・シノドス最終週③「恵み」を、教区、小教区の今後にどう生かすか

(2018.10.26 VaticanNews Russell Pollitt, SJ)

*若者たちの声を聴き、思いを分かち合えた「恵み」の一か月

 「若者シノドス」最終週の26日の定例記者会見は、オーストリアのクリストフ・シェーンボルン枢機卿とアイルランドのイーモン・マーチン大司教の、今回のシノドスの感想から始まり、2人は、シノドスが始まる前は個人的にその成り行きを懸念していたが、これまでの会議は「恵み」の時となった、と口をそろえた。

 シェーンボルン枢機卿は、シノドス出席の指名を受けた時、1か月の長きにわたって任地のウイーンを離れることを心配したが、実際に出席してみて、「私を含めて司教たちにとって、全世界から集まり、若い人々の話を聴き、彼らと思いを分かち合うことは、素晴らしい経験だ、ということが分かりました。若者たちの経験や実生活の状況をたくさん耳にしました」と述べた。

 さらに枢機卿は、会議の雰囲気は、司教たちが答えを出すのではなく、若者たちの理想や夢に注意を向ける、というもので、「皆が和気あいあいとし、素晴らしい雰囲気と真に霊的な交わりがあります」と語った。そして、若者たちが示した勇気と意欲ゆえに、自分の宣教精神がより確固としたものになるだろう、と会議の意義を説明した。

 マーチン大司教は、そうした見方に同意して、「ここに来るまでは、会議の意味について懐疑的だったが、シノドスは恵みあふれる一か月になりました」と語り、「アイルランドでは、教会は若者たちとつながりをもためばならないのに、十分に働いて来なかった。教会は家庭と学校となつながりを持っているが、若者たちと関係することに苦労しています」としたうえで、今回のシノドスは「若者たちとのつながりをもつことについて多くの示唆を、自分に与えてくれました。このシノドスでの、教皇、司教たち、そして若者たちとの霊的な交わりが、本当の恵みです」と感謝を述べた。

 また、ケニアのアンソニー・ムヘリア大司教は「このシノドスは教会の普遍性、多様性と協働性についての特別な経験となりました」としたうえで、「このシノドスは炎、火のようです。若者たちとつながり、そうすることで教会に新たな命を与えようとする司教たちの熱意を、再び燃え上がらせたのです」と強調した。

*教会は”カウンターカルチャー”のメッセージを発すべきだ

 マーチン大司教はまた「今回のシノドスは、特別な教理に関わる問題については話さなかった。若者たちの視点から多くの問題に触れました」と説明。第一週の議論で、具体的に「貧困、人身売買、移民、どれほど多くの若者が道に迷い、焦燥感を強めているか、精神的な病、そして安定した基準の切望など、若者たちが苦痛を感じている内容を特定したが、その過程で、司教たちは、若者たちが溺れ、窒息されそうになっている世界に対して、教会がカウンターカルチャー(注:既存の慣習や価値観に縛られない”反体制文化”)のメッセージを発することの重要性を、感じた、と語った。

 さらに大司教は「教会に求められているのは、人々に対して、希望を持ち、命を大切にし、情熱をもって生きる理由を示すこと。いずれにしても、教会は流行を追い求めず、恐れることなく語り、社会が投げてくる穀粒に怯まずに進むことが必要です」と主張した。

*シノドスを終えた後の課題は

 ムヘリア大司教は、今回のシノドスの後の課題について「司教たちがシノドスの炎を若者たちに渡すことだ」とし、「私たちは希望を吹き込まねばなりません。この日曜日にシノドスが閉幕した時、何が起きるか。教会は、多くのハードルに直面している若者たちを助け、将来に大きな夢を抱くことができるようにする必要があります。教会全体を前に進めさせる大きな夢です」と強調。

 そして、「このことは、教会の対応の仕方を変えること、新たな冒険をすることを意味します。アジアとアフリカにはカトリックの若者たち多数がいる。彼らにはそれぞれの地域固有の課題もあるが、(注:冒険を成功させるために)シノドスは彼らと繋がらねばならない」と訴えた。

 シノドス後について、マーチン大司教は「シノドスで示された力、喜び、命をアイルランドの教会に持ち帰らねばならないことに、気が高ぶっています。(注:アイルランド駐在の)シノドスの大使とならねばなりません」と語り、「若者たちは、現代の教会と深く関わらねばならない。実社会で、彼らは政治、教育、治安、政府、法制度などの中に身を置いている。だから、彼らがすでに働き、関係を持っている様々な場の中から、社会を変えていくことができるように、教会は彼らと協働する必要がある」とも主張した。

 さらにマーチン大司教は、「若者たちが司牧の対象ではなく、彼ら自身が宣教活動の主役だ」ということがシノドスに来て分かるようになった、とし、「私自身、若者たちともっと深く関わりを持ち、彼らが宣教の使徒となることができるようにしなければならない、と自覚しました。これまで私は、若者たちと関わり、勇気づけることを十分にしてこなかった」と反省したうえ、「自分の教区、小教区に出かけ、あり方を考え直さねばならない」「問題は、アイルランドで、どのようにして、信仰に満たされた若者たちの、教会の意思決定への参加を具体的に進めるかです」と今後の課題にも言及した。

 キューバのエルドアン・アルベルト・オルテガ・レアル氏は「これまで教会は、若者たちが答えを見つけるのを助けようと努力してこなかった。これからの教会は、若者だけでなく、すべての人々と関わりを深め、活発にならねばならない」とし、「教会の人々は時として、過去の過ちを理解しません。でもシノドスのおかげて、私はよく理解できたように感じています」と語った。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

 

 

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2018年10月27日