・教皇のローマ郊外の小教区訪問は、イタリアの教会の外国出身司祭への依存の高まりを象徴している(Crux)

(2024.6.8 Crux Staff)

ローマ発 – 教皇フランシスコ6日、ローマ北西端にある小教区を突然訪問された。訪問は、教皇が2025年の聖年に向けて呼びかけておられる「祈りの学校」の一環だが、聖ブリジット小教区には現在、教会の建物がなく、ガレージでミサが行われており、「祈りの学校」も、集合住宅の中庭で開かれた。

 興味深い”脚注”は、教皇の訪問が、今日のイタリアにおけるカトリック信者の人口動態を正しく捉えたものだったことだ。 集まった教区民はほぼ完全に白人で、民族的にはイタリア人だったが、旬司祭と叙任司祭は、どちらも聖霊修道会の宣教師で、コンゴ人とカメルーン人。

 主任司祭のガイ・レアンドレ・ナカヴォア・ロンデ神父は、2005年に今後からイタリアに入国、その段階でイタリア語を一言も話さなかった。司祭に叙階された時、派遣希望地としてガボン、メキシコ、インド洋のレユニオン島を挙げたが、上長はイタリアでの宣教を命じ、以来、聖ブリジット小教区の司祭を務めている。

 助任司祭のフランシス・チャンチョ神父は、カメルーン出身の40歳で、2017年に叙階され、北イタリアのトリノで宣教活動を始め、昨年、聖ブリジット小教区に移った。

 二人は、イタリアのカトリック教会における、国外出身の聖職者への依存度が高まりを象徴している。かつてイタリアは、世界の他の地域への宣教師の大”輸出国”だっがが、イタリア司教協議会の資料によると、今や海外で奉仕するイタリア人一人につき、イタリアで奉仕する外国生まれの司祭は5人に上る。昨年現在で、イタリアには1476人の外国出身の教区司祭がおり、うち790人が司牧活動に従事し、686人が学生。さらに、小教区の主任司祭や助任司祭など教区の任務も兼任する修道会司祭が1336人。外国人司祭の合計は、教区司祭、修道会司祭を合わせて2812人で、イタリアの教会の全カトリック司祭のほぼ10%を占めている。

 イタリアの司祭の総数は1990年から昨年までに約2割減ったが、外国人司祭の数は同じ期間に10倍に急増している。外国出身の教区司祭790人の地域別内訳は、407人がアフリカ、134人が東欧、164人がアジア、85人がラテンアメリカを主体とする南北アメリカだ。

 イタリアの教区と他国の教区との間の司祭任命に関する協定を監督する同国司教協議会のジュゼッペ・ピッツォーリ神父は、協定では外国出身の司祭のイタリアでの奉仕期間は9年とされており、満了した時点で母国に帰ることになっている。

 だが、「協定を守るよりも”違反”することに重きが置かれることもあります… イタリアで9年間過ごした後、何人かの外国人司祭は母国に戻るのに苦労しています。イタリアの司教でさえ、彼らが去るのを望まない。なぜなら、彼らは9年の間にイタリアの教会にうまく適応し、重要な役割と責任を負うようになっているからです」と語った。司教協議会がデータを作成して以来これまでに、他国出身の教区司祭398人がイタリア国内の教区に転籍している、という。

 司祭不足は欧米よりも発展途上国で深刻になる傾向があることを考えると、このイタリアの教会の自国出身司祭の不足は、必ずしも欧米共通の問題というわけではないかも知れない。例えば、欧州全体では、カトリック教徒1700人につき1人の司祭がいるが、アフリカでは、5700人に1人だ。

 そうしたことを考え合わせ、”北”の裕福な国々の教会が、”南”の貧しい教会の聖職者を”搾取”し、”南”の国々でもっと聖職者が必要とされているのに、”北”の国々の”不足を穴埋め”するために、聖職者を”南”から”北”に流出させているのではないか、という見方も出ている。

 実際、バチカン福音宣教省の長官を1985年から2001年まで務めたスロベニア出身のヨゼフ・トムコ枢機卿は、発展途上国からイタリアに司祭を”輸入”する傾向が強まっていることを批判し、「これほど多くの教区司祭をもってすれば、(アジア、アフリカなどの)宣教地域にもっと多くの新しい小教区が作られるはずだ!」と述べていた。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

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2024年6月9日