(2025.5.22La Croix Mikael Corre)
西側の主要国に後押しされたバチカンは、教皇レオ14世のリーダーシップの下、ロシアとウクライナの会談の場を提供することを申し出た。これは、”アイデアの誕生”のストーリーの段階で、実現の可能性を云々するのはまだ難しい。
選出からわずか4日後、教皇レオ14世は、東方教会の代表者と会見。あいさつの終わりに、”バチカンの壁”をはるかに超えて響き渡るメッセージを伝えた—「敵同士が出会い、互いの目を見るために、バチカンは利用可能です」。
聖地、ウクライナ、レバノン、シリアを苦しめている暴力について、教皇は「平和を広めるために可能な限りのことをする」と誓った。その訴えは明確で、そしてそれは、聞き入れられた。
その3日後の5月18日、故教皇フランシスコの葬儀ミサに出席したウクライナのゼレンスキー大統領が再びバチカンに戻り、レオ14世から私的な会見の形で迎えられた。その日の早い時間、教皇就任ミサの中で、レオ14世は「殉教したウクライナ」を取り上げ、「公正で永続的な平和のための交渉」を当事国指導者たちに促した。
同じ18日、米国のバンス副大統領、ルビオ国務長官も教皇と会見し、さらにギャラガー国務省外務局長と会談した。バチカンの発表によると、バンス国務長官とギャラガー外務局長は「交渉による解決策」が「当事者間で模索されねばならない」との見解で一致。教皇は、米国訪問の正式な招待を受けた。
その夜、バンス副大統領とゼレンスキー大統領は、ローマの米国大使公邸で30分間、議論を交わした。報道陣のカメラに向かって微笑み、2月のホワイトハウスでの険悪なやり取りから一転して親密な関係を印象付けた。ロシア・ウクライナ停戦の可能性、トランプ・プーチンの差し迫った電話会談などについて意見が交わされ、ホワイトハウスは「生産的な会議」だった、と評価した。
翌19日、トランプ大統領は、プーチン大統領との電話会談の後、フランス、ドイツ、イタリア、フィンランドの首脳たちと、欧州委員会のライエン委員長とテレビ会議を開き、敵対行為の停止のための協調的な圧力をロシアにかけた。イタリアのメローニ首相は、バチカンに調停を働きかけるという課題を持って会議に臨み、20日にはレオ14世して、個人的にバチカンでの交渉を主催する意思を教皇から引き出した。
現時点では、教皇のイニシアチブは、米欧の主要国の首脳からほぼ満場一致の支持を得ている。だが、レオ14世は、前任者が成し遂げられなかったことを成功させることができるのだろうか。故教皇フランシスコは、2022年2月のロシアのウクライナ軍事侵略開始後、平和を繰り返し訴えながらも具体的な成果を得られなかった。彼はそのフランシスコの遺産を受け継いでいる。フランシスコは、ロシアの軍事侵略が始まった当初、侵略者と被害者の役割を曖昧にし、ロシアの主張を受け入れるかのような印象を与えて広く批判されたが、後に軍事侵略反対の立場を明確にした。
今、レオ14世は教皇就任当初から、世界の外交の場面に足を踏み入れている。ローマ在住のある外交官は「トランプ政権は戦争を終わらせたいという純粋な願望を持っている。おそらく、米国出身の教皇は、現時点では、外交の舞台でプレイすべきカードだ」と語ったが、バチカンの一部は慎重なままだ。「この調停が成功する可能性はほとんどない。そして、リスクは、トランプが忍耐力を失い、プーチンが彼を弄んでいることに気づき、ウクライナへの武器供給を増やす可能性があることだ」と、あるバチカンの関係者は警告した。バチカン主導の調停の展望は、依然として推測の域を出ない。
一方、トルコは、イスタンブールで、ウクライナとロシアの代表団による直接会談の第1ラウンドを主催したが、これまでのところ、結論は出ていないが、双方が継続に関心を示している。レオ14世によって国務長官に再任されたパロリン枢機卿は、バチカンが「直接対話」を主催する用意があることを確認した。今の問題は、モスクワがその呼びかけに応えるかどうかだ。
障害は政治のレベルにとどまらないかもしれない。教皇フランシスコの葬儀とレオ14世のミサに2人のロシア正教会代表が参列したが、軍事侵略が始まって以来、バチカンとモスクワ総主教庁の関係は凍結されたまだだ。
ロシア側は、戦争を「形而上学的」と表現し、前線で殺されたロシア兵に救いを約束したキリル総主教に対するカトリック指導者の非難に、依然として激怒する声明を繰り返している。
バチカンは、そのような声明を異端と見なしている。それでも、バチカンの調停が根付くなら、新たな宗教間対話への扉が開かれる可能性もある。そして、戦争の時代には、それさえも、希望の始まりとなるだろう。