・ 核兵器禁止条約発効「核兵器は正当化されない武器となった」とバチカン外務局長

2020.08.04 - Hiroshima Bomba atomica -armi - Nucleare

(2021.1.21 バチカン放送)

  核兵器禁止条約が22日発効したが、バチカン国務省のリチャード・ギャラガー外務局長(大司教)は前日の21日、次のように語った。

  教皇フランシスコは2019年11月に日本を訪問した際、広島の平和記念公園で、「原子力の戦争目的の使用は倫理に反すると同様に、核兵器の保有も倫理に反する」と語られ、核のない世界の実現を強く訴えられたが、その11か月後の、昨年10月に、核兵器禁止条約の批准国が50ヵ国に達し、22日から発効することになった。

 ギャラガー大司教は「この条約以前には、核兵器を明確に、法的拘束力をもって禁止する国際条約はなかった」としたうえで、条約発効によって「すでに禁じられている化学兵器や生物兵器など他の大量破壊兵器のカテゴリーの中に核兵器を明瞭な形で加えることになり、核兵器は、恒常的にその使用と保有を非難され、正当化されない武器の中に入りました。これが、バチカンが条約発効に取り組んだ理由の一つです」と説明。

 また、「バチカンは条約の起草作業にも積極的に参加しましたが、条項の多くは、直接・間接的に人間を中心に据え、人道的な規範、平和条約との密接な関係を思い起こさせる内容になっていまる」と述べた。

 そして、「多国間主義に対する圧力に抵抗し、疑念と不信の力学を克服するためには、政府関係者・非政府関係者による、皆の継続した取り組みが必要」とし、条約で完全に認められたもう一つの重要な点は、「平和を学び、核兵器の危険と現在と未来にわたるその影響など、様々な観点から軍縮への意識を向上することの大切さです… 世界の人々の教育と意識向上も、核兵器のない世界を形作り、核兵器を拒否する文化、命・平和・癒しの文化を推進する上で重要です」と指摘した。

 「威嚇」という観点から、今日の世界が直面する新型コロナウイルスによる大感染に触れた大司教は、「コロナ危機は、私たちの安全に対する概念を考え直させる契機となっています。世界の平和と安全は、相互破壊や全滅への脅威や、権力バランスや力の法則を基礎とするものであってはなりません。それは対話・連帯・正義・人間の統合的発展、基本的人権の尊重、環境保護、教育や医療システムの向上、人々の信頼構築の上に築かれる必要があります」と強調。

 このような見地から、核兵器の「威嚇」も越えていかねばならない、と述べ、「核兵器のない世界の実現には、教皇フランシスコの回勅『ラウダート・シ』が説くような、統合的エコロジーにおける『すべては互いにつながっている』という意識に基づく構想が欠かせず、核兵器禁止条約はこうした方向性を持つもの」と語った。そして、その構想は、「見えない特殊な利害の保護ではなく、共通善をゆるぎない目的とする対話を通してのみ、築くことができるでしょう」と将来への展望を述べた。

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2021年1月22日