(2017.1.21 CRUX バチカン特派員 イネス・サン・マーチン)
米国のドナルド・トランプ新大統領就任のタイミングで、教皇フランシスコは20日のスペインの新聞 ‘El Pais.’とのインタビューに答え、「危機を克服し、人々の破壊を終わらせる、と約束する政治的な『救済者』」に対して警告を発した。また、中国、自分自身の批判者、解放の神学、そしてバチカンの汚職問題などについても、言及した。
その中で、 教皇は、新大統領が行動を起こす前に判断を下すのは「無謀」としながら、危機を克服し、危機にさいなまれている人々を破壊するのを終わらせる、と約束する政治的な「救済者」に警告した。
さらに、欧米でポピュリズム(大衆迎合主義)の動きが高まっている問題を取り上げた教皇は、アドルフ・ヒトラーの亡霊を引き合いに出し、「ドイツの国民全員がヒトラーに投票したのです。彼は権力を盗み取ったのではない。国民に選ばれ、国民を破壊しました」と語ったうえで、「そのような危険があるのです」と警告した。
そして、「危機に直面して、識別が機能しない、そしてそれが、私にとっていつも思い起こされ続けているのです」と述べ「(人々はこう考えます)『さあみんな。我々の主体性を取り戻しくれる、主体性を奪おうとする人々から我々を壁や針金で守ってくれる〝救済者″を探し求めよう』と。これは、とても憂慮すべきことです」と重ねて警告した。
この日の’El Pais.’とのインタビューで、トランプ大統領について聞かれた教皇は「これから起こるかどうか分からないことを心配したり、喜んだりするのは、無謀なことでしょう。起きないだろう災難や好ましいことを予言するように」と前置きし、「彼が何をするかを見てから、評価しましょう」と語った。
また、記者の「これまでお聞きになったことで心配されていることがありますか」との問いには、「私は待っています。神は私のためにこれまで待ってくださいました。私のすべての罪と共に・・」と答えた。
移民・難民問題に関しては、「国々は国境を管理する権利を持っています。テロ攻撃の危険に直面している場合は国境管理はもっと重要になるでしょう。しかし、人々が隣人たちと話をする機会を奪う権利は、どの国にも無いはずです」との見方を述べた。
関連して、新たな難民を受け入れる必要を語り、教皇は地中海が難民の〝埋葬場所″になっていることを嘆いた。また、ラテン・アメリカの解放の神学について〝肯定すべきもの″との見解を示したほか、中国における信教の自由や自身の後継者を選ぶ教皇選挙についても言及した。
さらに、自身に向けられている批判に関しては、自分の判断について人々が問いを発するのは妨げるような〝独裁者″の態度はとらない、とする一方で、批判する人は堂々と人前ですべきで、〝石を投げつけ、その手をかくすようなこと″はすべきでない、と批判した。
中国は、バチカンと国交を持たない数少ない国だが、教皇は北京政府との間で国交樹立に向けて続けられている対話について触れ、歓迎されればいつでも中国を訪れる用意があることを改めて表明し、「招待されれば訪問する意思のあることを中国側は知っています」と語った。また、中国における信教の自由の問題については「中国では、どの教会も人でいっぱいです。中国で宗教を実践することができます」と述べた。
2016年の半ば現在、少なくとも3人の司教と12人以上を司祭が中国国内で投獄されていることが分かっており、各地でカトリック信者が脅しを受けたり、圧力にさらされているとの訴えが日常化している。だが、中国の国内にいる信者たちがさらなる困難に追い込まれないような Ostpolitik-strategy(東西融和戦略)を、教皇がとっているのだ、との見方もある。
また1968年のラテンアメリカ司教会議以後にで生まれた解放の神学への評価について聞かれた教皇は、マルクス主義的な現状分析を使用したことで当時、バチカンから批判されたが、現状分析には「偏向」があったが、解放の神学そのものは「前向きなもの」だったと答えた。
75分にわたるインタビューの中で、教皇はまた、カトリック教会内部での汚職問題に触れ、「4年前に、教皇の別荘、 Castel Gandolfoで前任者のベネディクト16世から、白い箱を渡された。そこには、バチカンの現状についてのメモが入っており、「そこにあらゆるものが書かれていました」と述べた。そして、バチカンには「多くの聖人たち」がいる、腐敗した人々だけではないことを強調した。さらに、汚職、腐敗問題以上に心配しているのは、人々が抱える現実の問題に注意を払わない、教会の高位聖職者と司牧担当者によって「この世の俗事に麻痺している教会」だ、と指摘した。
最後に、自身の後継者を選ぶ教皇選挙はどのような形が望ましいか、との問いに、教皇は「カトリックです。私の後継者を選ぶのはカトリックの教皇選挙です」と答え、あなたは後継者にお会いになりますか、と生前退位の可能性をにおわす質問には、「私には分からない。神がお決めになるでしょう。これ以上前に進めない、と感じたら、私の偉大な先生であるベネディクト16世がどうしたらいいのか、教えてくれました。そして、もし神が私をお連れになるなら、私は別の場所で後継者と会うことになる。それが地獄でないことを望みますが・・」と答えた。
投稿ナビゲーション