・イラク訪問3日目:エルビルのハリリ・スタジアムで主日ミサ「イラクの教会が生きていることを確認」

(2021.3.7 Vatican News Christopher Wells) 

  教皇フランシスコは7日夕、イラク訪問の締めくくりに、エルビルのフランソ・ハリリ・スタジアムを埋めた信徒たちと共に、主日のミサを捧げられた。

 新型コロナウイルス感染予防のため、スタジアムには入場規制が行われたが、聖職者や信徒たち約1万人がミサに参加したほか、ラジオ、テレビ、インターネットなどを通じで、さらに数万人が”参加”した。

 ミサの説教で教皇はまず、「今日、私はイラクの教会が生きていること、そして、キリストが、その中に、聖なる深い信仰を持った人たちの中に、生きて、働いておられることを、実感しています」とされ、説教に先立って読まれた聖パウロのコリントの信徒への手紙にある「神の力、神の知恵であるキリスト」(1・1章22₋25節)を取り上げて、「イエスは、赦しを与え、憐れみを示すことによって、何よりもその力と知恵を明らかにしました」と述べられた。

 そして、「私たちには、自分が強く、賢いことを他の人に示さなければならない、という考えの罠に陥ることがよくあります。『戦争と暴力の傷』に苦しんでいる私たちは、『人間の力、人間の知恵』で対応する誘惑にかられます。しかし真実は、『私たち全員が、十字架上のイエスによって明らかにされた神の力と知恵を必要としている』ということです」とされた。

 

*私たちの心の神殿を清める

 次に教皇は、ミサで読まれたヨハネ福音書のイエスが神殿から商人を追い出された箇所(2章13-25節)に言及され、「父なる神が石で造られた神殿だけでなく、何よりも私たちの心の神殿を清めるために、イエスを遣わされたのです。私たちの心は、『偽善的で不誠実な行為から心が汚される偽り』『人を欺くような安全』『権力とお金の邪悪な誘惑』から清められねばなならない… しかし、私たち自身の努力では、清めることはできません。イエス・キリストだけが、悪の業に陥った私たちを清めることができるのです… イエスは、私たちの邪悪さを打ち負かす力をお持ちです。私たちの病を癒し、私たちの心の神殿を作り直されます」と語られた。

*キリストの王国のしるし

 続けて教皇は、「イエスは私たちの罪を清めるだけでなく、彼自身の力と知恵の一部を私たちに与えてくださいます… 助けを必要としている兄弟姉妹の世話をする開かれた教会と社会を築くために、イエスは、家庭、信仰、共同体についての偏狭で不和を起こすような思いから、私たちを解放してくださいます」と述べ、また、「イエスは、復讐をしようとする誘惑に抵抗する力を私たちに与え、改宗を勧める者ではなく、宣教する使徒として、人生を変える福音の力を証しする男女として、私たちを送り出されるのです」と説かれた。

 さらに、「イエスは、3日後に神殿を建てることを約束された時、ご自分の体の復活だけでなく、教会についても、話しておられます… 主は私たちに約束なさいますー復活の力によって、私たちと私たちの共同体を、不正義、分裂、憎しみによってもたらされた廃墟からよみがえらせることができる、ということを」と語られ、「イエスは、この国の、すべての傷に塗油し、辛い記憶を癒やし、平和と友愛にあふれた未来を奮い立たせることを望まれています」と励まされた。

 

*イラクのキリスト教徒の信仰を確認

 教皇は、説教の締めくくりに、イラクのキリスト教共同体に目を向けられ、「イラクの教会は、神の慈しみによって、特に最も必要としている人たちにキリストの憐れみと赦しを広く注ぐことで、十字架の素晴らしい知恵を宣言されています」とされ、「これは、私があなたがたのところに巡礼者として訪問し、あなたがたに感謝し、あなたがたの信仰と証しを確認しようとした理由の一つでした」と述べられた。

*聖母マリア像を祝福

 そして、ミサの終わりに、教皇はイスラム過激派によって破壊され、後に修復された聖母マリアの像を祝福された。アルビールの Radio Mariam のディレクターであるサミール・シアー神父は、「この像はキリスト教徒が住むカラムレス村から運ばれて来ました。祝福をいただいた後、ニネベ平原に戻されます。地元のキリスト教徒が希望しているのは、聖母が、カラムレスの子どもたちを抱きしめるためにすぐにお戻りになること」としていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年3月8日