・「無実の人々を殺し、殺人ドローンのボタンを押す者たちを止めるよう、祈って欲しい」ーウクライナの高位聖職者が訴え

(2026.2.21  Vatican News )

   ロシアがウクライナ侵略戦争を始めて2月24で5年目に入るのを前に、ウクライナのドネツク管区総主教代理、マクシム・リャブハ司教が21日、Vatican Newsのインタビューに応じ、現地の教区や共同体での生活がどう続いているか、医薬品や発電機が人々に命を吹き込んでいる様子、そしてウクライナに希望と信仰が今も存在していることを強調した。

 司教は、ロシア軍による爆撃や暴力が続く中でも、司教は信徒たちから「あらゆる困難にもかかわらず、兄弟愛や友情、相互支援を実践できている」という話を聞き続けていると説明。紛争のさなかにあっても若者たちが希望を失っていない点を強調し、「彼らは、生きる勇気を持つ者であり、実現すべき夢を持つ者であり、未来へのビジョンを持つ者です… 彼らの話を聞き、彼らの人生の一部と感じる者たちに勇気を与えている」と語った。

 以下は、インタビューの内容。

問:教区の状況はいかがですか?最も困難な地域はどこですか?

答:私たちドネツク管区における状況は確かに極めて厳しい。この冬は、2014年に我々の領土で戦争が始まって以来、最も過酷なものの一つです。ロシア軍がエネルギー施設を爆撃したため、極めて困難な状況に直面しています。全域で1日20時間以上も停電が続いているのです。薪ストーブで暖を取ることに慣れた村々では、まだ地域支援が残っているため多少は楽ですが…。最も困難な状況は都市部。多くの高層ビルには独立した暖房システムがなく、停電は暖房・水道・生活必需品の不足を招いています。政府は攻撃の被害に対処するため、全力を尽くしている。技術支援スタッフは市民の生活環境を回復すべく、不可能を可能にする努力を続けています。

問:人道支援はどのように提供されていますか?十分な資源はありますか?

答:様々な方法で支援を試みています。神に感謝してます。神は教会を非常に偉大な存在として構想されたからです。教会の普遍性により、私たちと直接関係が無くても、心と思考と祈り、そして具体的な支援行動を通じて寄り添ってくれる多くの友人がいます。様々な組織が発電機の燃料購入を支援してくれる。これまでにも、支援が必要な全ての教区や共同体に発電機を提供してくれた友人たちがいました。今も友人たちが発電機を送ってくれており、村や都市の民家に住む教区民に配布できました。これらの発電機の一部は、児童センターや教理学校など、私たちが運営する様々な活動にも使われています。

 この極めて困難な時期において、私たちの教会のあらゆる空間は、回復と希望と支えの場となっています。可能な限りの支援を行う教区コミュニティに加え、カリタス・ネットワークも存在します。ドネツク総主教区には7つの大規模カリタスセンターがあり、管轄区域内の様々な都市や村で支援を提供しています。これは人々を助けるための大きな資源。様々な組織を通じて、人生の困難な時期を過ごすウクライナの人々に寄り添おうとする全ての支援者に、深く感謝しています。

 例えばある組織から電話があり、「現状を教えてください。生活はどうなっているのですか?」と尋ねられ、状況を説明すると、「医薬品で支援できます」と言われました。それで私たちはインフルエンザやその他の病気に対する必須医薬品を各教区で配布する手配ができました。これは今日、世界がウクライナとそこに住む私たちに向けて手を差し伸べている数多くの方法の一つに過ぎません。

問:ここ数ヶ月で、あなたの教区内の都市や村から多くの人々が避難しましたか?

答:都市や村での動きを見ると、大規模な避難がされているとは言えません。ザポリージャは今も平穏な生活を送っていますし、都市を離れた者もいます。主にドネツク州の前線に近い村の住民は、避難を余儀なくされています。多くの家族が安全な場所を求めて徐々に村を離れています。もっとも、人々は行き来していますし、状況が少し落ち着くと、多くの家族が村や都市に戻り始めます。

問:司牧活動はどのように行われていますか?司祭や聖職者はこうした深刻な課題にどう向き合っているのでしょうか?

答:幸い、私たちは司牧活動を通常通り行うことができています。戦争とあらゆる困難にもかかわらず、司祭と信徒は常に祈り、連帯し、互いに兄弟愛をもって活動しようと努めています。日曜日の祈りと毎日のミサは、状況が許す限り定期的に捧げられていますが、ロシア軍の攻撃で、残念ながらいくつかの教区を失っています。しかし可能な限り、人々は祈りを続けている。他にも様々な活動があります。子供や若者、家族向けの教理教育。祈りの母の会やコロンバス騎士団など、様々な共同体のための祈りの集い。これらのグループは全て、定期的な集会の維持に努めています。

 様々な研修の機会もあります。例えば先月は、ドネツク管区の各教区で司祭を補佐する青年指導者や祭壇奉仕者向けの研修を実施しました。四旬節の始まりも祝いました。教会が実践しようとする全ての定期的な活動を推進し遂行しているのです。

問:あなたは管区の教区を頻繁に訪問し、青年を含むあらゆる年齢層の人々と会っている。若者たちはどんな話をしますか?

答:教区訪問は大きな家族として集う機会です。教区を訪れるたび、礼拝後に教会が今経験していること―様々な行事や活動など―を共有するよう心がけている。これにより、教会がある各地の人々がより広い視野を持ち、教会の現実に対する感度を高められるのです。

 また個人的な対話の瞬間もある。人々はよく「私たちの未来はどうなるのか」と問う。同時に彼らは希望も語る。神は私たちを支え助ける方法を考えずに命を与えたはずがない、と。多くの人々が美しいものも共有してくれる。あらゆる困難の中でも実現している兄弟愛、友情、相互支援だ。こうした瞬間こそ、偉大な人間性が示されています。

 若者と話す時、彼らはよく人生の意味や希望の意味を問う。夢を語り、心で感じることに忠実でありながら、この荒れた世界をどう進み、どう生き抜くかについて助言を求める。夢を持ち、人生に対する非常に深く明確な感覚を持つ若者たちを見るたびに、私は心を動かされる。

 ここ戦場において、私は多くの若者に出会います。生きる勇気を持つ者、叶えたい夢を持つ者、そして未来へのビジョンを持つ者だ。彼らの言葉に耳を傾け、彼らの人生の一部を感じ取る者たちに勇気を与えるビジョンです。

問:ロシアの大規模侵攻4周年を迎えるにあたり、Vatican Newsの読者や視聴者に伝えたいことは何でしょう。

 大規模侵攻開始から4周年を考える時、「神が民を見捨てていない」という思いに胸が熱くなります。悪は強大な力で現れ、実際、悪が人間の生を通じて働くことを許す罪は非常に強力です。それでも、ウクライナ国民が侵略者から感じる憎悪の大きさにもかかわらず、神が私たちを見捨てていないことが分かります。

 例えばザポリージャ。2023年10月以来、多くの人々がこう言ってきました。「明日か明後日にはロシア軍が街全体を破壊する。あなたがたは、もうここにはいない。死の地域となり、全てが消し去られる」と。でも2026年2月の今、この街では生活が続いています。

 戦争にもかかわらず、ここで続く生活の物語は数多い。神の御手によって人の心が改心することを阻むものは何もないと信じています。私たちの祈りは全てこの方向に向けられている。人の回心が命と平和をもたらすからです。時に思うこともあります―「この悪を打ち破る神の力と信じる者は少ない」と。しかし「悪に打ち勝つ」という夢と希望は、私たちが経験しているあらゆる恐怖や困難よりも強いのです。

 Vatican Newsの読者や視聴者にお願いしたいのは、「私たちを支えてほしい」ということです。この祈り、人間の心の回心を求める絶え間ない祈りの中で、兄弟愛を感じさせてほしい。なぜなら、命を奪う者たち、無実の人々を殺すために爆弾を送るボタンを押す者たちは、止めなければならないからです。私たちは、すべての人の目が命に向けられ、心が神に開かれるよう祈っています。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2026年2月21日