・「人身売買の根本原因の一つは”買い手”にある」人身売買被害者が訴えー「Talitha Kum」創立15周年総会で

Group photo of participants gathered together at Talitha Kum 2nd General Assembly  (Marco Mastrandrea/Talitha Kum)
Group photo of participants gathered together at Talitha Kum 2nd General Assembly

(2024.5.20 Vatican News   Deborah Castellano Lubov )

  人身取引の撲滅に取り組む奉献生活者の国際ネットワーク「Talitha Kum(タリタクム)」の創立15周年を記念する総会が、加盟90か国の代表約200人が参加して18日から24日までローマで開かれている。女子修道会国際総長連盟(UISG)が2009年に設立したTalitha Kumの記念総会には、一般信徒の女性と男性、信徒、若者、そして人身売買との闘いに積極的に取り組んでいる被害者なども参加した。

 出席者の一人、米ミズーリ州カンザスシティの非営利人権団体ジャスティス・プロジェクトKCの常務理事で、自身も人身売買の被害者であるクリスは  「人が”製品”を買わなければ、”売る”のはずっと難しいのです」とVatican News に語った。

 裕福な家庭に育ったクリスは、世間知らずの十代のころ、羽目を外して、男に騙され、米国のあちこちで売春をさせられた。その経験から、今も増え続ける人身売買の撲滅に取り組んでいる。具体的には、貧しい女性や少女に対する権利擁護、システムナビゲーション、ピアサポートを提供しており、米司法省の人身売買反対連合、カンザス州司法長官の人身売買諮問委員会の委員を務める。

 クリスは「性的搾取を生き延び、現在被害に遭った人たちと働いている者として、より広い世界がこれらの人々を無条件に受け入れ、愛する必要がある、と心から思っています」と述べ、「変化が必要です。人々は、犠牲者と呼ばれると、自分自身に対する見方が変わるのです」と強調した。

  そのうえで、「多くの憎しみに直面しているトランスジェンダーの被害者を含む他の被害者や、「時には人目につかないことがある男性や少年たち」に対して、もっと包容力のある対応を求めたい、とし、人々に対して、「偏見を脇に置き、被害者たちが自分自身のために正義を達成できるよう支援する必要がある」と語った。

 さらに、総会参加者たちの多くが、「今起きている人身売買の根本原因に対処したい」と考えているのであれば、「”需要”、つまり“買い手”に対処する必要があります。根本原因は数多くあるが、その中で主要な原因の1つは、依然として“買い手”がいることです。“買い手”がいなければ、”売る”ことが難しくなるからです。これは資本主義の理論です。”買い手”をなくすことで、”売る”ことをできなくする。それが、私の希望です」と強調した。

 そして、そのためのカギは、「人身売買行為の不当性について、特に男性、若者たちを教育すること」と指摘した。「そうした教育を通じて、女性や少女を単なる遊び道具にしてはいけない、ということを分からせることです」。

 より基本的には、「男女平等、あらゆるレベル、あらゆる段階、あらゆる国、あらゆる場所での男女の平等を促進する努力を続けることが必要」と強調。また、各国の司法当局に対して、「”需要”に厳しく対応すること」を求め、また、「人身売買で利益を得ている者たちは、法的、金銭的な罰則を受けると、多くの場合手を引き、それが(そうした対応を司法当局がしていない国や地域との)違いを生みます」と訴えた。

*日本では、Talitha Kum設立から8年遅れて2017年に日本女子修道会総長管区長会、日本カトリック管区長協議会が連携し、日本カトリック難民移住移動者委員会の「人身取引問題に取り組む部会」として、「タリタ・クム日本」が作られている。

(翻訳・編集「カトリック・あい」南條俊二)

 

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2024年5月21日