(2017.9.10 国境なき医師団ニュース)長年の紛争で荒廃する南スーダン。国連機関の推計によると、子どもたちの10人に1人は、5歳の誕生日まで生きられません。その原因の多くは、予防も治療もできるはずの病気。子どもたちの未来を奪っているのは、ごく基礎的な医療の不足なのです。
国境なき医師団はこの国に3000人以上のスタッフを配置し、各地に援助を届け続けています。その一つ、北バハル・エル・ガザル州の州都アウェイルにあるアウェイル病院、州の全住民約120万人に対応する、唯一の2次医療病院で、国境なき医師団は2008年から小児科と産科の支援を行っています。目的は、世界水準からみても非常に高い妊産婦と乳児の死亡率を下げることと、マラリア流行のような緊急事態への対応です。2016年夏には大規模なマラリア流行が起こり、重症小児患者だけで7700人以上を治療しました。
4歳の息子が昏睡状態に……治療を求めて母は歩いた
母親のアクオットさんは、途方に暮れていました。地域でマラリアが流行する中、子どもたちが高熱で苦しみ出したのです。特に具合の悪い長男アゴク君(4歳)を連れて向かった近所の保健センターは、なぜか閉鎖されていました。
実は、このセンターにはマラリア治療薬を点滴できる医療スタッフがおらず、経口薬は品切れ。「マラリア患者が押し寄せても何もできない」と、閉鎖してしまったのです。
次に近い公営診療所までは徒歩で2時間。そこに薬がある保証もありません。町の民間病院は医療費が高額。下の双子のきょうだいも病気ですが、3人分の薬代を払う余裕はありません。アクオットさんは心を決め、ぐったりしてしまった長男だけを抱き、町へ向かって歩き始めました。
幸い、アクオットさん親子は途中で国境なき医師団の移動診療車に出会い、アウェイル病院に搬送され、無償で治療を受けられました。マラリアによる昏睡は脳に後遺症を残す恐れも。アゴク君は重度の貧血にも陥っていて、一刻も早い治療が必要でした。
南スーダンでは、アゴク君のようなケースが珍しくはないのが現状です。医療が不足するこの地域では、多くの幼い命が、今この瞬間も危機に直面しているのです。
“子どもは小さな大人ではない”
世界中どこでも、危機的状況下でまっさきに命の危機にさらされるのは、子どもたち。子どもは小さな大人ではありません。生理や代謝、精神面の発達も、成人とは機能が違っています。特に5歳未満の乳幼児は、感染症や栄養失調など、日本では予防や治療が可能な病気によって、その未来を奪われているのが現状なのです。
国境なき医師団は、さまざまな専門医療で、多くの子どもたちの命を守る活動に取り組んでいます。
マラリアで高熱にうなされる8歳のアドゥーちゃんと、見守るお父さん。遠い村から、娘の治療を求めてアウェイル病院にたどりつきました。近所の診療所にはマラリア薬の在庫がなかったといいます。
1歳のガラン君は栄養失調で危険な状態でした。お母さんは息子を助けたい一心で、車で2時間以上かかる道のりを越えてきました。重度栄養失調の治療が受けられる病院は他にはなかったのです。
新生児室で治療を受けるまだ生後4日のモウ君の容態は、峠を越えたようです。車で2時間かけてこの病院にやってきたというお母さんも、もう大丈夫と安心した様子でした。
高まる医療ニーズ、支援増加が必要に
アウェイル病院の母子保健医療プログラムでは2017年には約1万2000件の入院治療、8500件の小児マラリア重症患者、5000件の分娩介助など、ニーズの大幅な増加が予測されています。昨年度の実績を上回る援助計画となり、資金増が求められているのです。
そこで、活動予算710万ユーロのうち、470万ユーロ(約5億8000万円)を国境なき医師団日本から送ることを目標に、募金活動を開始しました。9月10日現在、2億4000万円強の支援金が寄せられています。一人でも多くの命を救うために、どうかご協力のほど、よろしくお願いいたします。