・シノドス第3週終了:「若者たちは私たちが正々堂々と発言するのを望んでいる」

(2018・10.20 VaticanNews Russell Pollitt, SJ)

 「若者シノドス」第三週の最終日、20日の定例記者会見では、司教たちが若者たちに明確な発言の機会を与えていること、人々が故郷に留まり、十分な処遇を受けること、聖書の重要性、聖職者による性的虐待、同性愛への関心、などが会議の議論の主題となったことが説明された。

 会見の冒頭で、バチカン広報部門のパオロ・ルッフィーニ長官は、シノドスは第三週の議論を、若者への司牧的対応で締めくくった、とするとともに、「これまでの議論を基にした最終文書の原案は23日に全体会議に提示され、内容の検討、修正される」との見通しを明らかにした。

*「私たちの声を使って」と若者たち

 米国のブレーズ・キューピッチ枢機卿は「私は若者たちの言葉を語ることに最善を尽くします。なぜなら彼らが、司教たちにそうするように希望しているからです」と述べたうえで、「若者たちは戦争、貧困、失業、移住、武器取引、そして、問題を解決するために容易に武力紛争に手を染める諸政府について語りました。彼らは司教たちに、問題に対処しようとする諸政府に対して注目を浴びるような発言をするように求めています。司教たちに、世界の指導者たちに対して話をするように希望しています。なぜなら、彼らが、自分たちの未来、そして将来の世代が危機にさらされるような決定が今なされることを恐れているからです」と指摘した。

*人々には故郷に留まる権利がある

 キューピッチ枢機卿とパプアニューギニアのジョン・リバット枢機卿 は「多くの人が移り住むことを選んでいますが、人々には故郷に留まる権利、生活を向上していく権利があることも、私たちは認識せねばなりません。多くの人は、自分たちの言語や伝統などルーツから遠く離れたくはないのです」と口をそろえた。

*聖書が議論に深く関わってきた

 豪州のピーター・アンドリュー・コメンソリ大司教は、「全体会議でも、言語グループごとの小会議でも、シノドスの議論が活発になってきていることを実感しています。討議の内容が深くなっています」とし、その理由の一つとして、司教たちの話の内容に従来以上に聖書が深く関わってきていることを挙げ、「シノドスは、福音書が若者の現実の生活に語りかけていくことを願っているのです」と付け加えた。

*性的虐待への謝罪と信頼回復の努力で一致

 また、聖職者による性的虐待ついて、コメンソリ大司教は、シノドスの冒頭から議論された、としたうえで、「シノドスは、これを教会の犯した失敗であることを認め、事実として受け入れ、謝罪し、一致協力して信頼の回復に努めることを司教たちに求めました」と語り、さらに、来年2月に教皇が招集する全世界の司教協議会会長会議で、さらに議論が深化される、との見通しを示した。

 この問題に関連して、キューピッチ枢機卿は「若者たちは、司教たちが被害者たちに手を差し伸べ、説明責任を果たすことを求めています。被害者が誰ひとりとしてその対象から漏れることがないように、また司教たちがこの問題に”透明”であることを望んでいます」と若者たちの声を代弁した。さらに「来年2月の全世界の司教協議会会長会議で今後の対応について、確かなものが得られると確信しています。私自身も、申し立てを受ければ、権威を捨ててでも、調べを受けるつもりです」と決意を述べ、「人々、特に一般の信徒は、聖職者たちがこのように責任を明確にする求め、問題解決のためにそのような聖職者が必要だと、私は確信している」と強調した。また、同枢機卿とコメンソリ大司教は、それぞれの国における広範な聖職者による未成年者などに対する性的虐待について「同性愛が原因ではない」とし、両国のそれぞれの専門家による調査でもそれが確認された、と説明した。

*教会から離れた人々に、地域に合った対応が必要

 教会から離れた人々への対応についても、シノドスのテーマとなったが、コメンソリ大司教は「幅広い議論がされているが、それぞれの教区などのレベルで具体的な対応がなされる必要がある」とし、その理由を「若者たちが教会を去った理由について様々な観点から議論するとしても、地域による事情の違いもあり、それぞれの地域に合った対応を検討する必要があります」と付け加えた。

 リバット枢機卿は「多くの若者にとって、これは辛い問題であり、話し合うのが難しいと彼らも感じます。教会を離れたのが、友人であり家族だからです」とする一方、「若者たちは仲間を教会から去らせた原因は何なのか、について語り始めています」とも語った。

*同性愛については幅広い議論、皆が受け入れられる文書に

 また、今シノドスで取り上げられた同性愛の問題について、リバット枢機卿は「誰でも歓迎し、誰ひとりとして排除しないのが、教会のやり方。若者たちは、司教たちが同性愛についてよりよく理解できように助けてくれています」と述べたが、キューピッチ枢機卿は「同性愛については、かなり多くの異論がありました。最終文書の草稿では、参加者の意見を幅広くまとめたいと考えています。この問題に関する箇所全体がすべての人に語りかけ、同性愛者であることを自認している若者たちを含め、この文書が自分たちのためにある、と感じられるものであるようにまとめたいと思っています。私たちは、私たちとともにおられる神の慈しみの旅をしていることを忘れてはなりません」と強調し、コメンソリ大司教は「私たちは皆、罪人であり、神に見いだされることを願っているのだ、ということを忘れるべきではありません」と自戒を込めて締めくくった。

(翻訳・編集「カトリック・あい」田中典子、南條俊二)

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2018年10月21日