Pope Francis speaks with Reuters Senior Correspondent Philip Pullella
(2022.7.4 Crux Senior Correspondent Elise Ann Allen)
ローマ発— 教皇フランシスコが、国際ニュース通信社ロイターの新たな幅広いインタビューに応じ、ご自身の健康状態や辞任のうわさ、ロシアのウクライナ軍事侵略、最近の米国での妊娠中絶を巡る最高裁判決など、世界的に大きな議論が起きている問題について話された。
*「米最高裁判決は尊重するが、中絶そのものが問題」
(米国最高裁は6月24日、女性の人工妊娠中絶権を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を破棄した。これにより人工中絶を認めるか否かは、各州の権限に委ねられることになる。この判断は、ミシシッピ州保健局と同州ジャクソン女性健康機関の間で争われていた訴訟の最終判決の中で行われた。これに対して、バイデン米大統領は、「最高裁判決は、米国民の憲法上の権利を奪った」「最高裁による悲劇的な過ちだ」と強く批判、女性の権利を保障するには「ロー対ウェイド判決」を法制化する連邦法が必要とし、その成否は11月の中間選挙にかかっている、と強調している。)
米最高裁のこの判決について感想を聞かれた教皇は、「技術的な視点から、この判決がどうなのかも、50年前の判決(「ロー対ウェイド判決」)がどのようなものだったのかも、よく分からないので、勉強しなければなりません。今、法律的視点から正しいのか、間違っているのが、私の口から言うことはできません」とされた。
そのうえで、「裁判所の判断は尊重しますが、法律的などう判断するかは別として、中絶そのものが問題です」と語られ、「私たちは科学的になり、科学が教えてくれるものを知らねばならない。現代の科学や、医学生が学ぶ発生学の教科書には、受胎から30日後にはDNAが存在し、すべての臓器がすでに形成されている、と書かれているのです」と強調。
そして、「私は問いますーある問題を解決するために、人間の命を奪うことが、許されるのか、正しいのか」と問いかけられ、「道徳的に問われるのは、問題を解決するために人の命を奪うのが正しいかどうか、問題を解決するために”殺し屋”を雇うのが正しいかどうかです」と指摘された。
*中絶権利擁護派のペロシ米下院議長の聖体拝領問題
教皇はまた、米国議会のナンシー・ペロシ米下院議長が家族と休暇でローマに滞在中、バチカンでの聖ペテロとパウロの祭日ミサに参列し、中絶権利擁護派であるにもかかわらず聖体拝領を受け、カトリック関係者から問題にされていることについても、質問を受けた。教皇はこのミサで説教はなさったが、膝の不具合で長時間立っていられないことから、ペロシ議長が教皇から直接、聖体を受けることはなかった。ただ、ペロシ議長が所属するサンフランシスコ教区のコルデレオーネ大司教は中絶の権利を支持する彼女日して聖体拝領を禁ずる決定をしていたため、バチカンでのミサでの聖体拝領を疑問視する声も出ている。
教皇は「教会が、司牧的性質を失うとき、司教が、司牧的性質を失うとき、政治的問題を引き起こす。私が言えるのはそれだけです」と話された。
*教皇の健康問題「膝に小さな骨折」
また、昨年の大腸手術や膝の不具合など教皇に健康問題が続いていることから、早晩、教皇職を退かれるのではないか、という噂が流れていることについても、お答えになり、まず、大腸がんを患っておられるという噂を否定されたうえ、靭帯が炎症を起こしていた際にちょっとした踏み間違いをして、膝に「小さな骨折」をした、と語られた。
このところ、教皇は、継続的な膝の痛みのため、ほとんどの移動に車椅子を使うのを余儀なくされているが、骨折について語られることはなかった。今週に予定していたコンゴ民主共和国、南スーダン訪問が延期されたが、それも一因、との見方もある。
*引退ー「今は考えていないが、”その時”がきたら決断する」
この夏の初めに教皇は車いすを使い始めたが、これと前後して、前任者ベネディクト16世の退任表明に先立つ訪問先だった、生前辞任で知られる中世の教皇ケレスチヌス5世の墓所のあるラクイラ訪問を発表された。このことが、辞任の噂の原因となってきたが、教皇は、「偶然が重なっただけです。”同じこと”が起きる、と考える人がおられたようです。しかし、私はそのようなことは頭になかった」とされた。
そして、「(辞任の考えは)今のところありません。本当です。ただ、これ以上、(教皇職を務めることが)できない、と分かる時が来るでしょう… その時が来たら、私は決断します。ベネディクト16世が(生前辞任の)先例を示されたのは、教会にとってもよいこと。彼は、後に続く教皇たちに”時が来たら止めるように”と言われたのです。素晴らしい方です。ベネディクトは」と語られた。
*ロシアとウクライナ訪問の可能性
ロシアとウクライナへの訪問については、「7月末のカナダ訪問の後に行われる可能性があります」とされ、「(ウクライナに)行きたいと思う。まず、モスクワに行くことを希望していました」と述べた。
ウクライナの首都キーフ訪問可能性は、しばらくの間、検討されていた。モスクワ訪問については、これまでのところ、兆候が見られない。
教皇とバチカン高官たちは、ロシアのウクライナ軍事侵攻を終わらせる関係国による交渉にバチカンとして協力することを、繰り返し提案し、ウクライナの指導部はこれに応じる姿勢をみせたものの、ロシア側は受け入れようとしていない。
教皇はこのインタビューで、「モスクワ訪問の可能性について、ロシア側と意見を交換してきました。それは、ロシアの大統領が私に、小さな窓を開けてくれるなら、和平実現に寄与するためにモスクワに行こう、と考えたからです」と説明。
そして、「現在、可能性が出ています。7月末に予定するカナダ訪問から帰った後、何とかして、ウクライナに行く可能性があります。まずは、交渉を助ける試みのために、ロシアに行くことですが、私としては(ロシア、ウクライナの)両方の首都に行きたいと思っています」とされ、「ロシアとは)まだ非常にオープンな対話が続いています。非常に友好的で、良い意味で非常に外交的ですが、今のところはうまくいっています。ドアは開いています」と両国の和平に向けた交渉実現と、そのための両国訪問実現に強い希望を示された。
(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)
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