*バチカンで巨額不動産不正取引の裁判難航、長期化も(VN)

(2021.11.18 Vatican News Salvatore Cernuzio)

 バチカンがロンドンの高級住宅街に保有する不動産の不正取引をめぐって元列聖省長官など6人が被告となったバチカンでの裁判で18日、第四回公判が開かれたものの、手続き上の問題で検察側、弁護側が対立して中断。12月1日に再開されることになった。

 バチカン美術館の多目的室を使用して開かれた第四回公判では、ジュゼッペ・ピグナトーネ裁判長が冒頭、公判が円滑に進むよう希望を述べた。しかし、弁護側は、今月3日に検察側が提出した6人の有罪を立証する資料に削除された箇所があるなど起訴の有効性に瑕疵があるとして、裁判の無効を主張。これに対して検察側は、削除された箇所は、現在新たに進めている捜査に支障がある部分であり、起訴の有効性には全く問題がない、と反論。1時間の休憩をはさんで2時間40分にわたって行われた議論は平行線をたどり、決着しなかった。

 

*出廷した被告は元列聖長官のみ

 この日の公判には、6人の被告の中から元列聖省長官のベッチウ枢機卿一人が出席した。公判では、裁判所の7月と10月の二回にわたる命令を受けて検察側が今月になって提出した追加の起訴資料が問題となった。

 この資料は、115時間以上にわたる関係者の音声が記録されたDVD53枚だったが、弁護側は「膨大な量の資料を検討する時間が明らかに不足している」とするとともに、「DVDの記録から、『捜査の都合』を理由に、かなりの部分が削除されている」と指摘。「被告たちが自身を守ることができるように、完全な資料が利用できることを希望する」と主張したが、検察側は、「捜査に支障がある」として削除部分の開示を拒否。

*検察が教皇を聴取?

 また弁護側は、「検察当局は、教皇フランシスコにも「前代未聞」の面接をし、事情聴取を行ったとみられるが、その記録もない」とも指摘したが、検察側は「教皇に面接した事実はない」と突っぱねた。

 また、弁護側の「検察側が提出した資料を無効」する主張に対して、検察側は、115時間以上のDVD録画について、「語られたことを忠実に記録したものであり、不当な改ざんを行なったかのように示唆する発言は恥ずべきこと」と反論した。

 今回の公判の終わりに、ピグナトーネ裁判長は、バチカンの法廷は、「今回提起された『複雑な問題』に備える」権利を留保すると表明。また、「弁護側が、完全な理解に達するまで、訴訟手続きに関して出された諸問題の検討を開始することはない」とも述べた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年11月19日