長崎の被爆少年に自らの姿を重ねる・・教皇のメッセージ・カード(CRUX)

09E36255-F46A-4A52-977E-F09C1D6ACE9D An image by American photographer Joseph Roger O’Donnell that Pope Francis is circulating during the 2017 holidays, under the heading “The fruits of war.” (Credit: Vatican Press Office.)

 だから、教皇が、新年の休暇に向けて、裏面に「戦争がもたらしたもの」とご自身がサインした写真入りカードを印刷し、配布してくれるよう頼んだとしても、別に驚くことではない。

 このカードの表面には、米国の写真家ジョセフ・ロジャー・オドネルが原爆が広島と長崎に投下された後、海兵隊員として四年間、日本に勤務した時に撮影した写真が印刷されている。被爆直後の長崎で、亡くなった弟をおぶった日本人の少年が火葬場の前に立ち尽くしている写真だ。

 説明書きには、「この少年の悲しみを、ただ、唇をかみしめた姿が教えています。唇からは血がにじみでているのです」とある。

 また、この写真の少年の姿が、北朝鮮が核兵器を使用すると脅し、トランプ米大統領が、そのようなことをすれば米国は「炎と怒り」で報復する、とやり返して、世界が核戦争に巻き込まれる瀬戸際にたつ今、教皇のカードとして配られることにも意味がある。

 この姿は、今日の「第三次世界大戦」として批判し続けている教皇フランシスコの姿と重なる。教皇はまた、戦いの矢面に立たされる少年兵を含む、紛争に苦しめられている子供たちの不条理について声を上げている。

 2017年11月、バチカンが主催して、ノーベル平和賞受賞者などを集めた国際核軍縮会議を開いた。その会議で、教皇フランシスコは「いかなる形の核の使用も、人類と環境に破滅的な影響を与える」と警告している。教皇はまた、「軍事力や脅し、武器の蓄積に、国際関係が囚われるべきではありません」とし、「核兵器は誤った安全保障の考え以外に何も作り出さない。それを使用する脅しは、保持することと同様、きっぱりと断罪すべきです」と訴えている。

 この新年あいさつのカードで、教皇は以上のような主張にさらなる主張を付け加えることはしていない。だが、クリスマス・新年休暇の時期にこのような具体的な意味をもつ写真入りのカードを配ることは、このカードが伝えるメッセージが時宜を得たものだ、と教皇がお考えになっている証左だ、と言うことができるだろう。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

 

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2017年12月31日