教皇フランシスコ「キリスト教徒は、欧州の『再活性化』に努めよ」(TABLET)

2017.10.30 Tablet  Christopher Lamb in Rome)教皇フランシスコは30日、バチカンで開かれた‶欧州再考会議‶で講演し、欧州では若い世代が裏切られ、人々は「生まれる権利」を否定され、追求すべき目標がもはや「共通善」ではなくなっている、として、キリスト教徒たちに、そのような欧州を「再活性化」の努力を求めた。

 講演で教皇はまず、「欧州の顔が文化と宗教の多様性によって特徴づけられるようになり、その中でキリスト教が多くの人々にとって過去のもの、異質で時代遅れのもの、とされている現在、私たちの責任とは何でしょうか」と問いかけ、欧州において、政治が「反対者同士がぶつかり合う場」となり、批判と要求の叫び合いが「対話」に取って代わっている現状に、遺憾の意を表明した。

 教皇は「最優先目標はもはや『共通善』ではない、という認識を持つ市民がますます増えている。過激派や大衆迎合主義者の集団は、沢山の国々に自分たちの主張が育つ豊かな土壌を目にしています。彼らは、建設的な政治的な具体案を示さずに、政治的なメッセージを発信します。市民の共存を脅かす不毛な敵対や民主主義の経験を妨げる政治的な力が、『対話』に取って代わっています。一方では橋が焼かれ、また一方では壁が立てられます。そして欧州は、その二つとも経験しているのです」と危機的な欧州の現状を示した。

 そのうえで、「キリスト教徒には、空間を占有することによってではなく、社会に新しい活力を目覚めさせるような手順を作り出すことによって、欧州を再活性化させ、欧州の良心を回復させることが、求められています」と訴えた。

 欧州再考をテーマとするバチカンでの会議は、欧州大陸の未来に向けた対話を促すのが狙いだった。聖座は、欧州統合計画の初期段階に強力な支持者であり、ピオ13世は、欧州経済共同体(EEC)創設したローマ条約が署名された際、ローマ市内の教会に歓迎のベルを鳴らすように命じていた。だが、最近では、バチカン内部には欧州共同体(EU)がキリスト教のルーツを忘れてしまった、という見方が増えている。教皇ヨハネ・パウロ二世の治世では、欧州憲法草案に「キリスト教」という表現を入れないことが大きな問題となった。だが近年になって、欧州の人々は、難民の大量流入などの問題に直面して、非欧州人で初の教皇であるフランシスコの話を聴くことに意欲を見せている。昨年には、教皇は欧州の一致を推進した人に贈られる権威ある「カール大帝賞」を受賞している。

(翻訳「カトリック・あい」南條俊二)

(Tabletはイギリスのイエズス会が発行する世界的権威のカトリック誌です。「カトリック・あい」は許可を得て翻訳、掲載しています。 “The Tablet: The International Catholic News Weekly. Reproduced with permission of the Publisher”   The Tablet ‘s website address http://www.thetablet.co.uk)

欧州の低出生率に教皇が警鐘、若い世代への支援強化求める(CJC)

 【2017.10.30 CJC】教皇フランシスコは、欧州の出生率が低水準にある現状に警鐘を鳴らし、将来社会で生きていく道を準備している若い世代への支援を強化するよう促した。AFP通信が報じた。

 教皇は『欧州カトリック司教会議委員会』(COMECE)が催したプログラム「欧州再考」で、「欧州がコミュニティーとしての自らを再発見することが、欧州自身と世界全体の発展の源となるのは間違いない」と述べた。 その上で教皇は、欧州は「劇的な不妊の時期」に悩まされていると指摘。「原因は欧州の少子化や、出生の権利を否定された子どもが多すぎることばかりではなく、若い世代が将来に向き合う上で必要な物質面や文化面の手段が伝わっていない状況も一因だ」と語った。

 さらに欧州が「多数の文化や宗教が存在する点でますます際立つようになっている」とする一方、移民の同化に関しては「無関心や恐怖の壁」ができるリスクがあると警告し、移民は「負担というよりもむしろ資源である」との認識を教皇は示した。□

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2017年10月31日