説明した。会議にはピエトロ・パロリン国務長官のほか、エドガル・ペーニャ・パラ総務局長、。フェルナンド・ベルゲス・バチカン市国代表、ヌンツィオ・ガランティーノ聖座財産管理局長、フアン・アントニオ・ゲレーロー・アルベス財務事務局長が出席した。
会議には、昨年8月に教皇がバチカンの資金管理・運用の権限を国務省から移すことを命じたパロリン国務長官あての書簡も配布された。教皇は、その中で「バチカン改革の一環として、私は経済・金融活動のより良い組織化を可能にする対策について、福音的見地から考え、祈りました」とし、「業務が重なり合い、ばらばらになり、不必要で有害な重複がなされることを避けるため」に、経済・金融関係部署の使命を明確に定義することが「極めて重要」と強調している。
また、国務省は「間違いなく、教皇の活動を最も身近に直接支える部署」と評価しつつ、バチカンの他の部署にすでに割り当てられている機能を国務省が果たそうとするのは不必要、あるいは適切でないように思われる」とし、「補完性の原則は経済・金融において、国務省の役割についての偏見を持つことなく、適用されることが望ましい」との判断を示している。
このような判断から、「国務省は、すべての金融資金と不動産資産の管理・運用を聖座財産管理局に移管し、同管理局はいかなる場合も、現在与えられている目的を堅持するよう」に指示。さらに、当面の問題として、「(注:現在、バチカンの資金運用に関して疑惑の中心になっている)ロンドンでの不動産投資と Centurion fund(注:英国軍と関わりのある基金?)への投資」を挙げ、「特に注意を払う必要があり、可及的速やかに資金を撤収するか、風評被害を被らないように処理しなければならない」と具体的に言及している。
さらに、教皇は書簡で、「これまで国務省によって管理されてきたすべての資金は、聖座の連結予算に組み込まれる」こと、経済・財政に関して、国務省は「通常の仕組みを通して承認された予算によって運営され、機密事項とされるものを除いて、この目的で設置された委員会によって承認を受けた手続きに従うものとする」と規定。
「バチカンのすべての部署の経済・財政に関わる管理・監督を財務事務局の責任」と定め、国務省は、この面で、いかなる責任も負わず、「バチカンの資産について執行・管理をする必要が無くなることから、関連部門の見直し、存続の必要性について検討することを念頭に置くように」と求めている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)