(2024.5.23 Crux National Correspondent John Lavenburg)
ニューヨーク発 – 人口減少と人口動態の変化の中で、米ボルチモアのウィリアム・ローリ大司教は23日、市内と周辺の61の小教区を23に削減する再編計画を発表した。 教会の合併と閉鎖の両方を含むこの計画は、大司教区が2022年に開始した「来るべき都市を求めて」構想の最終的な結論、としている。
米国で最も古い歴史を持つボルチモア大司教区の広報担当者は、教会の閉鎖数は29に達する可能性があると語る一方、一部は特別な礼拝堂などに再利用されたり、奉仕の場所として指定されたりする可能性がある、としている。
ローリ大司教は、決定は「希望に満ちた未来を見据えて行われた」と述べ、 「このプロセスは、私たちの教区が使命と奉仕に集中できるようにすることを目的としている… 多くの小教区に分散している資源を集め、福音を告げ知らせ、隣人が救いに出会うのを助ける、という、私たちの目の前にある使命を遂行するための十分な備えを整えた新しいコミュニティを形成するために行われるもの」と説明。「小教区の合併再編がこの目標の達成に役立ち、新しい小教区共同体と司祭が物的、人的、精神的資源をその使命に向けることができるようになる、と確信している」と語った。
ボルチモア大司教区には153の小教区と伝道所があるが、再編計画の対象となる61の小教区は、ボルチモア市とその周辺郊外にあり、現在の人口減少と人口動態に適合するよう小教区の配置を見直すものだ。
大司教区の広報担当者によると、大司教区のカトリック教徒は約50万人で、うち約1万4000人(2.8%)がボルチモア市内の教会でミサに出ているが、市内居住者はその約半分という。 にもかかわらず、小教区の数は、大司教区の全体の小教区の約 3 分の 1 を占めている。ボルチモア市では、1810 年から 1950 年代にかけて人口が約 5 万人から約 90 万人に増え、これに対応する形で市内の教会の建設が進んだが、その後、市の人口は減少に転じ、現在では約 55 万人まで減っている。
ボルチモア大司教区は新聞発表で、今回の小教区再編計画は、「ボルチモア市の人口減少、特に人種差別と黒人コミュニティへの投資削減奪との関連に特別な注意を払った」とし、「大司教区は、歴史あるアフリカ系アメリカ人のコミュニティに小教区を植え続けることも意図している」と説明。具体的には同市の歴史的な黒人教区の一つ、セント・ベロニカ教会は先月、再編計画の一環として閉鎖を勧告されたものの、「教区民の抗議を聞いて」、勧告を撤回したという。
またローリ大司教は、「今回の再編計画で影響を受ける人々に配慮して、一部の合併統合は、今後1年ほどかけて行う」とし、 基本的に、各小教区共同体はそれぞれの状況に応じた独自の計画をもとに、合併への作業を進め、合併手続きが完了した後、大司教区として新たな施設、建物への資金提供を検討する、と述べた。
さらに大司教は、今回の小教区合併再編は、「大司教区の(聖職者による性的虐待への賠償金が多額に上ることによる)破産申請とは無関係であり、(小教区の合併再編で生じる余剰土地、建物など)不動産の売却は(性的虐待被害者との)和解に使うことを意味しない」とも説明した。
多くの米国の他の司教区と同様に、 聖職者の性的虐待訴訟が相次ぐボルチモア大司教区は、2023年に破産を申請した。 その数カ月前の2023年4月、メリーランド州のアンソニー・ブラウン司法長官は、大司教区の聖職者など156人による児童性的虐待が 1940 年代から 2002 年にかけて600件以上もなされた、とする454ページの報告書を発表している。
ローリ大司教は「多くの人は、今回の小教区合併再編が、大司教区が行った破産申請と関連しているのではないか、と疑うかもしれない。だが、そうではない。将来の不動産売却を破産和解の支援に結びつける憶測は、 本当ではない」と否定。「小教区の合併で生じた一部の物件は再利用され、一部は売却される。売却による収益は教区に残し、合併で新しく設立される小教区のために使われることになる。このことは、教会法、そして民法によって裏付けられている」と述べた。
(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)
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