♰「欧州は統合の基礎を作った人々の夢にたちかえれ」-伊紙とのインタビューで

(2019.8.9 バチカン放送)

 教皇フランシスコは、イタリアの新聞「ラ・スタンパ」のインタビューに応じ、欧州情勢や、移民問題、今秋開催のシノドスなどについて語られた。

 「ラ・スタンパ」のドメニコ・アガッソ記者によるインタビューで、現在の欧州情勢、特に欧州連合の現状について問われた教皇は「運営問題や内部の意見対立などを抱えるEUは、今こそ、地域統合の基礎を作った人々の夢にたちかえるべきです」と話された。

 そして、「欧州の再挑戦は対話から始まります」とされ、EU諸国が「対話に励み、耳を傾け合い、互いを改めて知ることが大切です」と強調され、「欧州諸国を一致させる、ヒューマニズムやキリスト教の共通のルーツ、共有する基本的価値を再確認する必要」を説かれた。

 対話の姿勢として教皇は「それぞれのアイデンティティーが重要であることは言うまでもありませんが、自国のアイデンティティーの中に閉じ籠ってしまうことは避けなければなりません」とし、「アイデンティティーは、国としての文化的・歴史的な豊かですが、それを閉じたままにせず、対話によって開き、互いを豊かにしていくことが望まれます」と語られる一方、それに反するような、EU内に広がる自国中心主義の傾向に憂慮され、「それは孤立化の態度に他ならなりません」と批判された。

 さらに「国家の主権は守られるべきですが、同時にEUという枠組みおよび他国との関係も守られるべきです」とされ、「行き過ぎた自国中心主義は最後には紛争を招きます」と欧州の歴史を振り返られた。

 また、移民問題について「命の権利は、他のどの権利より重要です」と指摘、「人々が祖国を後にせざるを得ない原因となった戦争や飢餓を思い起こす必要があります」とする一方、EU各国政府に対して、「移民の受け入れ限度を慎重に考慮し、創造的な対応を追求すると共に、移民・難民を生んでいる彼らの出身国の問題の解決を助けねばなりません」と求められた。

 今年10月にバチカンで開かれる「アマゾン周辺地域のための特別シノドス」については、エコロジーをテーマとしたご自身の回勅「ラウダート・シ」に関連を持つものとして位置付けられたうえで、「当然、政治家や科学者の会議ではなく、教会の使命に関わるものであり、特に福音宣教の活動と方法について話し合うのが目的です」と説明され、アマゾン地域の司祭が不足する場所で、既婚の長老を司祭に叙階する可能性については「シノドスの中心課題ではなく、事前に準備された討議要綱の一つの項に過ぎません」と過大な関心を持つことを戒めた。アマゾン地域でのシノドスを選ばれた理由について「この地域に関わる国は9か国にのぼり、地球の緑の肺として、未来に大きく寄与する場所」ということを挙げられた。

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2019年8月10日