・香港の暑い夏、そしてフィリピンでは大統領が-いつもと違うアジアの動き(Crux)

Amid protests and holidays, summer proves to be a busy season for Asia

Thousands of people take part in a candlelight vigil at Victoria Park in Hong Kong June 4, 2019, to mark the 30th anniversary of the crackdown on a pro-democracy movement at Beijing’s Tiananmen Square in 1989. (Credit: Tyrone Siu/Reuters via CNS.)

(2019.8.16 Crux Elise Harris

 世界中の多くの人が暑い夏の数か月、生活のテンポを落として過ごしているが、アジアでは、別の意味で過熱状態になっているようだ。

*”中国支配”に反対する香港は”危機的状況”に

  香港教区長で香港キリスト教協議会会長の湯漢・枢機卿は先週末、カトリック信者たちあての書簡で、不穏な状態が続いている香港の”幸せ”のために祈るよう、強く求めた。

 中国政府に旅行者や外国籍の人も含む香港在住者の引き渡し権を認める香港行政府の動きに反対する香港市民の大規模な抗議活動は、林鄭月娥・香港行政長官がそのための法案を議会に提出したのをきっかけ、6月に始まり、今も広がりを見せている。

 激しい反発を受けた行政長官-彼女もカトリック信者だが-法案を保留したものの、法案取り下げと行政長官辞任の要求にはに応じようとはせず、数百万の市民の抗議活動を拡大させた。緊張が高まる中で、抗議に参加した人々と警官隊との衝突が繰り返され、逮捕者も出ている。

  抗議活動はさらに12,13日には香港国際空港占拠へと発展し、旅客機の発着は止まり、多くの旅行者が身動きできなくなった。14日現在、旅客機の運航は徐々に回復しているが、九龍北西部、深水埗の住宅地域で、抗議への参加者と警官隊の衝突が起きている。

 イタリア司教協議会の公式ニュースサイト「SIR」によると、湯枢機卿は、前に行政長官に問題の法案を撤回するように強く要請していたが、週末に小教区と男女の信仰共同体に書簡を送り、「事態は危機的状況に達しつつある」と警告した。そして、信徒たちに、現在の状況がこれ以上エスカレートしないように、毎金曜日の祈りの励行、断食、ミサ、聖体崇拝、そして、十字架の道行きを通して、主に願うように強く促した。また、貧しい人たち、助けを求めている人たちへの慈しみの行為を求めた。

  また湯枢機卿は23日の金曜日に、九龍の石夾尾にあるアッシジの聖フランシスコ教会で、香港の全司祭参加の特別ミサを行うことを決めている。

 *フィリピンでは

 フィリピンでは、今週、ドトゥルテ大統領が、カトリック教会が乙女マリアの生誕を祝う9月8日を「国の特別のワーキング・ホリディ」とする法律に署名した。彼が聖マリアの祝いの日を国の祝日と宣言したのは、2017年に12月8日を無原罪の聖マリアの祝日を「国の特別のワーキング・ホリディ」としたのに続いて二度目だ。

 フィリピンの人々と聖母マリアには、1942年に当時の教皇ピオ12世が聖母マリアを同国の守護者と定めて以来、特別の関係がある。現地の新聞Manila Timesのよれば、大統領は、署名に当たって、聖母マリアを「イエスの母となるようにとの招きを受け入れた”無私”の方であり、それによって救いの計画が実現したのだ」と語った。大統領は、1950年代の少年時代にある司祭から性的虐待を受けた経験があるとしており、フィリピンの司教たちにしばしば激しい言葉を浴びせてきたが、聖母マリアは多くの信者の、特に困難な時の「信仰の模範、霊感の源」と讃えている。

 2016年に大統領に就任して以来、彼は、自身の麻薬撲滅についての何千人もの裁判前処刑を含む強硬な政策や死刑制度導入の方針を非難するフィリピンの教会指導者たちに、批判的な姿勢をとってきている。実際、この国のカトリックは彼の激烈な言葉の標的にしばしばなっており、司教たちを「愚か者たち」「役立たず」と決めつけ、ある時は、性的虐待をした司祭たちを“sons of bitches(くそ野郎)”と呼び、殺してやる、と脅した。

 乙女マリアの生誕を祝う9月8日をワーキング・ホリディとする法案は5月20日に上院を通過し、大統領は8月8日に署名したが、14日まで公表されなかった。司教団と緊張関係にある中で、この法案をめぐる動きは国内のメディアで幅広く伝えられていたが、司教団の反応は驚くほど低調。カトリックのニュースサイトもこれについて、わずかしか伝えず、フィリピン司教協議会も会長のロムロ・バレス大司教も声明を出さなかった。

 だが、アジアの有力インターネット・メディア、Ucanewsによれば、タルラック教区事務局長のメルビン・カストロ神父は、大統領の決断について「新しいマリアの祝日は”喜びの源”になる」と評価し、国民の祝日として言明することは「宗教的、霊的な祝祭の重要性を確認したこと」だと語り、9月8日の祝いがフィリピンの人々が「聖母マリアの徳に倣う」ように励ますことになる、と希望をのべている。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載しています。

Follow Elise Harris on Twitter: @eharris_it


Crux is dedicated to smart, wired and independent reporting on the Vatican and worldwide Catholic Church. That kind of reporting doesn’t come cheap, and we need your support. You can help Crux by giving a small amount monthly, or with a onetime gift. Please remember, Crux is a for-profit organization, so contributions are not tax-deductible.

このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年8月17日