陳枢機卿「バチカンは中国の忠実な信徒を檻に入れようとしている」と警告(CRUX)

( 2018。2.6.Crux  Managing Editor Charles Collins)

  バチカンと中国の共産党政府の関係の在り方をめぐる論争が続く中で、前香港司教のヨゼフ陳枢機卿が、バチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿を名誉教皇ベネディクト16世の意図を誤って受け止めている、とバチカン国務長官のピエトロ・パロリン枢機卿を批判した。

 枢機卿は先週、フェイスブックで公開した書簡で、共産党政権支配の「中国天主教愛国会(CPCA)」所属の司教を厚遇する代わりに、教皇に忠誠を誓う「地下教会」の司教二人を退任させることを、中国を最近訪問したバチカンの外交官が提案したとして、強く非難していた

 その二日後にパロリン枢機卿はイタリアの新聞La Stampaとのインタビューで、中国への対応について異なった意見を持つのは正当なことではあるが、「個人的な見解を、中国のカトリック教徒たちにとって何が善であるかについての唯一の見方であると考えることはできない」と語り、バチカンの中国とのかかわりについて「聖座は常に司牧的なアプローチを維持しており、対立を乗り越え、政府当局者との敬意ある建設的な対話ができるように心がけている」と弁明していた。

 中華人民共和国は1951年にバチカンとの外交関係を断絶し、1957年にCPCAを作って、中国のカトリック教徒を政府管理下に置いた。CPCAは教皇の権威を認めておらず、教皇の権威を認める「地下教会」も併存する形になっている。

 陳枢機卿は6日付けの AsiaNewsで、パロリン国務長官のインタビューでの発言には「逆説的な誤謬」が含まれている、とし、国務長官を「名誉教皇ベネディクト16世を侮辱する尊大さ」がある、と非難した。ベネディクト16世は2007年に、中国政府との和解は「ひと晩では達成できない」としたうえで、「教会にとって地下で活動するのは、正常な状態ではない」とする重要な書簡を書いている。書簡は、中国においてはひとつの教会しかない、とし、信仰告白においての一致を促し、CPCAに一定の正当性を与え、政府公認の教会への信徒の参加を認める考えを示していた。

 枢機卿は、国務長官はインタビューで、この書簡を文脈から外れた形で引用し「正当な政府当局者との争いを続けていては実現しない」と言っている、と批判。「だが、長官は書簡の後半部分を引用しなかった。そこには『それにもかかわらず、同時に言うべきことは、(中国側当局者が)教会の信仰と規律に関する問題で不当な妨害をする場合には、政府当局者に従うことは受け入れられない』と書かれているのです」と指摘した。

 さらに、枢機卿は「国務長官はこうも言っています。『私たちは、中国の兄弟姉妹の痛みを昨日も今日も理解しています』と。嘆かわしいことだ。この信仰薄き者は真の痛みが何か知っているのでしょうか?」と問いかけ、こう訴えた。「中国本土の兄弟たちは、家や財産を失うことは恐れていません。投獄され、血を流すことも恐れていません。彼らにとって最も大きな苦痛は、『閉じられた者たち』(CPCA)が(バチカンが公認することで)”開かれた”教会になることなのです」。

 (翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

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2018年2月7日