パキスタンのカトリック教会、少女の暴行殺害事件を強く批判(Crux)

 (2018.1.13 CRUX CONTRIBUTOR Nirmala Carvalho )Catholic Church condemns rape and murder of 7-year-old in Pakistan

A girl lights a candle during a memorial for Zainab Ansari, a 7-year-old girl who was kidnapped, raped and murdered last week in Kasur, Pakistan. (Credit: B.K. Bangash/AP.)

  インド・ムンバイ=パキスタンのカトリック指導者たちはパンジャブ州東部、カス―ル市で起きた7歳の少女の暴行殺害に対し、「パキスタンは、またもや自国の子供たちを守れなかった」とパキスタン司教協議会の下部機関「全国正義と平和協議会(NCJP)」が非難声明を出した。

 ザイナブ・アンサリちゃんは、先週、家の近くにコーランの勉強に行ったまま行方不明となり、火曜日に彼女の遺体がカス―ル市のごみの山から縛られた状態で発見された。当局によると、拷問されたことも報告されている。

 NCJP議長のジョセフ・アシャド大司教は「亡くなった方、ご家族、そしてほかの犠牲者たちのために祈ります。国中がこの犯罪のために泣いています。私たちにとって恥ずべき遺憾な犯罪です。このような犯罪が二度と繰り返されないために私たちはあらゆる手段を講じ、何としても子供たちの命を守る勇気が必要です」と述べた。

 カス―ルの市民は、一連の児童殺害について、警察が解決に向けた努力を十分にせず、犠牲者の家族に対しての配慮にも欠ける、と非難し、10日、この少女の死をきっかけに、市民と警察との間で衝突が起き、少なくとも2人が死亡、3人が負傷した。

 NCJPは、パキスタンは世界で11番目に児童への性的暴力が多く、女性にとって3番目に危険な国だ、と指摘している。カス―ル は2015年にパキスタンで最も大きな児童虐待事件のひとつがあった場所だ。10年以上にわたり児童ポルノ犯罪者の一団が活動しており、パキスタンの児童保護局によると、2017年だけで5歳から8歳までの小さな少女の暴行殺人が12件報告されている。

 マスメディアがアンサリちゃん殺害と抗議の動きを精力的に報道し、犯人逮捕に至ったが、NJPCは声明で、「警察当局は他の児童虐待事件にも配慮し、犯罪者をしっかりと裁判にかけてもらいたい」と要求するとともに、政府に対し、担当部局である児童保護局が地域レベルでの活動を強化すること、警察当局は児童の保護に強い関心を払い児童誘拐などを優先の捜査対象とすること、被害者の家族に協力しない地元の警察官、政治家や政府の役人に対して解雇など厳しい措置をとること、児童虐待及び児童ポルノ取り締まり関係法の改正委員会を発足させること、などを強く求めた。そして、「子供たちは我々の国家の未来である。子供たちを守るために、政府は子供の人権擁護に向けて、社会的、道徳的国際的に取り組まねばならない」と関係者・機関に訴えるとともに、「パキスタン政府が、国内のすべての子供たちの保護と安全のために、真剣に取り組むことを希望する」と要請した。

 アシャド大司教はCruxのインタビューに答えて、「私たちは、幼児虐待にとどまらず、パキスタン社会全体の問題に関心を持っている」とし、「個々の事件の状況は異なっており、政府は法律やその他の手段で国家レベルで適切な対応をとらねばならない」と述べたうえで、若者の高い失業率が社会不安や犯罪の背景にあることを指摘して、「若者に雇用の機会を作ることも大きな課題です」と指摘した。

 パキスタンは人口の96パーセントはイスラム教徒で、ヒンズー教徒、カトリック教徒はそれぞれ人口の2パーセントで少数派だ。最近ではイスラム過激派によるテロも起き始めている。大司教によると、キリスト教徒の若者が暴力や搾取の対象になっているケースも出ており、「ある地域では、ヒンズー教やカトリックの若い十台の少女が誘拐され、強制的に結婚させられている」といい、「政府と宗教的指導者とが協力して、弱い、無垢な子供たちへのこの憎むべき犯罪をやめさせなければなりません。国民が、そして、社会が、人間の尊厳について教育し直されなければなりません」と訴えた。

 大司教はまた、「支配体制が腐敗している。怠慢に陥っています。国民が圧力をかけないと、非常に緩慢にしか行動しない」と政治体制の問題も指摘し、警察を含めた官僚がプロ意識をもって職務を遂行すべきことを強調した。

(翻訳「カトリック・あい」岡山康子)

・・Cruxは、カトリック専門のニュース、分析、評論を網羅する米国のインターネット・メディアです。 2014年9月に米国の主要日刊紙の一つである「ボストン・グローブ」 (欧米を中心にした聖職者による幼児性的虐待事件摘発のきっかけとなった世界的なスクープで有名。映画化され、日本でも昨年、全国上映された)の報道活動の一環として創刊されました。現在は、米国に本拠を置くカトリック団体とパートナーシップを組み、多くのカトリック関係団体、機関、個人の支援を受けて、バチカンを含め,どこからも干渉を受けない、独立系カトリック・メディアとして世界的に高い評価を受けています。「カトリック・あい」は、カトリック専門の非営利メディアとして、Cruxが発信するニュース、分析、評論の日本語への翻訳、転載について了解を得て、掲載します。

このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年1月18日