「超少子化時代における家族形成の困難」 田渕六郎・上智大学教授

160812家族

日本では「家族の重要性」が高まっている。統計数理研究所の調査によれば、「あなたにとって一番大切と思うものは何か」の問いに「家族」と答えた比率は、1958年に15%弱だったのが、2013年には50%近くに達している。その一方で、家族を形成する困難もまた高まっている。教皇ヨハネ・パウロ二世はFamiliarisConsortioで、今日の世界の家族には「否定的な面」があると述べたが、日本も例外ではない。

・こうした中で、若者の家族形成は困難さを増している。結婚しない若者が増え、若い夫婦のもつ子供の数が減っている。国勢調査によれば、25歳から29歳の男性の未婚率は1950年に34.3%だったのが、1970年に46.5%、2010年には71.8%まで高まっている。30歳から34歳も、8.0%、11.7%、47.3%と、三十代半ばになっても男性の半分が未婚。女性は少し低いが、三十代なかばで未婚率は34.3%といずれも急激に上昇している。また、20歳から34歳までの未婚男性が親と同居する比率は1980年に32.9%だったが、2010年には49.4%と半分にまで増えている。

・少子化も急激に進展しており、日本の合計特殊出生率は1947年に5%近くだったのが、1977年の2.14%以後、人口を現在の水準に維持できるギリギリの2%を割り込み、2012年に1.46%まで落ちている。国立社会保障・人口問題研究所の調査では、夫婦がもうける子供の数は、最近三十年ほどは2人台をなんと開示してきたものの、2010年には1.96人と2人を割り込んだ。本当はもっと子供をもうけたいが、できない理由として、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」の回答が62.1%と圧倒的だ。低収入の男性に未婚率が高い、という結果が、就業構造基本調査から出ているのもこれと関連がある。

・若者だけではない。中高年者の家族形成の困難さも増している。50歳を超えても未婚の割合は男性で1970年の1.7%から2010年に20.2%に急騰。女性も3.3%から10.7%に大きく増えている。中高年男女の一人暮らしの割合も急激に高まっており、国勢調査によれば、男性の50歳から54歳が1980年に3.9%だったのが2010年には15.2%、75歳から79歳が4.8%から10.3%に増え、女性は50歳から54歳が6.2%が7.9%と緩い伸びだが、60代後半から顕著な伸びを示し、75歳から79歳では10.7%から24.3%と30年で倍以上に増えている。また離婚後再婚しない中高年男女の割合も1990年以降、急激に上昇しており、50代の男性の6.3%、女性の9.2%にのぼる。

・こうしたこともあって、ひとり暮らしの高齢者も大幅に増えており、国勢調査では、65歳以上の単独世帯の比率は1980年に10.7%だったのが2010年には24.2%と2倍以上。彼らの社会的孤立も顕著で、内閣府の2011年調査による「困ったときに頼れる人がいない」割合は、20%に達する。また国民生活基礎調査によると、未婚の子供と同居している高齢者の割合は、1980年の16.5%から2013年に25.1%まで増えていることも最近の特徴だ。

・このように、現在の日本では、「家族を形成すること」は当たり前でなくなっている。家族への期待は大きいにもかかわらず、このような事態になっている要因に、社会経済的な環境変化があり、人口の減少や未婚率の上昇、ひとり暮らし高齢者の増加など、否定的な結果をもたらしている。こうした状況を改善していくためには、家族形成・維持のための政策支援、地域社会などさまざまなコミュニティによる支援、新しい連携の構築が必要だし、それ以前に弱体化が進むコミュニティの再構築が求められる。(2016.7.1 上智大学主催シンポジウム「家族の未来を考える」より(文責・南條)

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2016年8月31日