・バチカンの金融スキャンダル絡みで列聖省長官が辞任(Crux)

(2020.9.24 Crux Editor John L. Allen Jr.)

 ローマ発ーバチカン広報が現地時間の24日夜、教皇フランシスコが同日、バチカンの列聖省長官のアンジェロ・ベッチウ枢機卿の辞表を受理するとともに、枢機卿の職位に関係する権利を解いた、と発表した。発表文は極めて短いもので、「権利を解いた」ことが具体的に何を指すのか明らかにされていないが、現在72歳のベッチウ枢機卿にあった将来の教皇選挙での投票権がはく奪されたことを意味する、とみられる。

 ベッチウ枢機卿は2018年に枢機卿に任命され、列聖省長官に就任する以前は、バチカンで、米国の大統領首席補佐官に相当する国務長官代理を7年にわたって務め、バチカンの日々の管理運営に大きな責任を持ち、教皇の事前の予約なしに会うことのできる唯一人のバチカン高官だった。

 バチカン広報は枢機卿辞任についてのCRUXの質問に直ちに答えることはしなかったが、ベッチウは、ロンドンの高級住宅街チェルシーに隣接し、当初は高級マンションに改装予定だった大手デパート・ハロッズの元倉庫を2億2500万ドル(約250億円)で購入したバチカンの金融スキャンダルに関係してきた。

 購入にかかる取り引きは、ベッチウが国務長官代理を務めていた2014年に、イタリアの投資金融業者を通じて行われ、資金は、教皇自身の慈善活動を支援するために世界の信徒たちに献金を呼び掛けて集めた「Peter’s Pence」から出されたことで、まず問題になっていた。そして、当初の契約では、対象の不動産の半分の購入を予定していたが、国務省は、契約相手の業者との関係を離れ、別の投資金融業者と不動産の残りの半分を購入する計画を立て、そのための追加資金の融資をバチカン銀行に求めた。

 だが、その不自然さに関係者が気付き、バチカンの金融検査当局による内部調査が始まり、昨年10月、教皇フランシスコの指示で国務省と金融情報局の強制捜査が行われ、職員7人が停職ないし解雇処分となった。

 この事件でベッチウは取引を承認しただけでなく、対象となった不動産をバチカン経理の貸借対照表から消去することで、必要な資金融資を偽装した、と批判された。さらに、彼はバチカンが経営不振に陥ったローマのある病院を救済しようとした際、自分の姪をその担当者の1人にさせた疑惑、長官を務めている列聖省の財務管理に関する疑惑なども重なった。

 枢機卿の持つ権限をはく奪された最近の例では、2015年に教皇が辞表を受理したスコットランドのキース・オブライエンがいる。彼は数人の成人男性を巻き込んだ性的違法行為をしていたが、枢機卿としての権利をはく奪されたが、称号は残された。また、ごく最近では、米国の有力高位聖職者、セオドール・マカリックが未成年者に対する性的虐待、神学生たちへの性的嫌がらせを働いたとして、枢機卿の地位を追われている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年10月17日