(2022.11.22 Vatican News Sr Bernadette Reis, fsp)
教皇フランシスコは22日、カトリックの国際支援組織の連合体「カリタス・インターナショナル」(以下、「カリタス」と略称)のCommissario straordinario(暫定管理者)にピア・フランチェスコ・ピネリ博士を任命する布告を出された。同時に、個人的、霊的支援者としてマリア・アンパロ・アロンソ・エスコバル博士と P. マヌエル・モルジャン神父(イエズス会士)を指名された。
同時に、現在の会長、副会長、事務総長、財務責任者、そして教会補助者は辞任することとし、うち、これまでカリタス会長を務めてきたアントニオ・タグレ枢機卿は、ピネッリ博士が暫定管理者として教皇から託された任務を補佐する形で、来春の総会までカリタスに残留する。
また、布告で、教皇は、「カリタスは、最も貧しく、最も助けを必要としている人々への教皇自身の務めを個人的に支援し、人道的危機に対処し、福音の光とカトリック教会の教えのもとに、世界に慈善を広めることに協力すること」としている。
*暫定管理者の任命は「規範と手続きの見直し、来週の総会での選挙準備」
また、暫定管理者の任命については、「カリタスの規範と手続きを見直し、次のカリタスの総会に向けて設定された選挙に必要な準備をするため」と説明している。
そして暫定管理者に就任するピネリ氏については、バチカンのプレス向け声明で、「組織のコンサルタントおよび管理者として著名な人物」であり、「(職務遂行にあたっては)技術的な手法よりも人間的な手法をとる人物」で、イグナチオの霊性を背景を持つ彼のボランティア活動には、「麻薬中毒者の回復、開発協力、宣教活動の支援、教理教育」が含まれている。また、職業面では、「さまざまな分野でセクターでの 33 年間の勤務」があり、それには「大規模エネルギー企業の 最高経営責任者、会長」としての 10 年間が含まれる。
コンサルタントとしての専門知識は、宗教、世俗、文化分野にまたがり、文化および舞台芸術組織、イエズス会教育財団、そしてMagis、Treccani などの企業の再建管理者を務めてきた。また、バチカン総合人間開発省の移民・難民部門の活動評価のための委員会の委員を務めた。 エスコバル博士は大学卒業後、これまで28 年間、さまざまなカリタスの組織で働いてきた。モルジャン神父は、母国ポルトガルだけでなく、カーボベルデ、ゴアで司牧、霊的活動を経験し、教皇から「慈悲の宣教師」に任命されている。
声明は同時に、「カリタスのメンバーである世界各地域、各国の組織の機能」は、今回の措置によって影響を受けることはなく、「むしろ、奉仕活動の強化に役立つ」と強調している。
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「カリタス・インターナショナル」は、世界中の 200 以上の国と地域で活動している 162 のカトリック救援、開発、社会奉仕組織の連合体です。その本部は聖座に組み込まれ、バチカンの総合人間開発省によって監督されている。
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(解説)教皇が”リア王の決断”ーカリタスの会長以下幹部更迭、直接管理下に置く決定
(2022.11. 23 Crux Editor John L. Allen Jr.)
ローマ発 – 1960 年代後半から 1970 年代にかけて、聖パウロ 6 世を中傷する人々は、彼が困難な判断を前に苦悩する姿をシェイクスピアの四大悲劇の主人公の一人にたとえて、「ハムレット教皇」と呼んでいた。教皇に対するそうした見方が公平であるかどうかにかかわらず、教皇が亡くなられた時の記事の冒頭の段落で取り上げられるほど”定着”していた。
そして、なぜ教皇フランシスコが、行動することを躊躇しない指導者ー「リア教皇」と呼ばれていないのか、不思議に思うことがあった。彼の判断は、少しばかり無謀、あるいは衝動的かもしれないが、決して優柔不断ではなかったらだ。
そして、教皇フランシスコの最新の「リア王的瞬間」は22日に起きた。カトリックの国際援助組織「カリタス・インターナショナル」(以下「カリタス」と略称)をバチカンの管理下に置くことを、バチカン広報を通じて発表したのだ。会長以下の幹部全員を退任させ、来年5月に予定されているカリタス・インターナショナルの総会までの間の管理運営を担当する暫定執行者として、企業再建など組織改革に関するイタリア人コンサルタントのピア・フランチェスコ・ピネリを任命した。
*カリタス関係者には直前まで知らされず…「金銭や性の問題ではない」
この決定は、新型コロナの世界的大感染が始まって以来、久しぶりにローマに集まったカリタスの職員の大部分にとって大きな驚きだった。22日の朝に行われた世界各地のカリタスのリーダーと記者会見では、その直後に出されたカリタスに関する教皇令は話題にも上らなかったのだ。
本部をバチカンにあるカリタスは、1897年に設立され、現在、日本を含めて200 か国以上で活動する地域カリタスの連合体だ。 2020 年の会計報告では、収入は 520 万ドル、支出は 450 万ドルとされているが、これは単なる本部予算であり、世界各地の地域組織の収入と支出は含まれていない。
その組織を突然、自らの管理下に置くという教皇の決定の理由について、簡単な説明しかバチカンからは出されていないが、まず、「金銭的、あるいは性的な不正の証拠はない」ということ。(2022 年のカトリック教会においては、幹部の誰かが解雇された場合、「金銭や性の問題ではない」と声を大きくして宣言しないと、それが理由と見なさてしまうからだ。)それと、内部監査で、管理の「本当の欠陥」が明らかになり、「チーム精神とスタッフの士気を損なった」こと、を挙げている。
・実質トップの事務総長の威圧的管理運営に疑惑? 教皇の”同盟者”、タグレ会長も辞任で打撃?
多くのバチカン専門家は、問題の少なくとも一部は、解雇されたカリタスの事実上のトップであるアロイシウス・ ジョン事務総長ーフランス市民権を持つというインド人の一般信徒ーにあるとみている。
ジョンは、トップ職の他の候補者が脱落した後、2019 年に権力の座に就いた。威圧的な振る舞いと管理運営における疑惑がうわさされていた。バチカンの公式メディアのVatican News は22日、ルイス・アントニオ・タグレ枢機卿がカリタスの代表者たちに声を出して決定を伝えた際、拍手で歓迎された、と報じている。
タグレ枢機卿については、この激動の結果として何らかの打撃を受ける可能性がある。彼は 2015 年にカリタスの会長に選ばれ、2019 年に再選されている。今回の決定で、彼も会長の地位を失ったが、来年春の総会までの期間、世界のカリタスのメンバー間の連絡担当としての役割を続けることになった。
枢機卿は、教皇フランシスコの重要な”同盟者”であり、忠誠を誓った人物だったから、教皇が、彼が”船”を下りるのをすすんで認めたということは、教皇自身がカリタスをめぐる危機をどれほど深刻に受け止めているかの一つの尺度になるだろう。
*以前の事務総長も問題を起し、11年前に国務省から再任を阻止されていた
もっともカリタスの事実上のトップである事務総長の交代を強制したのは、最近で見ても、今回が初めてではない。11 年前、当時のバチカンの国務長官、タルシチオ・ベルトーネ枢機卿は、イギリス人の一般信徒であるレスリー・ アン・ ナイト氏の事務総長再任を阻止した。避妊措置など教会の教えに反する活動を推進する組織と連携してはならないというベネディクト16世教皇の方針への配慮を、彼女が欠いたという理由からだった。
この時の最大の”敗者”は、現在、教皇フランシスコの内輪の集団の中心人物になっているホンジュラスのオスカー・ロドリゲス・マラディアガ枢機卿だ。彼は、ナイト氏の代理として、同僚のサレジオ会士であるベルト―ネ国務長官に、彼女の再任を嘆願したが、役に立たなかった。
そして、ナイト氏をめぐる問題発生を契機に、バチカンでは、カリタスの活動に関するバチカンの監視役としての役割を明確にする一連の新しい法令が制定され、とくに国務長官の権限が強化された。
今日のカリタスをめぐる問題は、教義よりも管理に関するもののように見えるが、ベネディクトと現在のフランシスコの下でのカリタスへの対応に共通しているのは、どちらも、カリタスの職員はバチカンの職員とは非常に異なるサークルの中で動き、カリタスの日々の活動は自律的な意識をもってなされているようであるにもかかわらず、教皇の権威のもとに置かれている、ということだ。 最近の歴史は私たちにこう教えているー「歴代の教皇は、どのような手を使ってでも、その権威を定着させる方法を見つけるのだ」。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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