☩教皇カナダ訪問:「キリストの福音とは相容れない破滅的な過ち」先住民に赦しを請う

 カナダを訪問されている教皇フランシスコは25日、エドモントンから70km南方のマスクワシスを訪れ、今回の同国訪問の主な目的である先住民の人々との出会いを始められた。

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 同国政府は1863年から1998年にかけ、先住民の「同化政策」の一環として、先住民の子弟、延べ15万人以上を家族から引き離し、各地に設けた寄宿学校に強制収容。管理・運営をカトリック教会などキリスト教の組織に任せたが、各校で様々な差別、虐待が繰り返されが。閉鎖後の跡地から最近になって無名のまま埋められた数多くの遺体が次々と発見され、大きな政治・社会問題となり、カナダ政府は2008年に正式に先住民に謝罪している。

 マスクワシスのエルミネスキン地区には、問題の寄宿学校の中でも最大規模の「エルミネスキン・レジデンシャル・スクール」が置かれていたが、「真理と和解のための国立センター」の調査によると、多くの先住民の子弟が過密状態の中で病気になり、命を落とした。

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 エルミネスキン地区の先住民の墓地に車椅子で向かわれた教皇は、立ち並ぶ木の十字架の墓標の間で、沈黙のうちに祈りを捧げられ、「聖母の七つの御悲しみ教会」では、各地の寄宿学校で亡くなった子どもたちの名が記された長い横断幕に接吻し、祈られた。

 教皇は途中、先住民、ファースト・ネイション、メティス、イヌイットの代表者らに迎えられつつ、寄宿学校の子どもたちを思い起こすためのテント形のモニュメントの前で車椅子を止め、ここでも頭を垂れて祈られた。

 次いで、ベア・パーク・パウワウ・グラウンドで、トルドー首相やサイモン・カナダ総督らの参加のもと、カナダ全土から集まった先住民の様々な共同体を代表する人々とお会いになり、「今日、私は、古い記憶と共にいまだ傷が開いたままの、この地にやって来ました。これは『悔悛の巡礼』の最初の一歩です。私が今、実際に皆さんの傍にいるのは、皆さんに赦しを請い、私自身の深い悲しみをお伝えするためです」と語られた。

 そして、「多くのキリスト教徒たちが様々な形で、先住民の人々を抑圧する権力者たちの植民地主義的な心的傾向を支持したこと、中でもカトリック教会や修道会の聖職者たちが、当時の政府による先住民文化の破壊と、寄宿学校制度を頂点とする強制的な同化政策に協力したこと」に対し、赦しを願った。

 さらに「たとえキリスト教的慈愛や子どもたちに対する模範的な献身が少なからずあったとしても、寄宿学校政策がもたらしたものは全体として、あまりにも悲惨であり、キリスト教信仰から見て、イエス・キリストの福音とは相容れない破滅的な過ちでした」と謝罪。「謝罪は終着点ではなく、出発点に過ぎません」とされ、「赦しを請い、その被害を補おうとしても、決して十分ではないことは理解しています」とも語られた。

 また、「未来を見つめる時、このような状況を繰り返さないだけでなく、完全になくすことを可能にする文化を築くために尽力することは、決して無駄ではありません」とも話され、「過去の真実の解明と、寄宿学校の元生徒たちが受けた精神的な打撃を克服するためのプロセス」の必要を訴えられた。

 最後に教皇は、カナダのキリスト教信徒と社会に対して、「先住民の人々のアイデンティティーと経験を受け入れ、尊重することで成長し、皆で共に歩みながら、それを知り、認める道を見出すように」と促され、この数日間のカナダ巡礼ですべての場所を訪れることはできないが、「この悔悛の巡礼で私が語る言葉は、先住民のすべての人・共同体に向けられ、心から彼らを抱擁するもの。癒しと和解の実現には、私たちの力だけでは足りません。神の恵みが必要です。神こそが私たちの手を取り、私たちを共に歩ませてくださるのです」と強調された。

(編集「カトリック・あい」)

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2022年7月26日