14日の結審に際して、プロフィチの弁護士は、プロフィチが病院の運営資金を得るためのパーティーなどに枢機卿の私宅を仕えるようにするのが、改装費を運営基金から支出した動機であり、罪にはならない、と改めて主張した。プロフィチ本人は公判で、基金に資金が還元されたなかったのは、彼の後任の理事長が、枢機卿の私宅を活用しないように資金獲得の方法を変えたためだ、と説明していたが、検察側は、プロフィチの行為の動機を争うことをしなかった。
肝心の枢機卿私宅の改装工事を請け負ったバンデラの建設会社は経営破たんし、42万2000ユーロは英国にあるバンデラの別会社に送金されたことも明らかになっているが、この問題についてバチカンの金融監督担当者は公判で、業務の機密保護を理由に詳細を明らかにすることを避けた。また同病院の前財務責任者のスピナは公判で、バンデラに資金を返すように求めたが、バンデラは経営破たんで資金がないことを理由に、返済を拒んでいる、としていた。
スピナの弁護を担当した高名な故オッタビアーニ枢機卿の甥の息子に当たるアルフレッド・オッタビアーニは最終弁論で「スピナはこの事件の犠牲者」だと無罪を主張。また、ベルトーネ枢機卿はすでに83歳の高齢で、イタリアの男性の平均寿命に達しており、私宅の改装費に見合う利用期間は見込めない、とも主張した。
検察側は論告求刑で、プロフィチの行為は「教皇がスポンサーになっている病院は、収益を目的とする企業ではなく、銀行に投資する企業のような投資をすることはできないから、公的資金の流用は違法なだけでなく、犯罪である」として、禁固3年、バチカンの公職に就くことの永久禁止を求刑していた。
また、この裁判は、バチカンの検察官に、病院とバンデラの改装資金名目の資金のやり取りへのベルトーネ枢機卿の関与についての情報を与えた可能性があったが、枢機卿を罪に問う兆候はなく、バチカン関係者の大半もそうしたことはあり得なかった、と考えている。
(The Associated Press also contributed to this report.)
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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