・性的虐待に関するカトリック中東欧会議で、被害者たちが証言(Crux)

(2021.9.22 Crux  Rome Bureau Chief  Inés San Martín)

 

*「司教の妨害などで30年経ち、加害者死亡の5日前に有罪判決、だが未だ公開されず」

*「被害者優先よりも、いまだに”嘘”と加害者を守ろうとする傾向が続く」

 さらに、Krasucki神父は、自分自身が被害者として名乗りを上げ、この会議で話すことで、教会でさまざまな種類の危害を被った他の人々が参考にできることを願いつつ、このような経験は「言語を絶する恐ろしさに満ちたものです」とし、「私のさらに強い願いは、非常に酷く、道具のように扱われ、虐待された事実を語る被害者たちが、教会で、強い関心と敬意をもって受け入れられることです。残念ながら、私の個人的な経験では、このようになっていません」と強調した。

 また、「(注:聖職者による性的虐待を防止することなどで)教会では、多くの改革がされたと言われていますが、被害者を優先することに関しては、話はされても、実際の行動はほとんどなされていない、と言っていい状態。これが改められない限り、教会の本当の善について話すことはできません。なぜなら、未だに、被害者が大事にされずに、まだ『嘘』と加害者を守ろうとする傾向があるからです」と批判。「被害者になされた危害は、実際には、私たちが信じている神になされたもの、なのです」と訴えた。

 

*「被害者の訴えを拒絶する教会は、イエスが望まれる教会ではありえない」とオマリー枢機卿

 この会議の主催者であるバチカンの未成年者保護のための委員会(PCPM)の責任者、ショーン・オマリー枢機卿(米ボストン大司教)は、「性的虐待がなされた場所、加害者の地位や役職に関係なく、性的虐待と闘い続ける必要があります」と強調。

 そして、性的虐待が引き起こしている危機の深刻さを知って、回心した個人的な経験を吐露したうえで、「自分の部屋などを使って性的虐待を繰り返し、それを隠蔽するなどの悪行を行なう聖職者のよって、筆舌に尽くしがたい苦しみを味わっている、兄弟姉妹のために、私たちは、個々に集まっています」と述べ、 「これまで多くの場合、被害者たちは声を上げても、教会はその訴えを拒絶してきました。これは、イエスがご自分の教会に望んでいることではありえません。これでは、『愛と和解の神の教会』になることはできないのです」と訴えた。

 また枢機卿は、他の人が同じような被害に遭うことを深く懸念している非常に多くの被害者とその家族、目撃者が声を上げる勇気は、「認められ、積極的に受け入れられねばならない」とも強調した。

*「私たちは、権威と良心を踏みにじり、被害者の苦痛を無視して来た」ポーランドの大司教と反省

 9月19日から22日に掛けての会議は、未成年者の性的虐待を防止する分野で、欧州大陸の中東欧地域の教会間で経験の交換、効果的な実践、共同行動の開始を可能にすることを目的としており、教会とその地域の社会において性的虐待問題に取り組む際の特定の困難を探求する試みでもある。

 この会議の共同主催者であるポーランドのカトリック司教協議会会長のStanisław Gądecki 大司教は、会議の冒頭に「私たちは、被害者たちに関心を持たず、彼らの苦しみも無視して来た私たちを”治療”するために、このに集まりました」と述べた。

 そして、「被害者から話を聴いた際、加害者は、被害者が自分を完全に信頼するように操作し、無防備な状態にしてから、性的虐待をした、ということが、しばしば語られました。聖職者である加害者が、『自分がしていることは間違ったことではなく、正しいことだ』と相手を説得することはめったにない。性的虐待はしばしば権威と良心を踏みにじることにつながり、被害者の心を荒廃させてしまいます」と強く反省した。

 

*「会議が、効果的対応の推進力となることを期待」とゾルナー師

 PCPMの主要メンバーであり、ローマの児童保護研究所の所長のドイツのハンス・ゾルナー神父は、新型コロナウイルスの感染防止という困難な状況で開かれ、また「政治的側面から生じたかもしれない他の問題」をはらんでいたにもかかわらず、中東欧の約20か国からの多くの参加者を得たことに感謝し、「PCPMは、この会議が確実に対応策を以前よりも動かすための推進力となることを願い、祈り、そして努めます」と述べた。

 そして、聖職者による性的虐待に関して、「ポーランドでは、2013年以来、多くのことが起こっています。クラクフには虐待防止のためのセンターがあり、虐待防止のためのガイドラインが作成され、実施されています。ポーランドでは対応策が進んでおり、また多くの課題が残ってはいるものの、欧州の他の国と比べて、重要な取り組みがされています」と評価した。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2021年9月22日