・「中国政府は新型ウイルス感染拡大に責任を」アジア司教協議会連盟会長のボー枢機卿が寄稿

The Chinese regime and its moral culpability for Covid-19

 ミャンマーの首都ヤンゴン中心部にあるシュエダゴン・パゴダで新型ウイルス感染防止剤を散布するボランティア(AFP)

(2020.4.3 カトリック・あい)

 新型コロナウイルスの世界的な感染危機が引き起こされた最大の責任は中国当局にあるーカトリック・アジア司教協議会連盟の会長でミャンマーのヤンゴン大司教を務めるチャールズ・ボー枢機卿が4月2日付けのカトリック系インターネット・サイトUcanewsに寄稿し、と強く指摘した。(全文はhttps://www.ucanews.com/news/the-chinese-regime-and-its-moral-culpability-for-covid-19/87609に)

 寄稿の中で、枢機卿は、3月29日付けの英国の有力日刊紙Daily Telegraphが中国当局が新型ウイルスの国内での感染の実態をどのように隠ぺいしたか、世界が感染に苦しむ中で感染源とされている武漢の市場を再開したことなどを報道し、権威ある法学者のジェームズ・クラスカ教授が、the War on the Rocks のウェブサイトで「中国には世界各国への感染について法的責任がある」として、請求すべき賠償額は数兆ドルにのぼる、と指摘したこと、などを挙げた。

 そして、英国のサウザンプトン大学の疫学モデルによると、「新型ウイルスに感染した人の数は、中国が一週間早く対処していれば実際の感染者よりも66㌫、三週間早ければ95㌫、それぞれ少なくて済んだはず」と指摘。

 「こうした対応の誤りによって、世界中で多くの人が亡くなっています。私の国、ミャンマーは、そもそもの感染源となった中国と国境を接しており、先進国のような保健衛生体制も整っていない、貧しい国です。何十万の人が国内紛争で家を追われ、国境の避難所に身を寄せ、十分な医療を受けることもできずに暮らしています。そのような環境の中で、新型ウイルス対策として多くの国で実施されている『社会的距離』を置くこともできません」と窮状を訴えている。

 そして、現在の世界的な大感染に関して、新型ウイルスが最初に中国の武漢で感染が確認された際に、自国内での適切な対応を怠った、として、多くの国の政府当局が非難されているが、政策の失敗でまず責任を負うべきなのは、中国共産党政権、と言明。

 さらに、「はっきりしておきたいのは、責任を負うべきなのは、中国の国民ではなく、中国共産党だ、という事です。現在の危機について、私たちは中国に対して人種的な嫌悪を持つべきではありません。今回のウイルス感染の最初の犠牲者は中国人であり、彼らは、長い間、抑圧的な政権の主要な犠牲者だったのです。彼らは、私たちが心を同じくして、連帯し、助け合うに値する人々です」と断ったうえで、「責任があるのは、中国共産党の抑圧政策、虚偽、そして腐敗。新型ウイルスの感染が始まった時、中国当局は、それを公表するのを抑えました。共産党は大衆を保護し、医療活動を支援する代償として、内部告発者を沈黙させました」と述べ、具体例として、感染を警告しようとした武漢中央病院の医師は、公安当局から嘘を広めているとして逮捕され、自身がウイルスに感染して亡なったこと、感染の現状を報告しようとした若いジャーナリストは行方不明になっていること、などを挙げた。

 また、海外からの支援の申し出にも、米国の疾病対策センターが1か月以上も中国当局から無視され、中国と緊密に協力している世界保健機関さえ、当初は遠ざけられていた。そればかりか、最も基本的な中国国内の感染実態に関する公式統計も、数字が低く抑えられている懸念がある。そればかりか、最近では中国政府の副報道官が、米軍が武漢で感染を引き起こした、と”非難”するなど「中国当局の虚偽と情宣が世界中の何百万もの人々の命を危険にさらしています」と警告した。

 また中国共産党・政府の抑圧的な政策は、新型ウイルス感染以前から強化されており、厳しい言論統制の中で人権派弁護士、インターネットを使った告発者、市民活動家などが相次いで姿を消し、信教の自由の規制強化で、国内の何千もの教会の聖堂や十字架が破壊され、少なくとも100万人のウイグル人イスラム教徒が強制収容所に入れられている。そればかりか、特的の宗教団体の信者から臓器を摘出しているとして、ロンドンの独立法廷が訴えている。英国から返還後も自由が保障されていたはずの香港も人権抑圧が進められている。「このような流れの中で、今回の新型ウイルス感染への非人道的で責任を欠いた対応を通して、中国共産党は、多くの人が以前から思っていたことー世界に対する脅威ーを実証しています」と批判した。

 寄稿の最後に枢機卿は次のように締めくくっている。

 「国としての中国は、歴史を通じて世界中に多大な貢献をした偉大な伝統を持つ文明です。しかし、現在の中国政府には、犯罪的な怠慢と、早期に警告を発しようとした人々への抑圧によって、私たちの町々に新型ウイルスの蔓延をもたらした責任があります。全権を持つ習近平主席と中国共産党ー中国人民ではなく-に率いられた中国の政府は、私たち全員に対して謝罪し、その被害に対して補償する義務を負っています。最低限でも、新型ウイルスのコストを埋めるために、中国は被害国に対する債権を帳消しにする必要があります。

 私たちは同じ人間として、中国の政府に責任を取るように求めることを恐れてはなりません。私たちキリスト教徒は、使徒パウロが言っているように『私たちは真理(注:を知ること)を喜ばねばならない』と信じています。それは、イエスが『あなた方は真理を知り、真理はあなたを自由にする』(ヨハネ福音書 8章32節)と言っておられるからです。真理と自由は、私たちのすべての国がより確かで強固な基盤を構築するための対の柱なのです」。

 

 

このエントリーをはてなブックマークに追加
2020年4月3日