ラルフ・ファインズ主演『コンクラーベ』公式予告編のスクリーンショット。(写真:YouTube/フォーカス・フィーチャーズ)
(2024.11.4 La Croix Paul Carpenter)
インターセックス(性分化疾患=身体的性 が一般的に定められた男性・女性の中間もしくはどちらとも一致しない状態)の人は教皇になれるのか? 10月25日に『コンクラーベ』が米国で公開されて以来(フランスでは12月4日に公開予定)、このありそうもない疑問が大西洋を越えて議論に火をつけている。
前作『西部戦線異状なし』が2022年のアカデミー賞にノミネートされたドイツの映画監督エドワード・ベルガーが監督した『コンクラーベ』は、ロバート・ハリスの2016年の同名小説を原作としている。ラルフ・ファインズ演じる枢機卿団の長、トーマス・ローレンスが、ローマ教皇の死後の重責に立ち向かう姿を描く。
ローレンス枢機卿は、権力闘争、詐欺未遂、カトリック教会内のイデオロギー分裂に直面する。ここまでのストーリーは、バチカンを舞台にしたハリウッド映画としては標準的なものだ。賛否両論を巻き起こしたのは結末だ。
アフガニスタンでの任務から帰還した南米出身の枢機卿が、大演説で大喝采を浴び、教皇に選出される。だが就任後、ローレンスは新教皇が男性と女性の両方の生理的特徴を持つインターセックスであることを知る。
*カトリック教会内外で物議を醸す結末
米国のマスコミの反応は素早かった。保守系メディア『The Daily Wireー』のベン・シャピロ代表は、公開前から数百万人のフォロワーに映画のボイコットを呼びかけた。
『National Catholic Reporter 』誌とイエズス会の『 America』誌は、映画の美的センスを賞賛し、世界代表司教会議(シノドス)総会がシノダリティ(共働性)について結論を出したばかりであることを考えると、「聖職に就く女性についてのこの映画の探求はタイムリーだ」と評価している。
しかし、この映画の結末を「無礼な挑発」と見る者もいる。ワシントンの聖ヨハネ・パウロ2世神学校の校長であるカーター・グリフィン神父は、Catholic News Agencyとのインタビューの中で、この映画の結末がいかに司祭職に対する誤解を反映しているかを説明した。一方、『Daily Beast』紙は、Redditのようなフォーラムが、「この映画を見ることは道徳的か?」という質問に特化している、と述べている。
*よくできた超大作だが、一流の批評家からは鼻であしらわれている
こうした様々な反応にもかかわらず、『National Catholic Register』紙は、この映画の「美的利点」に異論は唱えず、映画の内容と最後の展開に議論を集中させている。批評家のレビューを集約したRotten Tomatoesのスコアは93/100で、一般メディアもその質についてはほぼ同意している。『 Rolling Stone and 』や『Vulture』のような文化系雑誌は、その繊細さと攻撃的な要素を称賛している。
しかし、『Cineaste』『 Film Comment』『Little White Lies 』といった著名な映画雑誌は、批評の掲載を避けた。米国文化の基調を作る傾向のある他の出版物では、この映画について技術的な妙技は認めているが、過度に「機械的」あるいは「退屈」である、とさえ批判し、『New Yorker 』のリチャード・ブロディは特に酷評している。『New York Times』のマノーラ・ダーギスは、終盤のどんでん返しの根拠のなさを嘆き、現在の大統領選挙との類似性を指摘し、特に不正や詐欺の告発に関して、選挙プロセスの正当性に疑問を投げかけている。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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